2025年6月16日月曜日

生活学・新原論Ⅶ-5:生活時間の年齢差を考える!

総務省統計局の「社会生活基本調査」(2022年版)をベースに、生活世界構造の視点から生活時間の実態を探っています。

今回はこの調査のデータ(2021年)で作成した図と表(週間時間)を、7差化時間で比較してみると、年齢によって次のような差異が読み取れます。



主な年齢差をあげていきます。

生理的な必要行動である「差元化」時間は、1014歳の669時間から徐々に減り始め、5559歳の546時間で底を打つが、その後は次第に増え始め、85歳以上で735時間と最高になる。主な要因は睡眠時間であり、1014歳で575時間、5559歳で437時間、85歳以上で560時間と変化している。

日常的な必須行動である「差識化」時間は、1015歳の172時間から、年齢上昇とともに一貫して増え続け7084歳で350時間を超えている。家事時間45歳以上で100時間を、また食事時間60歳以上で、それぞれ100時間を超えているためだ。

社会的な活動である「差汎化」時間は、1019歳では60130時間であるが、2024歳の319時間から増え始め、4549歳の397時間で最高に達した後、徐々に減って、6569歳の208時間から減り始め、85歳以上では38時間に落ちる。いうまでもなく、仕事に従事する時間の大小のためである。

情報への接触を求める「差異化」時間は、年齢とともに徐々に増加し、5054歳で100時間を超えると、8084歳では268時間に達する。図に示したように、「差汎化」時間に反比例している。

純私的な生活行動である「差延化」時間は、2529歳から増え始め、3034歳の91時間でピークに達した後、徐々に減って行く。主な要因は2544歳女性層で育児時間が増加するためだ。

遊びを求める「差戯化」時間は、1014歳の102時間から徐々に低下し、5059歳で39時間まで落ちるが、その後は幾分回復し、7579歳には68時間となる。前半の低下傾向と後半の増加傾向は、いずれも「差汎化」時間への反比例のためと思われる。

学びや訓練を求める「差真化」時間は、1019歳の350を超える時間の後、2024歳で106時間まで急減し、25歳以降は10時間内外を続けていく。1019歳では、学業と学習・自己啓発などへの時間が多いものの、25歳を超えると、自己啓発や訓練などには一定時間しか割けないようになってくるようだ。

以上で見てきたように、生活世界構造の視点から生活民の時間消費を探ってみると、20歳と65歳あたりで、私たちの生活構造には大きな変化があるようです。

2025年5月28日水曜日

生活学・新原論Ⅶ-4:生活時間の男女差を考える!

総務省統計局の「社会生活基本調査」をベースに、生活世界構造の視点から生活時間の実態を探っています。

今回はこの調査のデータから、2021年における男女差を考えてみましょう。

1週間当たりの平均時間(分)7差化時間で比較すると、女性と男性の間には、次のような差異が読み取れます。

●最も多い差元化では、男女とも600分でほぼ同じですが、女性の方が睡眠や休息がやや少ないようです。

●2番めの差識化では、女性の方が男性より145分も多いようです。家事や身の回りなど日常的な用事が圧倒的に多いからです。

●3番めの差汎化では、女性の方が男性より123分も少なくなっています。仕事や通勤・通学などに用いる時間が130分も少ないからです。

●4番目の差異化は、男女とも130分ほどで、ほぼ同じです。

●5番めの差延化では、女性が男性の2倍を超えています。育児や買物が多いためです。

●6番めの差真化では、男女とも50分ほどで、ほぼ同じです。

●7番めの差戯化では、女性の方が29分少ない。趣味・娯楽、スポーツとも少ないからです。

以上を整理すると、下図に示したように、女性は差識化、差延化で男性より多く、差元化、差汎化、差異化、差真化、差戯化では男性より少なくなっています。

女性の生活時間の多くは、生活の維持や支援など、家庭内の必需的行動に費やされ、それ以外の時間から捻出されている、ということでしょう。

2025年5月18日日曜日

生活学・新原論Ⅶ-3:生活時間の変化を考える!

