2020年10月29日木曜日

個人容量=生活水準の上昇が人口を減少させる!

前回述べたように、ある時代、ある国で人間が生存できる人口容量は、さまざまな動物の事例を基礎としつつ、人類独自の生存条件によって、その構成が決まってきます。

動物の場合は、食糧獲得量、接触密度、排泄物濃度などが絡まって、「キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity:生存容量の上限を造られており、これに応じて、個数当たり容量の内容も決まります。

人間の場合も、衣食住の生活水準、経済水準、環境水準などの複合条件が、「口容量(Population Capacity」の上限を形成していますので、それらに応じて、個人容量(=生活水準)の中身も決まります。

もし人口容量が一定であれば、一人当たりの個人容量が高まると、人口ピークは早くなり、逆に個人容量が下がると、人口ピークは遅くなります。

人口容量が変動する場合には、容量が上がっても、個人容量が高ければ、人口ピークは早く到来し、逆に容量が下がっても、個人容量が低ければ、人口ピークは遅延します。

現代日本の推移を振り返ってみましょう。

195060年代には、人口容量は未だ低かったのですが、さらに伸び続けており、1人当たりの個人容量もかなり低かったため、人口抑制装置を作動させることなく人口は急増していました。

しかし、19902000年代になると、人口容量の拡大がほぼ限界に近づいているのに、個人容量は継続的に高まっていたため、間もなく人口抑制装置が作動して、人口を減少させることになりました。

人口抑制装置には、増加を抑える行動減少を促す行動があり、容量が限界に使づくにつれて、平行して作動します。

下表は筆者の人減ブログ」から引用したものですが、この装置は次のような構造を持っています。もう一度整理しておきましょう。

抑制装置には、増加抑制減少促進の両面があり、それぞれが生物・生理的装置人為・文化的装置に大別される。

増加抑制装置には、生物・生理的な抑制装置人為・文化的な抑制装置があり、後者は直接的抑制(妊娠抑制、出産抑制など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、都市化、社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的出産抑制、出産増加への不介入など)の3面で作動する。

減少促進装置にも、生物・生理的な促進装置人為・文化的な促進装置があり、後者は直接的促進(集団自殺、環境悪化や死亡増加への不介入など)、間接的促進(飽食・過食による病気の増加、生活習慣病の増加、都市環境悪化など)、政策的促進(老人遺棄、棄民、戦争など)の3面で作動する。

それゆえ、人口容量の上限が迫ってくると、生活民の生活意識にも、これらの影響が現れてきます。とりわけ影響が大きいのは、間接的な抑制・促進装置とそれに連動した直接的な抑制・促進装置の作動でしょう。

①間接的な抑制装置が、人口容量の逼迫による生活圧迫で、結婚を抑制して家族を縮小させ、都市化に伴う社会的頽廃化などで出産数を抑制する一方、間接的な促進装置は、人口拡大末期の飽食・過食による生活習慣病の増加都市環境の悪化などで死亡数を増加させる。

②直接的な促進装置でも、妊娠抑制や出産抑制などで出産数が抑制される一方、自殺の増加環境悪化による死者の漸増などで死亡数を増加させる。

こうした社会環境が、先に述べたような生活意識を生み出すことになります。

自己防衛意識の上昇・・・人口容量の伸びが止まった時、人口がなお増え続けていると、生活民1人あたりの個人容量は当然減ってくるから、生活民はまず自己防衛に走り出す。

対抗・攻撃性の上昇・・・人口容量の分配をめぐって、生活民は他人との関係に敏感になり、それは家族や子孫に対しても及んでいく。

とすれば、限界時代の生活意識を考えるには、まずはこの構造の理解から入らなければなりません。

2020年10月22日木曜日

人口容量と生活水準が人口ピークを決める!

