2023年1月29日日曜日

経済成長と人口の変化を振り返る

人減先進国としての日本の将来。・・・これを考える前提として、過去120年間、日本社会の変化と人口動態がいかに関わってきたのか、を確認しています。

前回の学歴に続き、今回は経済成長率=実質GDP成長率人口の増減率を振り返ってみましょう。



●実質GDP成長率の推移

戦前の45年間190045年)には、大きな変動幅を示しつつ、上昇を続けてきたものの、開戦によって3940年には急落している。

戦後の30年間194674年)は、戦後復興や朝鮮特需(195052年)で急上昇し、高度経済成長期(195573年)まで高水準を維持したものの、その後は急落している。

安定成長期197499年)になると、再び上昇を回復したが、第2次オイルショック(1980年)、バブル景気崩壊(1980年代後半)、阪神・淡路大震災(1995年)、金融危機(1997年)などによって、再び低下していく。

最近の低成長期200020年)でも2%内外の低成長を続けていたが、2008年のリーマン・ショックで急落し、その後は幾分もち直したものの、12%の低成長を続け、2020年のコロナショックに至っている。

●人口増減率の推移

戦前の45年間190045年)は、1.01.5%の増加を続けていたが、太平洋戦争(194045年)によって1945年には3.1%まで低下している。

戦後の30年間194674年)は、第1次ベビーブーム(194649年)で5.0に始まって2.0%台に至る時期と、第2次ベビーブーム(197174年)で2.3を記録した時期に挟まれ、ほぼ1.01.5%台を維持していた。

ポスト・ベビーブーム時代197499年)は、1975年の1.2%から一貫して漸減し、99年の0.2に至っている。

21世紀の減少期200020年)は、2000年の0.2%から2010年の0%へと下がり、2011年からついに0.2%のマイナス成長となって、2020年には0.3まで落ちている。

以上のような経済成長と人口増減の間には、どのような対応があるのでしょうか。

❶大局的に見ると、経済動向と人口増減には、大まかな相関関係が発見できる。

❷戦前は経済成長率が大きく上下するにもかかわらず、人口動向は安定した伸び率を保っている。

❸戦後の30年間(194674年)は、経済の安定的成長に支えられて、人口も2つのベビーブームを作り出し、継続的に増加している。

1975年以降は、経済が安定的な成長から低成長へと変化するにつれて、人口増加も徐々に低下している。

200年以降になると、経済の低い成長率に対応するように、人口もまた大きく停滞し、2011年からは増加から減少に至っている。

こうしてみると、当然のことながら、経済成長と人口動態はほぼ連動しており、経済的環境という人口容量の拡大と停滞が、人口の増加と減少を引き起こす、大きな要因の一つになっている、と言えるでしょう。 

2023年1月13日金曜日

学歴が上がると出生率が下がる!

人減先進国としての日本の将来。・・・それを考える前提として、過去120年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。

前回の食料自給率に続き、今回は進学率と出生率の関係を振り返ってみましょう。 


高等教育機関への進学率の推移は、生活民一人一人にとって、一方では教育費用負担の増加を、他方では高学歴化による上昇志向の拡大を、それぞれ意味しています。

その意味では、一国の人口を構成する生活民の欲望水準を象徴している、とも言えます。

そこで、高等教育機関への進学率の推移を、次のような手順で調べてみました。

戦後の進学率は、文部科学省の諸統計で、次のように算定されています。

高等教育機関進学率(過年度入学=浪人を含む)=大学・短期大学・高等専門学校進学者数/18歳人口(3年前の中学校卒業者数)

戦前の進学率は発表されていませんので、文部科学省の「明治6年以降教育累年統計」をベースとしつつ、戦後に近づけるため、次のように算定しました。

高等教育機関進学率=旧制高等学校・専門学校・実業専門学校・旧制大学・師範学校・高等師範学校などの生徒数/18歳人口

このような手順で進学率の推移を振り返ってみました。

戦前明治~大正期(19002513昭和前期192640)は4前後であった。

戦後は、1950年代の10から、60年代1920%、70年代2538%と登り始め、80年代3990年代492000年代57と急上昇した後、2010年には58.6に達している。

現在では、子作りを判断する50歳以下の4割以上が、すでに高学歴者になっている。

他方、出生率の推移を、合計特殊出生率の動きで比較してみましょう。

合計特殊出生率とは、1549歳の既婚・未婚の全女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生の間に産む子どもの数を表しています。

その推移は次のようなものです。

戦前1900年の6.25から10年の5.63まで低下した後、20年前後に6.45まで回復したものの、以後は急落し、39年に3.74まで落ちている。

戦後1947年の4.54から55年の2.37人、60年の2.00人、70年の2.13人、80年の1.7590年の1.54人、2000年の1.36と低下した後、2010年代に1.45とやや回復し、2020年に1.34に至っている。

1900年代はほぼ一貫して低下傾向にあったが、2000年代に入って横ばい状態にある。

2つのデータを比較してみると、次のようなトレンドが読み取れます。

❶進学率は18歳時点のデータではあるが、その後の経歴となるため、生活民全体の欲望水準が想定できる。

❷進学率と出生率の推移は見事に逆対称を示しており、相関係数が0.737と、強い負の相関が見られる。

1960年以前は進学率の漸増と出生率の急減、以降は進学率の急増と出生率の漸減が、明確に読み取れる。

学歴の上昇で出生率はなぜ低下していくのでしょうか。主な理由として、次の3つをあげることができます。

①高学歴者になるためには、教育費が増加し、父母の費用負担が増加する。

②高学歴者ほど自己実現欲望を拡大させ、子作りを敬遠する。

③高学歴者ほど判断能力を拡大させ、将来不安人生不安を感じる。

こうしてみると、進学率と出生率の関係には、人口容量が限界に近づくにつれて、生活民の上昇欲望や生涯意識が敏感になり、子作りを躊躇う、という関係が如実に表れている、と思われます。

これこそが、人口抑制装置が作動する仕組みの一つ、ともいえるでしょう。