総務省統計局の「社会生活基本調査」をベースに、生活時間の動向を考えています。

今回はこの調査のデータを素材に、過去5年間(20162021年)における生活行動の変化を振り返ってみましょう。

1日当たりの週間平均時間を差化時間で読み解くと、次のような変化が読み取れます。


主な変化は次の通りです。

●この5年間では、2019年末からのコロナ禍のせいか、感染の回避外出の抑制などの行動が読み取れる。

●最も増えたのは差元化で、33分増えている。休養・くつろぎが20分、睡眠時間が14分増え、受診・療養が1分減っている。コロナ禍の影響で、外出や遊興などが抑えられ、体力維持に関心が集まったのではないか。

●最も減ったのは差汎化で、24分減っている。移動(通勤・通学以外)と 交際・付き合いがともに7分、仕事が5分減っている。コロナ対策として在宅ワークが増え、外出行動や対人行動が縮小したものと思われる。

●差識化では家事が4分、身の回りの用事が2分増えたのに対し、食事が1分、その他が3分減っている。屋内行動が増えた結果、家事や実の回りの行動が増えた分、それ以外の行動を抑えたのであろう。

●差異化ではテレビ・ラジオ・新聞・雑誌を見る時間が7分減っている。屋内行動が増えたにも関わらず、マスメディアへの関心が薄れているのではないか。

●差戯化はほとんど変わっていない。趣味・娯楽が1分増え、スポーツが1分減っている。個人的・屋内行動が増え、対人的・屋外的行動が減ったのではないか。

●差真化では学業時間が4分減っている。学生や児童の間では感染防止対策として、疲労を避ける傾向が強まったためと思われる

●差延化では介護・看護、育児がともに1分減っている。外出を避ける行動が増えたため、屋内行動にわずかなゆとりが現れたのではないか。

差元化・差汎化・差識化の3行動は、多少の増減はありつつも、全体の8割を占め続けている。

以上のように「社会生活基本調査」を当原論7差化分析で読み解くと、コロナ禍の影響が如実に浮上してきます。

2025年4月30日水曜日

生活学・新原論Ⅶ-2:生活時間の行動分類を比較する!

総務省統計局の「社会生活基本調査」を参考に、生活時間の動向を考えています。

前回はこの基本調査の分類方式と当ブログの生活世界構造を比較し、さまざまな行動について両者の対応を示してみました。

この対応に基づき、『社会生活基本統計』の最新版(令和3年:2022年公表)の統計データを素材として、両方の分類結果を量的に比較してみました。


両者を比べてみましょう。 

➀基本調査では、1次行動(睡眠、身の回り、食事)が45.62次行動(通勤・通学、仕事、学業、家事など)が28.3、3次行動(移動、マスコミ、休養・くつろぎ、趣味・娯楽など)が26.1で、1次行動が主流となっています。

➁生活世界構造では、中心活動の差識化(身の回り、食事、家事)が19.9上下活動の差異化(マスコミ)と差元化(睡眠、くつろぎ・休養など)が50.4左右活動の差延化(看護・介護、意気地など)と差汎化(通勤・通学、移動、ボランティア活動など)が21.9前後活動の差戯化(趣味・娯楽、スポーツなど)と差真化(学業、学習・自己啓発など)が7.8で、上下活動が半数を占めています。

両者の差異は、次のように読み取れます。

➂基本調査では、1次=生存的時間、2次=必要的時間、3次=余裕的時間という発想で区分され、その順序で時間配分が現れています。

➃これに対し、生活世界構造では、日常的な中心活動の下に、上下活動の記号次元と感覚次元、左右活動の個人行動次元と社会行動次元、前後活動の遊戯次元と真摯次元が、順番に現れています。

2つの時間配分状況をグラフ化してみると、下図のようになります。


これを見ると、生活基本統計の1次・2次・3次の段階的構造に対し、生活世界構造では、比較的小さな中心活動の上に上下、左右、前後活動が続いていることがわかります。

とすれば、生活世界構造によって、基本統計の生活時間数値を読み解くと、上下活動(感覚的・無意識的行動⇔記号的・意識的行動)に、生活行動の核心が潜んでいることがわかります。

私たちの生活構造においては、上下活動、つまり【感覚⇔観念】の比重が極めて大きいことが現れているのではないでしょうか。

2025年4月23日水曜日

生活学・新原論Ⅶ-1:生活時間論が始まる!

