2017年1月21日土曜日

「参加」・・・生活民はこのように付き合え!

「参加」戦略とは、7~8割程度の素材を供給側が提供し、残りの2~3割をユーザーの参加によって、完成品へと至る手法です。

事例としては、組み替えスーツ、自由設計プレハブ住宅、手作りキット家具、自作用ログハウスなどがあげられます。



こうしたサプライヤー・サイド・マーケティングに対して、需要者である生活民はどのように対応していけばいいのでしょうか。

「参加」の方法を大別すると、ユーザーがさまざまな情報を付け加える「コト参加」と、ユーザーが直接手を加える「モノ参加」の、2つがあります。

コト参加では、機能や性能(差別化)、色彩や形態(差別化)などの選択、加工や組み合わせなどの依頼といった、情報(コト)提供が中心となります。

その意味では、「私仕様」で取り上げた「パターンオーダー」や「イージーオーダー」なども、「参加」の簡易型といえるでしょう。

また2着のスーツでジャケットとパンツを組み替えて4通りの着こなしが可能になる「組み換えスーツ」も、ユーザーの参加性を実現するものです。

外観や内部の設計に意見や要望を要求できる「自由設計プレハブ住宅」も、参加性の高い商品といえます。

一方、モノ参加では、予め加工を予定した部材にユーザーが自ら手を加えるもので、さまざまな加工(モノ)提供が求められます。

手作りキット家具」は、予めカットされた木材、ネジやパーツがセットされたキットを購入して、それぞれを組み合わせつつ、ユーザーは自らの意向に沿った家具を仕上げていきます。

これがさらに大規模化したものが「自作用ログハウス」です。すべてプレカットした部材をフルキットで購入し、大型の機械や専門的な工具を使わなくても、マニュアルに合わせて組み立てるだけで、ユーザーの自由設計を組み込んだログキットハウスを完成させることができます。

以上のように、「参加」次元では、コト参加だけの「私仕様」を一歩進めて、コトとモノへの両方の介入が可能です。

とすれば、生活民に求められる「参加」性への対応力とは、次のようなものになるでしょう。

① まずは「私仕様」と同様、費用対便益(コスト・ベネフィット分析)のバランス視点が求められます。

② それ以上に求められるのは、ユーザー自身の創造性や加工能力といった自給・自立能力です。具体的にいえば、目的に応じてキットを選ぶ選択力、適切に組み合わせられる加工力、自らの意向を反映させられる仕上げ力などです。

③ 究極の目標となるのは、サプライヤーからの提供物を巧みに振り分けつつも、自らの生活願望をどこまでも達成していく、コト次元とモノ次元の調整能力です。

以上のように、差延化が「私仕様」から「参加」へと進むにつれて、生活民に求められる能力では、自給・自立能力の比重が次第に高まってきます

2017年1月9日月曜日

「私仕様」・・・生活民はいかに付き合うか?:

私仕様」戦略とは、先に述べたように、供給側がユーザー独自の注文に応える手法であり、事例としてはオーダースーツ、オーダー家具、自由設計住宅、結婚式オーダーパーティーなどがあげられます。

欧米ではカスタムメイドカスタマーゼーションなどとよばれていますが、こうした供給側からの手法に対して、需要者である生活民はどのように対応していけばいいのでしょうか。

代表的な事例としてスーツを取り上げてみましょう。

スーツでは、非オーダー品のレディメイド(既製服)に対して、オーダー品のカスタムメイド(注文服)があり、服地・カラー・サイズ・採寸・縫製などのレベルで、以下に示すような概ね3つの方式があります。





ユーザーの立場からいえば、

  • パターンオーダー:メーカーの差し出す既成服の中から、ユーザーが一つを選んで、調整する方式で、比較的廉価。
  • イージーオーダー:メーカーの差し出す、幾つかの選択肢の中からユーザーが一つ一つを選ぶ方式で、標準的な価格帯。
  • フルオーダー:すべての選択肢に対して、ユーザーが個別に決定する方式で、かなり高価。


パターン、イージー、フルの順で、ユーザーの選択範囲が強まり私」に応じた「仕様」が作られていきますが、その一方でサプライヤーに支払う費用が上昇していきます。

  
逆にいえば、「私効」を弱めて「個効」や「共効」を受け入れるほど、獲得コストが下がっていくということです
 
とすれば、生活民に求められる要素とは、次のようなものになるでしょう。
  
① 選択という思考、つまり「コト」次元の決定であり、直接的に「モノ」に介入するわけではないから、選択眼、つまり選択基準となる意志決定力の錬磨が求められる。
 
② パターンオーダーでは「共効」の「個効」化や「私効」化、イージーオーダーでは「個効」の「私効」化、またフルオーダーでは「私効」の集中化など、それぞれの選択におけるネウチの最適化が求められる。
  
③ パターン、イージー、フルの順に費用が上昇していくから、選択にあたっては、常に費用対便益(コスト・ベネフィット分析)のバランス視点が求められる。
  
以上のように、「私仕様」次元において、生活民に求められる対応力とは、サプライヤーの提供物を巧みに振り分けつつも、自らの生活願望をどこまでも達成していく、コト次元の能力といえるでしょう。