2017年5月29日月曜日

メッセージが伝える、6つの嘘とは・・・

言葉の示す「」とは何でしょうか。

前回述べたように、文化人類学のMetamessage論によれば、私たちの生きている言語空間は、言葉の示すことを全く疑わないですべて真実とみなす「真実空間」と、言葉の示すことはすべて虚構とみなす「虚構空間」、そして両者の間で言葉とは真偽入り混じったものだと考える「日常空間」の、3つによって成り立っています。

それゆえ、言葉と虚実の関係が実際に問題になるのは日常空間です。

この空間内で言葉が嘘を意味するケースには、幾つかの分類法がありますが、言語学的な視点に立つと、まずは単語が嘘を示すSemantics(意味論)次元と文章が嘘を示すSyntax(統辞論)次元に分かれ、前者は2つに、後者は4つに分かれてきます。


Fake Signifié(偽語意)次元・・・犬や狐や狸などを指さして「猫だ」と、単語そのものが嘘を示すケース。

Assert Signifié(断語意)次元・・・小動物(猫、犬、狐、狸など)を見て「猫だ」と、単語の意味を断定するケース。


Fake Message(偽文意)次元・・・猫を指さして、「これは猫ではない」と、文章の前後で嘘を示すケース。

Reverse Message(逆文意)次元・・・文章で嘘を示すケース・・・目の前に猫がいるのに、「猫がいない」と嘘をいうケース。

Assert Message(断定文意)次元・・・暗闇の中の小動物(猫、犬、狐、狸など)を見て、「猫がいる」と断言するケース。

Fiction Message(虚構文意)次元・・・猫を虐めた子どもたちに、「猫は化けて出る動物だ」と諭すケース。

以上の6つが、Word自身やそれが連なったSentenceが嘘のMessageを示す、代表的なケースですが、勿論、これ以外にもなお幾つかのケースが考えられるでしょう。

生活民がこれらを的確に見破り、さらには積極的に使いこなしていくにはどうすればいいのでしょうか。

2017年5月23日火曜日

「脱・真実」へ対応する!

post-truth(脱・真実)という言葉が流行しています。

この言葉を作ったオックスフォード大学出版局によると「客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」を意味しているそうです。

アメリカ合衆国はもとより、ヨーロッパ諸国の政治状況をみると、なるほど!とも頷けます。日本もまた同様なのかもしれません。

背景の一つには、パソメディアの急速な拡大でマスメディアの相対的な凋落という、情報環境の激変が考えられます。

こうした社会的環境の変化に、生活民はどのように対応していったらいいのでしょうか。

メディア上を飛び交っている“言葉”の本質的な機能を改めて理解するところから、再構築していくことが求められます。

これについてはすでに「
前後軸が作るメタ・メッセージの世界」((2015年3月12日)や「差真化とは何か?」(2015年11月5日)で述べていますが、改めて解説しておきましょう。

私たち人間は、自然環境であれ社会環境であれ、周りの生活世界を、言葉やシンボルによって理解しています。生活世界のさまざまな現象は、一つずつ言葉と対応することによって、私たちの頭脳の中に収まっているのです。

だが、言葉とは意外に曖昧なもので、真実を示すとともに、虚偽もまた示すものです。言葉という人間独自のツールには、真実を表すとともに、嘘を表すという、両方の機能があるからです。

こうした言葉の機能を、文化人類学の専門用語では「メタ・メッセージ」と名づけています。一つ一つの言葉がさまざまなモノやイメージを示す「基本的なメッセージ」の次元を超えて、幾つかの言葉がまとまって一定の約束事を示す「超越的なメッセージ」をあらわすことを意味しています。

この立場に立つと、言葉の示すことを全く疑わないですべて真実とみなすメタ・メッセージの場が、儀礼や儀式に代表される「真実空間」であり、逆に言葉の示すことはすべて虚構とみなしたうえで、その嘘を楽しむメタ・メッセージの場が「虚構空間」ということになります。



そして、2つの空間に挟まれて、真偽の入り混じった生活空間こそが、私たちが毎日暮らしている「日常空間」です。

要するに、私たちの生活空間とは、毎日の暮らしの世界、儀式や儀礼などの真実世界、ゲームやドラマなどの虚構世界の、3つで構成されていということです。

それゆえ、私たちの日常生活とは、真実と虚構の狭間で絶えず揺れ動いている、ということになります。

以上のように考えると、言葉が作り出す、さまざまな情報世界への対応がこれまでとはかなり変わってきます。

供給側からのマーケティング戦略では、真実向けを差真化戦略、虚構向けを差戯化戦略と位置付けて、日常的な戦略とは一味違った戦略を採用し始めています。

こうした社会環境の変化に対して、生活民はどのように対応していけばいいのでしょうか。 

2017年5月11日木曜日

SNSにどう向き合うか?

企業側からの差汎化戦略として、近年最も注目すべき事例の一つはSNS(Social Networking Service)の普及・拡大でしょう。

いうまでもなくLINE、 Facebook、Twitter、Instagramなど、internetを利用してユーザー同志が手軽に情報を発信しつつ、交流を深める双方向メディアです。

利用者は年々増加しており、今年中に国内で7500万人を越え、ほぼ2人に1人が利用する、との予測もあります。

年齢構造では、20代が最も高く7割に達していますが、40代で5割、50代で4割、60代で2割と、中高年でも大きく伸びています

利用目的をみると、全体の8割が「知人や友人とのコミュニケーション」、3割が「情報の探索」、2割が「交流の拡大」「体験の報告」、1割が「思考や考え方の主張」などで使っているようです(総務省・通信利用動向調査)。

SNSのメリットは、私たち一人ひとりが、新聞・雑誌やテレビといった既成のマスメディアを通さなくても、独自の情報を自ら発信できるようになったことです。

マスコミやミニコミとは一味違うパソコミ(Personal communication)の出現ともいえるでしょう。情報の社会的交流という生活分野では、今までほとんど受信一辺倒であった生活環境が大きく変わって、自ら発信する行動が急速に拡大しているのです。

そこで、無名の一市民もまた「保育園落ちた日本死ね!!!」とか「#東北でよかった」などと書き込んで、ネット上で〝炎上〟を引き起こし、社会的な関心を集めることに成功しています。

デメリットとしては、マスメディアのように送り手側の内容チェックが入りませんから、「某有名人が死んだ」とか「某国のミサイルが発射された」など、とんでもない虚偽情報やデマが大量に飛び交ようになったことでしょう。

これにつれて、客観的な事実に目をつむり、感情的な主張のみが罷り通る政治状況、いわゆる「Populism」も広がって、「post-truth(脱・真実)などという懸念も高まっています。

供給側の差し出した、こうした差汎化状況に、一人ひとりの生活民は一体どのように対応していけばよいのでしょうか。




一つは情報環境へ
の差延化行動として、「私仕様」「参加」「編集」「変換」「手作り」という5つの基本行動を積極的に展開し、情報市場の生活素場化を進めていくことです。

もう一つは情報発信の基本である言語行動の多様性、つまり「言葉」というツールの持つ、真実と虚構という二重性を徹底的に理解したうえで利用していくことです。

次回からは供給側の差し出す差真化戦略差戯化戦略に向けて、生活民自身の対応行動を考えていきましょう。