生活空間論」がひとまず終わりましたので、生活学・新原論は「空間から時間へ」と視点を移し、今回から「生活時間論」を考えていきます。

生活時間の構成や統計については、総務省統計局1976(昭和51)年から5年ごとに実施している「社会生活基本調査」が、先例として参考になります。

この調査は、統計法に基づく基幹統計『社会生活基本統計』の資料として、生活時間の配分や自由時間の活動状況など、国民生活のデータを集めるもので、生活時間の構成については、次のように設定されています。

1次活動・・・睡眠、身の回りの用事、食事

2次活動・・・通勤・通学、仕事、学業、家事、介護・看護、育児、買い物

3次活動・・・移動(通勤・通学を除く)、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌、休養・くつろぎ、学習・自己啓発・訓練(学業以外)、趣味・娯楽、スポーツ、ボランティア活動・社会参加活動、交際・付き合い、受診・療養、その他

このような生活区分に対し、当ブログ「生活学・新原論」の生活行動体系では、次のように7つに設定しています(7差化)

❶差延化(個人的・純私的行動)⇔ ❷差汎化(社会的・集団的行動)

❸差異化(記号的・意識的動)⇔ ❹差元化(感覚的・無意識的行動

❺差戯化(遊戯的・虚構的行動)⇔ ❻差真化(真摯的・目標的行動)

❼差識化(生活世界の中心としての日常的行動)

両者を対比させると、下図のようになります。

 の意味するところを、一通り説明しておきましょう。

➀1次活動

●睡眠・・・典型的な感覚的・無意識的行動であり、差元化です。

●身の回りの用事・・・最も日常的な行動であり、差識化です。

●食事・・・これまた典型的な日常的な行動であり、差識化です。

➁2次活動

●通勤・通学・・・社会活動への参加という意味で、差汎化です。

●仕事・・・最も社会的な活動という意味で、差汎化です。

●学業・・・真理を求める行動として、差真化です。

●家事・・・典型的な日常行動として、差識化です。

●介護・看護・・・個人的な支援活動として行われており、差延化です。

●育児、買い物・・・介護・介護と同じく、個人的な生活行動であり、差延化です。

➂3次活動

●移動(通勤・通学を除く) ・・・社会的な目標に向かうという意味で、差汎化です。

●テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・・・典型的な記号訴求行動であり、差異化です。

●休養・くつろぎ・・・虚脱行動そのものであり、差元化です。

●学習・自己啓発・訓練(学業以外) ・・・典型的な真理的・真摯的行動であり、差真化です。

●趣味・娯楽・・・典型的な遊戯行動であり、差戯化です。

●スポーツ・・・これまた広義の遊戯行動であり、差戯化です。

●ボランティア活動・社会参加活動・・・社会へ向かう意識の点で、典型的な差汎化です。

●交際・付き合い・・・社会への関与を求める点で、差汎化です。

●受診・療養・・・身体という感覚器官に関わる点で、差元化です。

●その他・・・上記以外のさまざまな生活行動は、生活世界の中心において、日常的な差識化として行われています。 

このような対比を前提にしつつ、「社会生活基本調査」の統計的データを「生活学:新原論」の生活構造素材として、多面的に活用していきます。

2025年4月10日木曜日

生活学・新原論Ⅵ-7:生活空間論:居住空間の差識化

生活空間論の7番めは「居住空間の差識化」、つまり居住者が住宅や家具などを、通常の暮らしに利用する行動です。

差識化とは【差識化行動とは何か?】で述べたように、生活世界の中央の「日欲」を構成する3つの生活願望、つまり「欲求」「実欲」「常欲」が“認識”する、さまざまな有用性の中から、個人的に必要な「ききめ」を判断し、それらを求める生活行動です。

生活体でいえば、下図➀のように、欲求ブロック、実欲ブロック、常欲ブロックの3つのブロックが交差する、中央のブロック(オレンジ部分)において、最も基本的な居住行動を展開することになります。