21世紀の先進国とは、人口減少という新事態に的確に対応する「人減先進国」だ、と述べてきました。

人口が減るのは「少子・高齢化」などのせいではありません。表面的には「少子・高齢化」のように思えますが、その背後には「人口抑制装置」の発動という、より根源的な理由が潜んでいるのです。

先に述べたように、あらゆる生物は「キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity」の上限に達すると、個体数抑制装置を作動させ、それぞれの個体数を減らしていきます。

人間も同様で、「人口容量(Population Capacity」の上限に近づくと、人口抑制装置(生物:生理的抑制装置+人為:文化的抑制装置)を作動させ、人口を減らしていきます。これこそ人口減少の真因です。

一国の人口動態において、人口抑制装置が作動する仕組みは、次のようなものです。

①ある国の人口容量とは【自然環境×文明】、つまり国域や風土など自然条件を、その国の国民が技術・経済・文化などの文明力で創り出した、一定時期における居住可能量です。

②国民は可能量の上限まで人口を増加させていけますが、一人当たりの生活水準低ければ、それだけ多くの人口が居住でき、逆に水準が高ければ、それに応じて人口は減ります。

③国別の人口ピークは、①と②の関係によって決まってきます。一時期・一国の人口容量はその国の自然条件と文明力によって決まってきますが、実際の人口ピークは、生活水準が高ければ早く到来し、生活水準が低ければそれだけ遅くなります。

以上の関係は、次のように描くことができるでしょう。


このような関係で、前回指摘した主要国の人口ピークを見直すと、次のような指摘が可能です。

19802000にピークに至った東欧諸国は、生活水準がさほど高くないにも関わらず、地理的、政治的な条件などで、人口容量の上限が早く現れたものと推測されます。

200120にピークとなった南欧諸国、ロシア、日本韓国などは、それぞれの文明力による人口容量上限の到来ともに、生活水準の急速な上昇によるものと思われます。

202140にピークを迎える西欧諸国、中国、ベトナムなども、各国の文明力による人口容量上限の到来生活水準の上昇によるものと推定されます。

204160にピークが予想される北欧、インド、インドネシア、中南米、アメリカ合衆国、南アフリカなどは、それぞれの文明力と生活水準が、世界人口のピークと連動するように平均化した動きをみせています。

20612100にピークが予想されるカナダ、ブラジル、オーストラリア及びアフリカ諸国は、それぞれの文明力による人口容量の開発が比較的遅いうえ、生活水準の上昇もゆっくりしているからだ、と推測されます。

以上のように見てくると、国別の人口ピークは、それぞれの自然条件と文明応用力のレベルを前提としつつ、生活水準の上昇速度によって決まってくるもの、と推測できます。

2020年10月7日水曜日

世界の各国で人口が減り始める!

日本の人口は10年以上前から減少を続けていますが、世界人口の方は、前回述べたように、30年後の2050年ころから減少に入る、と予想されています。

国連の人口予測2019(低位値)によると、世界各国の人口もまた、次のように減少へ向かっていくようです。

まずエリア別に見ると、下図のように推移していきます。


①最大のエリアであるアジア地域2039年をピークとして、2040年代から減っていきます。

ヨーロッパは2020大洋州は2033南アメリカは2041北アメリカは2048にそれぞれピークに達し、以後は減っていきます。

アフリカだけは伸び続けますが、2096にはピークを迎えます。


主要国別に見ると、次表のように推移していきます。


①エリア群では、ヨーロッパ、アジア、南アメリカ、北アメリカ、大洋州、アフリカの順にピークに迎えます。

ヨーロッパでは、すでに1980年代から東欧諸国で減少が始まっており、2010年代に入るとイタリアもピークに達しました。ドイツ、ロシア、スペインが2020に、オランダ、フランスが2020年代中後期に、イギリスが2030年代スウェーデンが2049ノルウェーが2059と、ほとんどの先進国でピークを迎えます。

アジアでは、日本が2009にすでにピークに達していますが、今後は韓国が2020中国が2024インドが2042インドネシアが2055にそれぞれピークとなります。

南アメリカでは、ペルーが2049ブラジルが2091とピークが予想されています。

北アメリカでは、メキシコが2044に、アメリカ合衆国が2047カナダが2075にピークになります。

大洋州では、ニュージランドが2044オーストラリアが2094にピークを迎えます。

アフリカでは、南アフリカが2050エジプトが2079コンゴが2097にピークとなりますが、ナイジェリア、タンザニア、スーダンなどは2100年以降になる模様です。

⑧ヨーロッパ諸国とアジア諸国のほとんど、およびアメリカ合衆国は2050年代までにピークを迎え、以後は減少していきます。

以上のように、30年後の世界人口ピークと連動して、欧米やアジアの先進国ではすでに人口減少が始まろうとしています。まさに人口減少こそ先進国の宿命なのです。

いいかえれば、21世紀の先進国とは、いつまでも人口増加を続ける国ではなく、人口減少という新事態に的確に対応していく「人減先進国」といえるでしょう。