2021年1月29日金曜日

コンデンシング・ライフ・・・基本は差延化!

コンデンシング・ライフでは、社会界・世欲・共効方向から個人界・私欲・私効方向へと、生活民の軸足が向っていきます。

個人界・私欲・私効トレンドが強まると、生活民はどのような生活行動を増やすのでしょうか。

基本的な方向としては、【言語活動の「差延」から生活行動の「差延化」へ】で述べた、以下のようなトレンドです。

人類の思考行動のベースにある言語行動の3つのパターン、つまり❶ラング(langue)×❷パロール1(parole1)×❸パロール2(parole2)において、❶→❸のトレンドが強まっていきます。

モノへの対応行動でいえば、「❶ヰティリテ(utilite):社会的使用体系」×「❷ヰティリゼ1(utiliser 1):個人的使用活動」×「❸ヰティリゼ2(utiliser 2):個人的創造活動」において、❶→❸のトレンドが強まっていきます。

(それぞれの言葉の意味については、上記のブログを参照してください。)

パロール2やヰティリゼ2へ向かう生活行動とは、どのようなものなのでしょうか。

言語行動でいえば、【「差延」を「差延化」に拡大する!】で述べた通り、フランスの哲学者.デリダの提唱した、言語行動における「差延」という行動を、生活一般に広げた「差延化」という方向です。

生活民の差延化行動には、差延化戦略には5つの方法があった!で取り上げたように、私仕様、参加、編集、変換手作りといった、5つの行動が浮かんできます。

上の投稿では、供給側からの対応戦略を述べていますが、生活民の立場から考えると、次のような行動が浮かんできます。

私仕様・・・生活民が独自の私効を実現しようと、交換市場へ注文を出す行動・・・例:オーダースーツ、オーダー家具、オーダー結婚式パーティーなど。

参加・・・生活民が交換市場から得た、7~8割程度の素材を自ら組み合わせて、私効を実現する行動・・・組み替えスーツ、キット家具製作クラブ、自由設計プレハブ住宅、ログハウスなど。

編集・・・生活民が交換市場から得た、さまざまな商品を素材とし、それらに自らの編集を加えることで私効をつく出す行動。・・・例:各社の衣料を組み合わせて独自スタイルをつくり出すユーザー編集ファッション、各社の部品を編集して独自の車をつくり出す改造車や改造バイクなど。

変換・・・生活民が交換市場から得た商品の用途(共効)を、自由自在に変換して、私効を実現する行動・・・例:ポケットベルの用途の多様化、冷蔵庫の総合保管庫化など。

手作り・・・生活民が自作の素材や交換市場から得た、さまざまな商品を素材と見なし、8~10割は自らの加工や組み合わせで、私効を実現する行動・・・手作りビール、デコラティブ(装飾的)ペインティング、デコパージュ風ニュー手芸、個人手配海外旅行など。

5つの行動は、①から⑤へと進むほど、生活民の私効をより強く実現することになるでしょう。

昨今の生活動向をつぶさに鑑みると、以上のような行動がすでに広がっているのではないでしょうか。

2021年1月19日火曜日

コンデンシング・ライフ・・・価値(共効)よりも私効(私的効用)を重視!