これらの3ブロックの中核となる行動を抜き出して見ると、下図➁のように、6つの居住行動のクロスする、中央の核(オレンジ部分)が差識ブロックということになります。


そこで、6つの居住行動の求める住居・家具などの要素を、これまで述べてきた6つの居住行動から抜き出して見ると、下図➂のように、6つの対応が浮かんできます。


縦軸上部の「欲望・実欲・常欲」行動では「
見栄え」が、下部の「欲動・実欲・常欲」では「住み心地」がそれぞれ求められています。

横軸右上の「欲求・世欲・常欲」行動では「新機能住宅」が、左下の「欲求・私欲・常欲」では「手作り自宅」がそれぞれ求められています。

前後軸右下の「欲求・実欲・真欲」行動では「充実書斎」が、左上の「欲求・実欲・虚欲」では「新型別荘」がそれぞれ求められています。

となると、3軸の交差する中央ブロックの「欲求・実欲・常欲」行動では、何が求められるのでしょうか。

このブロックは、意識の織りなすさまざまな生活願望が、頻繁に交差する行動次元ですから、居住行動もまた最も基本的、あるいは究極的なものになります。

つまり、「欲求・実欲・常欲」が求める差識化行動とは、居住者にとって、最も基本的な居住行動、すなわち「住み家」という要素を求めることです。

いいかえれば、見栄えや住み心地、新機能や手作り、充実や新型など、さまざまな居住願望が交差する中で、最も基礎的な居住環境を求める次元として、差識化行動が位置づけられるのです。

2025年3月30日日曜日

生活学・新原論Ⅵ-6:生活空間論:居住空間の差真化

生活空間論の6番めは「居住空間の差真化」、つまり居住者が住宅や家具などを、学びや信仰のために適応させていく行動です。

差真化とは【差真化行動とは何か?】で述べたように、真実界から生まれてくる、儀礼や儀式、学習や信仰、自制や自律などを求める真欲に応えて、儀式や儀礼、勉学やトレーニング、自省法や内観法などを実行する生活行動です。

生活体でいえば、下図のように、前方に位置する生活願望「真欲」に向けて、欲望・欲求・欲動次元や私欲・実欲・世欲次元で、さまざまな生活行動を展開することになります。

こうした行動を居住空間に当てはめると、学びや信仰などのための住居や家具などを造る行動やそれらを享受する行動が浮かんできます。 

上図に示したように、差真化行動は9つの行動に分かれていますが、このうち上段の3つは差異化行動差延化行動差汎化行動で、また下段の3つも差元化行動差延化行動、差汎化行動で、すでに機能と対応事例を挙げています。さらに中段の左右も差延化行動と差汎化行動で、同様の対応をしています。

となると、中央の「真欲・欲求・実欲」欄のみが、独自の差真化行動ということになります。

このような先行事例を前提にしつつ、9つの差真化行動が生活空間に何を求めているのか、を考えてみましょう。 



●上段の「欲望」段では、中央の「確かさ」を挟んで、「まじめさ・手作り真面目意匠」と「重厚さ、新型耐久デザイン」が求められます。

真欲・欲望・私欲では、学び、勤勉、重厚など認める私的行動として、例えば清潔感充足居室、勉学促進風子供部屋、自作デザイン書斎、自作デザイン学具などが対象となる。

真欲・欲望・実欲では、学びや勤勉なデザインなどを求める居住行動として、例えば堅実風デザイン、効率風インテリア、自作堅実風デザイン、自作効率風デザインなどが対象となる。

真欲・欲望・世欲では、重厚感や真面目さなどを訴求する対外行動として、例えば伝統的和風デザイン、西欧風クラシックデザイン、耐久強化デザイン書斎・勉強用具などが対象となる。

