2022年10月31日月曜日

大都市化が暮らしを変えた!

人減先進国としての日本の将来。それを考える前提として、過去100年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。

前回の家族構成に続いて、今回は居住状況の変化を人口分布の推移で振り返ってみます。

統計的なデータが残っている、約100年前からの人口分布を顧みると、下図のようになります。



この図では、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8地域を「大都市圏」と定義し、その他の地域と区分しています 

大都市圏の人口は、1920年の1595万人から1940年の2532万人を経て、戦後の1947年に2269万人とやや減少した。1950年の2544万人あたりから急増し、1960年の3347万人、1980年の5106万人の後、やや伸び率を落としたものの、2005年に5879万人となった。その後は総人口の減少にも関わらず、2020年には6134万人に達している。

②全人口に占める大都市圏人口の比率は、1920年の28.5から1940年の35.2%までは上昇したが、終戦直後の1947年には29.0%まで下がった。1950年の30.2%から1980年の43.6あたりまでは急上昇し、その後はやや緩和したものの、2015年に47.7%、2020年には48.6%に達している。総人口のほぼ半分が大都市圏に住んでいるということだ。

以上のような変化は、生活民の暮らしにどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

生活態様:連動型から分散型へ

非大都市圏における生活活動は、生産や消費、居住や移動などが比較的近距離の空間の中で、連動的に営まれていた。しかし、大都市圏の拡大に伴って、それぞれが分散し、さまざまな遠距離空間で独立的に営まれる、という割合が拡大した。

生産と消費:連結型から分立型へ

非大都市圏における生活民は、生産活動と消費活動をほとんど連結して行っていたが、大都市圏の拡大とともに、両者は完全に分離され、生産活動は分業化、消費活動は個々人による個性化の色彩を強めていった。

家族形態:大・中家族から小家族へ

非大都市圏の家族形態は、三世代家族や複合家族など比較的多数であったが、大都市化が進むともに二世代、夫婦のみ、単親、単身など小家族の比率が拡大した。

コミュニティ:地縁型から職縁型へ

非大都市圏における生活民相互の人間関係は、地域社会というコミュニティと濃厚に繋がっていたが、大都市化が進むにつれて地域とは徐々に離れ、職場や職縁というコミュニティの比重が拡大した。

生活行動:情動的から合理的へ

非大都市圏における生活民は、農林漁業、小規模製造業、小売業などに関わる比重が多く、その生活行動もかなり感覚的、心情的な比重が強かった。しかし、大都市化が進むとともに、通勤、通学、職場環境、購買環境などで、数値的、合理的に行動する比重が高まってきた。

このように見てくると、人口増加と大都市化に伴って、生活民全体の生活行動もまた、総合・連結型の様式から個別・分散型のスタイルへと、その比重を移してきたものと解釈できます。

2022年10月25日火曜日

家族構成も100年で変わった!

私たちの生活様式は、人口減少に対応して、徐々に飽和・濃縮型へと移りつつあります。

その方向とはいかなるものになるのか、過去100年間の生活様式の変化を参考にしつつ、改めて確認したいと思います。

前回の生業構造に続いて、今回は家族構成の変化。

統計的なデータが残っている、100年前からの日本人の家族構成を振り返ってみると、下図のようになります。



上の方の実数推移では、次のような変化が読み取れます。

①日本の家族の数は、1920年の1100万世帯から1955年の1700万世帯、1980年の3600万世帯を経て、2020には5600万世帯にまで達している。

核家族(総務省の定義では、夫婦のみ、夫婦と子ども、単親と子ども)は、1920年の615万世帯から1955年の1037万世帯、1980年の2159万世帯を経て、2020年には3011万世帯に達している。

その他の親族世帯(夫婦と両親、3世代、夫婦と他の親族、兄弟姉妹のみ等)は、1920年の425万世帯から1955年の635万世帯を経て、1985年の721万世帯でピークに達し、2020年には378万世帯まで急減している。

単独世帯は、1920年の66万世帯から1955年には60万世帯にまで減ったものの、1960年には358万世帯へと急増し、1980年の710万世帯を経て、2020年には2115万世帯に達している。

下の方の構成比推移は、次のように変化しています。

核家族1920年の55から1955年には60 %に増えた後、19602010年代は5060%台を続けたものの、2020年には54まで落ちている。

その他の親族は、1920年の38から1955年の37%、1960年の31%、1980年の20%と一貫して減り続け、2020年には7まで落ちている。

単独世帯1920年の6から、1955年には%にまで急落したものの、1960年の16から広がり始め、1970年代以降一貫して拡大し、2020年には38に至っている。