人口減少時代に広がる濃密型生活(Condensing Lifeでは、前回述べたような、4つのトレンドが強まってくると思います。

最初は個人志向の見直し。社会的・集団的志向(交換・同調・価値)よりも、個人的・自己志向(自給・愛着・効用)を重視する傾向が強まっていくでしょう。

なぜそうなるのか、私たちの生活構造に潜んでいる3つの軸、つまり、このブログで永々と展開してきた生活構造をベースに、まずは横軸から説明してみましょう。

横軸とは、私たち人間の言語活動をベースとする空間構造です。どのような構造なのか、ざっと要約しておきます。

①私たちの生活意識を生み出している言語構造は、【横軸の構造・・・ラングとパロール】で述べたように、ラング、パロール1、パロール2で構成されています。

ラング・・・社会集団が共有している言語体系です。

パロール1・・・他人との交流のためにラングを使用する行為です。

パロール2・・・個人が私的にラングを使用して自らと会話する行為です。

3つの言語区分を私たちが使用する時、社会界・間人界・個人界という、3つの生活世界が現れてきます。

社会界・・・私たちがラング(言語、文化、伝統、歴史、慣習、規範、法律など集団的な価値観や制度)を受け入れつつ、同時にラングそのものへ働きかけている世界。

間人界・・・ラングを前提に、私たちが会話、実践、交換などの〈交流〉を行っている日常的な世界。

個人界・・・私たちがラングに従いながらも、純個人として自らの内部に語りかけたり、ラングを自分なりに変換して、新たな表現を作りだしている世界。

3つの生活世界からは3つの生活願望が生まれてきますが、それらは【横軸が作る3つの生活願望】で提起した、世欲・実欲・私欲の3つです。

世欲・・・社会的な地位や経済的な成功など、世間的な評価を手に入れたいと思う生活願望

実欲・・・家事、就業、勉強など日常的な生活の中で、実効的な効果や成果を得たいと思う生活願望

私欲・・・自省や内省など自分自身との交信の中で、他人に何といわれようとも、純私的に満足したいと思う生活願望

④3つの願望に対応して、3つのネウチが生まれてきますが、それらは【差汎化とは何か?】で述べた、共効・個効・私効の3つです。

共効・・・社会集団が共通して認める有用性=共通効用(経済学でいう「価値」)

個効・・・個人が共効に基づいて認める有用性=個別効用

私効・・・私人が純私的に認める有用性=私的効用

以上のような3つの軸に沿って、コンデンシング・ライフでは、社会界・世欲・共効方向よりも個人界・私欲・私効方向へ、生活民の軸足が向っていきます。

なぜかといえば、次の3つです。

行き過ぎたグローバル化でバラバラにされた生活様式を再生するため、自給体制の見直しが求められる。

②行き過ぎた「価値(共効)」や「資本」優先で格差が拡大した経済構造を見直すため、「効用(個効・私効)」の再構築が求められる。

③人口容量の限界を経験した世代の多くは、生活の拡大よりも維持や充実へ向かう。

こうした要因で個人界・私欲・私効トレンドが強まると、生活民はどのような行動へ向かっていくのでしょうか。

2021年1月11日月曜日

コンデンシング・ライフを求めて!

人口減少時代の生活様式は、上昇志向、物的拡大、自己顕示といった人口増加時代の様式を超えて、足元志向、心的充実、自己充足などをめざすものとなるでしょう。

一言でいえば、濃密な生活、つまりコンデンシング・ライフ(Condensing Lifeこそ、人口減少時代の生活民に求められる、新たな生活様式ではないでしょうか。

このブログでは、【これが生活体だ!】【「生活民」の生活構造とは・・・】【「生活体」から「生活球」へ】などで述べているように、 生活民の生活構造は3つの軸から構成されている、と考えています。