●中段の「欲求」段では、中央の「充実書斎」を挟んで、「手作り別荘」と「新勉学書斎」が求められます。

真欲・欲求・私欲では、純個性的な学び空間や家具類を求める私的行動として、例えば独創的書斎・勉強部屋、自作書斎、自作学具などが対象となる。

真欲・欲求・実欲では、新たな機能を備えた学び空間や家具類をもとめる居住行動として、例えば新機能書斎・勉強部屋、自作新機能書斎・勉強部屋などが対象となる。

⑥真欲・欲求・世欲では、全く新たな学習機能を向上できる居住空間、例えば能力深耕書斎・勉強部屋、自作推奨書斎、自作推奨学具などが対象となる。

下段の「欲動」段では、中央の「まじめさ」を挟んで、「まおもて、手探り神具」と「神々しさ、信仰深化神具」が求められます。

⑦真欲・欲動・私欲では、純私的な感覚的真理を求める私的行動、例えば小奇麗さ、整斉さ、自作神殿、自作神具などが対象となる。

⑧真欲・欲動・実欲では、家族単位での感覚的真理を求める居住行動、例えば風格、趣き、自作推奨神殿、自作推奨神具などが対象となる。

⑨真欲・欲動・世欲では、世間に向けての感覚的真理を誇示する対外行動、例えば神社風、寺社風、教会風、自作推奨神殿、自作推奨神具などが対象となる。

以上に挙げた、9つの差真化行動を、具体的な事例として整理すると、次表のようになります。

青地以外の分野は、上記のように差異化行動差元化行動差延化行動差汎化行動において、具体例を挙げていますので、新たな事例は青色の部分だけになります。 

生活民の差真化行動を居住空間へ応用した場合、以上のような9つの要素が浮上してきます。
これこそ「居住空間の差真化」という居住行動の意味するところです。

2025年3月25日火曜日

生活学・新原論Ⅵ-5:生活空間論:居住空間の差戯化

生活空間論の5番めは「居住空間の差戯化」、つまり居住者が住宅や家具などを、遊びや余暇のために適応させていく行動です。

差戯化とは【差戯化行動とは何か?】で述べたように、虚構界から生まれてくる弛緩、解放、遊興などを求める虚欲に応えて、虚脱・混乱、浪費・蕩尽、戯化・模擬、ゲーム・競争などを実行する生活行動です。

生活体でいえば、下図のように、後方に位置する生活願望「虚欲」に向けて、欲望・欲求・欲動次元や私欲・実欲・世欲次元で、さまざまな生活行動を展開することになります。

こうした行動を居住空間に当てはめると、遊びや休養のための別荘や家具などを造る行動やそれらを享受する行動が浮かんできます。

上図に示したように、差戯化行動は9つの行動に分かれていますが、このうち上段の3つは差異化行動差延化行動差汎化行動で、また下段の3つも差元化行動差延化行動、差汎化行動で、すでに機能と対応事例を挙げています。さらに中段の左右も差延化行動と差汎化行動で、同様の対応をしています。

となると、中央の「虚欲・欲求・実欲」欄のみが、独自の差戯化行動ということになります。

このような先行事例を前提にしつつ、9つの差戯化行動が生活空間に何を求めているのか、を考えてみましょう。

●上段の「欲望」段では、中央の「面白味」を挟んで、「ふまじめさ・手作り軽薄」と「軽々しさ・へんてこデザイン」が求められます。

虚欲・欲望・私欲では、遊び、怠惰、軽薄など認める私的行動として、例えばゴミだらけ玄関、手入れ無し庭木、自作デザイン別荘、自作デザイン遊具などが対象となる。

虚欲・欲望・実欲では、遊びや無用なデザインなどを求める居住行動として、例えばコミック人形飾り、イルミネーション室内飾り、自作コミック人形飾り、自作イルミネーション室内飾りなどが対象となる。

虚欲・欲望・世欲では、軽薄感や奇妙さなどを訴求する対外行動として、例えばハロウィーンお化け飾り、飾りっぱなしドア飾り、マンガ風住宅、ゲーム風デザイン家具などが対象となる。