以上のような変化は、私たちの生活態様にどのような影響を与えたのでしょうか。

生活資源の獲得法では、家族・親族中心から個人単位へと比重が移っている。例えば、農業や商工業など家族集団で営まれてきた労働が、給与生活者や雇用者など、個々人の労働へと移行している。

生活資源の消費法でも、家族・親族単位から個人単位へと移行している。例えば、祖父母・夫婦・子どもなど家族集団で営まれてきた生活行動や消費活動が、独立した個々人毎の生活・消費行動へと分散している。

さまざまな意志決定では、家族・親族による集団的な思考が縮小し、個々人の独立的な思考が拡大している。例えば、一人の生活民が己の生き方や暮らし方などを決めようとする際、家族や親族に相談したり配慮したりする機会が減少し、自分自身で考え、かつ行動していくという傾向が広がっている。

こうしてみてくると、家族構成100年の変化もまた、私たちの暮らしや働き方はもとより、個々人の考え方や生き方などにも、さまざまな影響を与えた、といえるでしょう。

2022年10月11日火曜日

就業構造で生活様式の変化を振り返る!

言語3階層説が一段落しましたので、生活学の本論に戻り、新たなテーマとして「生活様式の変化」を思考していくことにします。

我が国では200年ほど続いた人口増加時代が終わり、2009年以降、人口減少時代に入っています。

私たちの生活様式についても、人口増加を前提にした成長拡大型が終り、人口減少に見合った飽和・濃縮型へと移りつつあります。

その方向とは、いかなるものになるのでしょうか。

それを確かめるため、まずは過去から現在までの生活様式の変化を確認しておきたいと思います。

最初は生業の変化。

統計的なデータが残る、100年前からの日本人の就業状況を振り返ってみると、下図のようになります。



 

就業者の総数は、1920年の2726万人(総数の48.7%)から1950年の3602万人(43.3%)を経て、1995年に6418万人(51.2%)でピークとなったが、人口減少に伴い2015年には5892万人(46.4%)まで落ちている。

1次産業192050年までは全就業者のほぼ半数を占めていたが、1955年の1629万人(41.2%)から減り始め、19701015万人(19.3%)、1990439万人(7.2%)、2015年には222万人(3.8%)と急速に落ちている。

2次産業は、1920年の560万人(20.5%)から徐々に上昇し、1965年に1511万人(31.5%)で1次産業を抜き、1995年までは2000万人前後(3134%)を保った後、2000年以降低下し始め、2015年には1392万人(23.6%)まで落ちている。

3次産業は、19201950年で6501000万人(30%前後)を続け、1960年に1684万人(38.2%)で1次産業を追い抜いて、以後は最大シェアを続け、1980年の3091万人(55.4%)から2000年の4067万人(64.5%)に達したものの、人口減少とともに2015年には3961万人まで減った。だが、その比重は67.2%と高位を保っている。

こうした変化は私たちの生活様式に、どのような影響を与えたのでしょうか。

❶人口増加時代(~2008年)には、総人口に占める就業者の比重は半数ほどであったが、人口のピークを過ぎると、次第に落ち始め、より少ない就業者で社会を支えなければならない時代に入っている。

自給自足志向の強い1次産業就業者は、戦後10年ころまでは約半数を占めていたが、以後は急速に減り始め、現在では5%未満となっている。つまり、自立型生活民が減り、給与生活者が増えたということを示している。

1次産業就業者の比重低下は、食糧自給体制の縮小を示しており、グローバル化への追随強化を象徴している。

2次産業就業者の比重変化は、成長拡大型社会の基盤強化を示すとともに、グローバル化への対応強化をも示しているが、成長拡大が限界に近づくにつれて、その限界もまた象徴している。

3次産業就業者は、高度経済成長の始まった1960年代以降、1980年代までは4060%の高比重を保ち続け、1990年以降にも6070%の維持している。一方では多様な生活資源で暮らす生活民の増加を示すとともに、他方では自給自立型生活民の縮小を示している。

分類不能者の比重増加は、成長拡大型社会を担う産業構造とは、かなり異なる種類の働き方を選ぶ生活民の増加を示唆している。

以上のように、わが国の生活資源を支える産業別就業者の推移から、生活形態の変化を読み解いてみると、約200年間続いてきた現代日本社会の拡大要因とその限界が緩やかに浮上してきます。