2019年9月28日土曜日

三立社会へ向かって!

ポスト消費社会の可能性として、これまで生成社会、統合社会、複合社会の3つを提案してきました。

3つの社会のイメージ(
生成社会統合社会複合社会)を、生活空間の上にもう一度図示しておきます。

 これら3つの社会イメージを重ねてみると、次のような位置づけになります。



これを見る限りでは、生成社会、統合社会、複合社会の、3つの社会の重なった濃厚な部分が、ポスト消費社会の進むべき方向ということになります。

しかし、この部分だけがポスト消費社会というわけではありません。




この部分が意味を持ってくるためには、3つの社会を構成する3つの要素、つまり生成社会の生産・消費・生成統合社会の記号・機能・象徴、そして複合社会の再配分・市場・互酬の、それぞれのバランス化が必要条件となるからです。

アトモノミクスの立場でいえば、一人ひとりの生活民が、本来の個体性を回復したうえで、無意識次元の象徴性もまた回復させ、さらに新たな互酬性を構築することで、生産・消費・生成の3つ、記号・機能・象徴の3つ、再配分・市場・互酬の3制度をより滑らかに融合していくことが可能になる、ということです。

とすれば、ポスト消費社会は「三立社会(triangular society)と名づけるのがふさわしいでしょう。

生成社会、統合社会、複合社会の3つの社会が鼎立するとともに、生産・消費・生成の、記号・機能・象徴の、再配分・市場・互酬の、それぞれのバランス化をめざす社会という意味です。

今後の日本がこうした方向へ進むことができれば、閉塞感の強まる市場社会を再構築できるばかりか、望ましい統合社会や複合社会に向かって、新たな一歩を踏み出ことができるはずです。

現代の日本人に求められているのは、近代産業社会、近代市場社会の最終段階に向かって、基本的な9つの要素のバランスを回復し、成熟した三立社会へ向かって、社会全体の舵取りを徐々に調整していくことだと思います。

2019年9月19日木曜日

ポスト消費社会へ・3つの条件

これまで、ポスト消費社会の可能性として、生成社会統合社会複合社会の3つをあげてきました。それぞれの社会において、検討すべき要点を改めて整理してみると、次の3つに集約されます。



第1は
個体性の回復

生産者や消費者、あるいは生活者や生活人という概念に飲み込まれていた生成者生活民)という主体を回復させて、社会や市場に対抗できる個体性を取り戻ことです。

具体的にいえば、自給自足や物々交換を見直したり、モノからコトまで、情報から道具まで、既存の「ねうち」をデコンストラクト(解体・再構築)するなどの、独創的な生活行動を拡大していきます。


これによって、生産者、消費者、生成者(生活民)という、3つの立場のバランスを回復していきます。

第2は
象徴性の回復

私たちの生活願望を、表層的な欲望から深層的な欲動へ向けさせ、それによって願望の方向を記号志向から象徴志向へと拡大します。

ここでいう象徴とは、【
「象徴」を応用する!2016年4月9日】で紹介した、C・G・ユングの「原始心像」であり、夢や幻想の中に現れるイメージとして、言語が創り出した「記号」に対抗するものです。

この拡大によって、マスメディアや市場が押し付ける、さまざまな記号(流行、権威、誘導など)だけにとらわれず、生活者の内側からにじみ出る象徴(感覚、欲動、自律など)を重視する態度を伸ばしていくことができます。

具体的には、体感、欲動、象徴といった、言語化される以前の知覚を強化することであり、その延長線上に、象徴が集団的に共有された象徴制度(家族、血縁、地縁、知縁共同体)や象徴交換(贈与、寄与、互酬性)などの復権が展望されます。

こうした方法で弱まっていた象徴能力を回復させれば、記号、機能、象徴という3能力のバランスを復活させていくことが可能になるでしょう。

第3は
互酬制の回復

個体性の回復と象徴性の回復が重なると、生成者(生活民)が象徴制度になじんできますから、互酬制を再生させる可能性が高まってきます。

近代社会では圧倒的な市場交換によって圧迫されてきた再配分や互酬制、とりわけ互酬制を回復させることができれば、市場交換を抑制しつつ、再配分を再構築して、社会制度としての3制度のバランスを回復させることが可能になります。


以上のような3つの方向へ、従来の消費社会が的確に対応していくことができれば、ポスト消費社会には明るい展望が広がってきます。

それは単に消費社会の成長・成熟という次元を超えて、近代日本社会、さらには近代経済国家の新たな方向を示しているでしょう。

2019年9月9日月曜日

ポランニーの4制度を生活空間上に位置付ける!

これまで述べてきたK.ポランニーのいう4つの制度とその動向を、このブログで何度も述べてきた生活空間【生活空間から消費社会を考える:2019年5月11日】の中に位置づけると、図1から図3のように描くことができます。

古代から中世にかけては3制度・・・図1


横軸の社会制度や共生生活の分野で、「再配分」が記号的・理知的な制度として、また「互酬」が感覚的・習俗的な制度として、それぞれが位置づけられ、さらに私的生活から共生生活にまたがる分野に「家政」が、個人や家族の自律的・自給的な制度として存在します。



再配分」は、一方では国家による租税や公的年金・保険などの公的負担、他方では生活保障や年金・保険などの給付を、それぞれ理性や理念という高度にコト化された言語次元で制度化したものです。

また「互酬」は、贈与、遺贈、寄贈などの互恵行為を、言語以前の欲動次元に基づく象徴交換制度と見なしたものです。

そして「家政」は、個人や家族が相互の生活のために行なう、自給自足的な制度であり、横軸では私的生活から共生生活まで、縦軸では感覚・象徴的な願望から機能・性能的な願望や理性・記号的な願望まで対象にしています。



近代になるにつれて4制度・・・図2


旧来の2制度、「再配分」と「互酬」の間に「交換」が割って入ります。

「交換」という行為は、「あたい」の上下を合理的に判断するものですから、機能や性能を重視する欲求次元を中心に上下に広がります。







現代では「交換」が肥大して「市場交換」・・・図3

近代から現代へ進むにつれて、「市場交換」は「再配分」や「互酬」を、さらには「家政」までも押しのけるようになってきます。












現代消費社会を位置付ける・・・図4

以上のような推移の中に、現代の消費社会を位置づけてみると、図のように市場交換」制度の中の左側に広がる領域に相当します。

消費社会というと、現代社会の全てを覆っているようにも思えますが、全体的な社会・経済制構造の中に位置づけると、この程度の社会になるでしょう。



ポスト消費社会の方向・・・図5

とすれば、ポスト消費社会についても、市場交換、互酬、再配分、家政の諸制度がほどよくバランスした、図のような「複合社会」に向かって、3つの点で調整が必要になってきます。




 
 
 
 
第1は市場交換の縮小に比例した、適度な領域へ向かうこと

第2は再配分の適正化に応じて、税金や社会保障などとの関係を見直すこと


第3は互酬制の拡大に応じて、贈答、贈与、寄与などの生活行動と一体化をめざす


こうした方向へ向かうことによって、消費社会もまた複合社会の中に、それなりの立場を見いだすことができるでしょう。