縦軸感覚(体感・無意識・象徴)と言語(理性・観念・記号)を両極としています。

横軸個人(自給・愛着・効用)と社会(交換・同調・価値)を両極としています。

前後軸では真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)を両極としています。

3つの軸が交わる中心として、「日常・平常」な生活が位置づけられています。

以上の構造を前提にすると、これまでの膨張型生活(Expanding Lifeでは、どちらかといえば、次のようなトレンドが主流でした。

個人(自給・愛着・効用)よりも、社会(交換・同調・価値)に追随する。

 農産物でいえば、従事者の好みや馴染みよりも、売れるか否かを重視する。

感覚(体感・無意識・象徴)よりも、言語(理性・観念・記号)を重視する。

衣類でいえば、着心地や保温よりも、デザインやブランドを重視する。

真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)を共に拡大する。

 勉強も徹底的にやったら、遊びもとことん楽しむ

3軸が交わる「日常・平常」な生活は、日々肥大化していく。

 暮らしの規模は、日増しに大きくなっていく。


これに対し、これからの濃密型生活(Condensing Lifeでは、次のようなトレンドが強まってくるでしょう。

❶社会(交換・同調・価値)より個人(自給・愛着・効用)を重視する。

 果実でいえば、売れるか否かよりも、自分の好みや馴染みを重視する。

❷言語(理性・観念・記号)より感覚(体感・無意識・象徴)を重視する。

衣類でいえば、デザインやブランドよりも、着心地や保温を重視する。

❸真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)の、両方の密度を高める

 勉強の中身を深めるととともに、遊びの中身も濃くしていく。

3軸が交わる「日常・平常」な生活は、肥大化よりも濃縮化へ向かう。

 暮らしの規模は、量的な拡大よりも、質的な充実をめざす。

4つのトレンドについて、それぞれの背景と変化の行方を考えていきましょう。

2021年1月5日火曜日

拡大型構造から濃密型構造へ!

1億2800万人の人口容量のもとで、10年前から人口減少社会に入った日本において、生活民の暮らしはどのように変わっていくのでしょうか。

振り返れば、1800年代初頭の化政時代から200年も続いてきた人口増加の時代が終わり、人口の減少する時代に入ったのです。

これまでは、人口容量の限界まで、全ての生活民の期待する期待値が拡大可能であったため、日本列島に住む人々は、経済・環境的な生活水準を上げ続けるとともに、総人口を増加させてきました。

しかし、人口容量の上限に総期待値が近づいた1960年代から、人口抑制装置が作動し始め、2010年頃から総人口もまた減少を続けています。経済・環境的な生活水準を上げ続けたとしても、もはや総人口を伸ばすことは不可能となっているのです。

こうした時代に入った以上、従来の常識はもはや通用しません。どこが違うのか、とりあえず生活・経済構造の要点を整理してみましょう。

人口増加時代の社会・生活構造は、次のようなものでした。

①人口容量に余裕があり、全生活民の総期待量が実現可能であったため、人口は一貫して増加を辿ってきました。

②人口容量は国内容量国外容量で維持されているため、増加する人口から生まれる生活需要を賄うには、生活財の国内生産を増加させるとともに、海外からの輸入を拡大することが必要でした。

③増加人口に対応する生活費用を賄うためには、国内の生産額と海外向け輸出額の、両方を増加させるとともに、公共的費用を賄う国家財政の財源を拡大することが必要でした。

④総生活費用と国家財源を増加人口で賄うためには、生産活動に関わる生活民の生産性を上げていくことが必要でした。

以上の構造は、人口減少時代になると、次のように変わると思われます。

①限界に達した人口容量のもとで人口減少が始まっており、2030年代になれば総期待値の実も可能となりますが、人口が増加に転じるにはなお5060が必要です。

②人口容量が維持されておれば、人口が減る分だけ、個々の生活民の個人容量はなお増え続けることが可能であり、生活規模は維持または拡大できます。

③但し、減少人口から生まれる生活需要の変化に対応して、生活財の国内生産を維持あるいは縮小させ、海外からの輸入も維持または削減することが必要となります。

④減少人口に対応する生活費用を賄うには、国内生産と輸出量を維持あるいは縮小させるとともに、公共的費用を賄う国家財政の財源を確保することが必要になります

⑤総生活費用と国家財源を減少人口で賄っていくには、生産に関わる生活民の生産性をさらに上げる、あるいは維持していくことが必要になります。

以上のように、人口減少時代の社会・生活構造は、従来とはまったく異なる様相を呈してきます。

新たな生活様式を考えるには、従来の分断的分析を超えて、新たな視点から見直すことが求められるでしょう。