●中段の「欲求」段では、中央の「新型別荘」を挟んで、「手作り別荘」と「新遊戯別荘」が求められます。

虚欲・欲求・私欲では、純個性的な遊び空間や家具類を求める私的行動として、例えば独創的別荘・遊戯部屋、自作別荘、自作遊具などが対象となる。

虚欲・欲求・実欲では、新たな機能を備えた遊び空間や家具類をもとめる居住行動として、例えば新機能別荘・遊戯部屋、自作新機能別荘・遊戯部屋などが対象となる。

⑥虚欲・欲求・世欲では、全く新たな遊戯機能を向上できる居住空間、例えばゲーム満喫別荘・遊戯部屋、自作誘導別荘、自作誘導遊具などが対象となる。

●下段の「欲動」段では、中央の「遊び心地」を挟んで、「夢心地、手探り夢具」と「チャラチャラ、手遊び強化家具」が求められます。

⑦虚欲・欲動・私欲では、純私的な感覚的遊戯を求める私的行動、例えば昼寝部屋、ハンモック、自作夢殿、自作夢具などが対象となる。

⑧虚欲・欲動・実欲では、家族単位での感覚的遊戯を求める居住行動、例えば遊び部屋、遊び家具、自作遊戯夢殿、自作遊び夢具などが対象となる。

⑨虚欲・欲動・世欲では、世間に向けての感覚的遊戯を誇示する対外行動、例えば派手さ、きんきら風、自作誘導夢殿、自作誘導夢具などが対象となる。

以上に挙げた、9つの差戯化行動を、具体的な事例として整理すると、次表のようになります。

青地以外の分野は、上記のように差異化行動差元化行動差延化行動差汎化行動において、具体例を挙げていますので、新たな事例は青色の部分だけになります。 

生活民の差戯化行動を居住空間へ応用した場合、以上のような9つの要素が浮上してきます。

これこそ「居住空間の差戯化」という居住行動の意味するところです。

2025年3月12日水曜日

生活学・新原論Ⅵ-4:生活空間論:居住空間の差汎化

生活空間論の4番めは「居住空間の差汎化」、つまり居住者がDIY 志向やカスタマイズ志向などで生み出す、ユニークな空間志向に対応して、居住空間もまた従来の設計や設備などの概念を越えた、新たな居住物や家具類を提供する行動です。

差汎化とは差汎化とは何か?】で述べたように、新たな社会性、価値、同調などを求める、生活民の私欲変化に応えて、社会的なネウチや共同体的な供給を創りだす行動でした。前回の差延化行動で生まれた、新しい個人的「効能」を、より広く社会的な「価値」へと拡大していこうとする行動、ともいえるでしょう。

こうした行動を居住空間に当てはめると、改造可能性の高い居室、DIYを先導する家具など、居住空間作りへ居住者の参加を推奨する供給行動が対象になってきます。

差汎化行動は、上記の【新原V-】示したように、9つの行動に分かれていますので、それぞれの行動が生活空間に何を求めるのか、を考えてみましょう。

このうち、上段の「欲望」欄は【居住空間の差異化】で述べた差異化行動、下段の「欲動」欄は【居住空間の差元化】で述べた差元化行動と連動していますから、これらの動向を組み入れながら、差汎化行動の行方を展望していきます。

上段の「欲望」段では、中央の「誇示的、ユニークデザイン」を挟んで、「軽々しさ、手遊びデザイン」と「重厚さ、新型耐久デザイン」が求められます。

➀世欲・欲望・虚欲では、居住者が自らデザインや雰囲気を創り出せるような遊戯室や遊具、例えばマンガ風住宅、ゲーム風デザイン家具などを供給する。

➁世欲・欲望・常欲では、居住者が自らデザインできる建物や家具、例えば自作デザイン住宅、自作デザイン家具などを供給する。

➂世欲・欲望・真欲では、居住者が自らデザインできる書斎や学習室、例えば耐久強化デザイン書斎や自習最適勉強用具などを供給する。

中段の「欲求」段では、中央の「手作り誘導自宅」を挟んで、「手遊び誘導別荘」と「手作り推奨書斎」が求められます。

➃世欲・欲求・虚欲では、居住者が自ら施工や加工ができるような別荘や遊具、例えば自作誘導別荘、自作誘導遊具などを供給する。

➄世欲・欲求・常欲では、居住者が自ら施工や加工が可能な住宅や家具、例えば自作誘導住宅、自作誘導実用家具などを供給する。

⑥世欲・欲求・真欲では、居住者が自ら施工や加工ができるような居室や家具、例えば自作推奨書斎、自作推奨学具などを供給する。

下段の「欲動」段では、中央の「居住まい、手探り誘導家具」を挟んで、「チャラチャラ、手探り夢具」と「神々しさ、手探り神具」が求められます。

⑦世欲・欲動・虚欲では、居住者が自ら体感を誘われるような居室や道具、例えば自作誘導夢殿、自作誘導夢具などを供給する。

⑧世欲・欲望・常欲では、居住者が施工や加工を誘われるような住宅や道具、例えば自作誘導型の質観住宅、自作誘導型のフィーリング家具などを供給する。

⑨世欲・欲動・真欲では、居住者が自ら求めるような建物や道具、例えば自作を推奨する神殿、自作を推奨する神具などを供給する。

以上で述べた、9つの差汎化行動を、具体的な事例として考えてみると、次表のようになります。

生活民の差汎化行動を居住空間へ応用した場合、以上のような9つの要素が浮上してきます。

これこそ「居住空間の差汎化」という居住行動の意味するところです。

2025年2月28日金曜日

生活学・新原論Ⅵ-3:生活空間論:居住空間の差延化

生活空間論の3番めは「居住空間の差延化」、つまり居住空間の個室や寝室の構築、あるいはDIYやカスタマイズなどについて考えます。

差延化とは【生活学・新原論Ⅴ-3:差延化行動とは何か?】で述べたように、生活願望の「私欲」に対応して、自分だけの効能、感性、記号などを求める生活行動であり、社会的な価値や日常的な効用、あるいは共同的な記号や感性などを抑制する行動ともいえるでしょう。

こうした行動を居住空間に当てはめると、家屋での自室や寝室作り、あるいは居住空間へ参加行動などが対象になってきます。

差延化行動は、上記の【新原論-】で示したように、9つの行動に分かれていますので、それぞれの行動が生活空間に何を求めるのか、を考えてみましょう。

このうち、上段の「欲望」欄は【居住空間の差異化】で述べた差異化行動、下段の「欲動」欄は【居住空間の差元化】で述べた差元化行動と連動しています。

以上の動向を組み入れながら、差延化行動の行方を展望していきます。

上段の「欲望」段では、中央の「個性的:手作りデザイン居間」を挟んで、「ふまじめさ:手作り軽薄デザイン」と「まじめさ:手作り真面目意匠」が求められます。

私欲・虚欲・欲望では「ふまじめ:手作り軽薄デザイン」でできる建物、つまり所有者が既成の機能や用途よりも自分だけの遊び心や手先で造り出せるデザインや雰囲気などが求められます。

私欲・常欲・欲望では「個性的:手作りデザイン」でできる建物、つまり所有者が自らデザインできる建物や家具などが求められます。

私欲・真欲・欲望では「まじめさ:手作り真面目デザイン」でできる知的物件、つまり所有者が自らデザインできる書斎や学習室などが求められます。

中段の「欲求」段では、中央の「手作り自宅」を挟んで、「手作り別荘」と「手作り書斎」が求められます。

私欲・虚欲・欲求では「手作り」でできる遊戯用建物、つまり建築業者など設計や構築を越えて、所有者自らが造り出せる別荘や遊具などが求められます。

私欲・常欲・欲求では「手作り」でできる建物、つまり建築業者など設計や構築を越えて、所有者自らが造り出せる自宅や家具などが求められます。

私欲・真欲・欲求では「手作り」でできる知的物件、つまり建築業者など設計や構築を越えて、所有者自らが造り出せる書斎や勉強部屋などが求められます。

下段の「欲動」段では、中央の「居心地:手探り家具」を挟んで、「夢心地:手探り夢具」と「まおもて(真面):手探り神具」が求められます。

私欲・欲動・虚欲では「夢心地」の「手探り」で造り出す夢具、つまり所有者が無意識の中をさまよいつつ、自らの手で造り出せる建造物や夢遊道具などが求められます。

私欲・欲動・常欲では「居心地」を求めて「手探り」でできる建物、つまり所有者が無意識の中をさまよいつつ、自らの手で造り出せる自宅や家具などが求められます。

私欲・欲動・真欲では「まおもて(真面)」で製作できる知的物件、あるいは無意識の中をさまよいつつ、自らの手で造り出せる神殿や神具などが求められます。

以上で述べた、9つの差延化行動を、具体的な事例として考えてみると、次表のようになります。

生活民の差延化行動を居住空間へ応用した場合、以上のような9つの要素が浮上してきます。


これこそ「居住空間の差延化」という居住行動の意味するところでしょう。