2023年12月26日火曜日

観念言語の利点と限界を考える!

言語6階層説の最終段階として、観念言語を取り上げてきました。

自然言語の網分による思考言語をさらに進め、人工言語の網分けによって生まれたのが観念言語です。

それがゆえに、圧倒的な利点を生み出すとともに、幾つかの欠点も潜むことになります。

どのような利点と欠点があるのでしょうか。

この件については、すでに思考・観念言語の利点と限界を考える!】において詳述していますが、そこでは「思考言語」と「観念言語」を分けていませんでしたので、今回は観念言語に絞って、その特性を整理してみました。

観念言語は、自然発生的な地縁言語共同体に基盤を置く自然言語の応用から始まった思考言語を大きく超えて、専門分野や特異分野といった、特定の理”縁言語共同体において新たに創造された人工的言語です。

それゆえ、思考言語と比べてみると、次のような特性が強まってきます。

①自然発生的な音声性や包括性が薄くなり、極めて人工的な構造となるから、議論や論文などで使用されるにつれて、目的性や正確性などの識知要素が濃くなる。

②自然言語、交信言語、思考言語に比べ、多義性や曖昧性などが消えて、極めて純粋な意味が濃くなるから、意味も文法もともに取捨選択されて、明確かつ狭義的なものなる。

③特定分野の専門家などの理縁集団によって創造され、使用されるケースが多くなるが故に、地縁発生的な要素が消えて、ほとんど“理”縁的な構造となる。

当ブログの視点からいえば、「身分け」が捉え、「識分け」が認めた現象の中から、特定の思考目的に見合うように「網分け」したモノコトだけを、シニフィエ(意味されるもの)とするように作り上げられたサイン(記号)であり、それらを繋ぐシンタックス(繋がり方)もまた、特定の目的の範囲内に定められている言語体系、といえるでしょう。

とすれば、この言葉には、次のような利点と限界が潜んでいます。



利点

狭義的正確性が強く、特定の目的となる現象を理知的に理解し、的確に対応することができる。

❷理縁的共同体に属する人々の間で、理解と利用が広まるにつれ、共同的な思考行動を拡大できる。

❸現象を細分化した、個々の言語をネットワーク的に連結することで全体を把握し、システムとして対応できる。

限界

❶狭義的、あるいは一義的であるため、現象の一面しか表示(シニフィエ)できず、全体像を見失う恐れがある。

専門家集団の内部でしか意味交換ができず、通常の地縁集団や日常集団などとの間では、言語として流通することができない。

❸ネットワークに基づくシステム的な対応では、ラッピング状に分節化されたストラクチャーの全てを動かすことはできない。

(システム的対応とストラクチャー的対応の違いについては【システム(体系)でなくストラクチャー(構造)で捉える!】を参照のこと)

以上のように見てくると、科学用語や数理記号などに代表される観念言語では、さまざまな社会現象はもとより、気候変動やパンデミックなどの自然現象についても、その対応力は必ずしも完璧なものではなく、常に浮遊しているものだ、と理解すべきでしょう。

2023年12月18日月曜日

言語6階層説:観念言語とは・・・

言語6階層説の6番めは「観念言語」です。

観念言語とは、「身分け」「識分け」「言分け」が捉えた事象を、「網分け」の理知によって精細に捉え直し、音声や記号などの創作言語で表現した言葉です。

この言葉は、専門的知識人や特定社会集団などの“理”縁共同体が、高度な思考するための記号として使われています。


前回の「思考言語」は、自然言語の「網」を使いつつ、発声しないまま、さまざまな選択を促す言葉でした。今回の「観念言語」は、意図的な「網」を使って、発声の有無に関わらず、さまざまな選択を促す言葉です。

意図的な網による区分、つまり「網分け」とは【言語6階層説へ進展する!】で述べたように、「言分け」による「分節」によって生み出された自然言語や自然記号に対し、さらに特定の意図による「網」をかけ、細分化された言葉や記号を創り出すことです。

「言分け」で生まれたコト界では、自然発生的に生み出された自然言語によって、日常的な会話や文通、さらには思考が行われています。

だが、より高度な考察や思索などになると、人類はコト界の中に、もう一つ、「網分け」によって新たに仕分けされた世界、アミ界という次元を生み出します。

このアミ界において、人類は人為的にさらに抽象化された思考言語を使うようになったのです。

具体的な事例については【思考・観念言語は地縁共同体から”理”縁共同体へ!】で取り上げたように、以下の言語が相当します。

音声言語・・・思考語、学術語、専門語など、表現対象に特定の網をかけ、自然言語をより先鋭化、限定化した言語群

文字言語・・・数字、学術文字、専門文字など、表現対象に意図的、特定的な網をかけ、新たに創造された文字記号群

表象記号・・・物理記号、科学記号、学術記号など、表現対象を特定するため、意図的、固定的に創造された論理記号群

このような言語階層説は、古くから唱えられてきました。

例えば古代ローマ帝国の神学者・哲学者アウグスティヌスの言語三階層論でも、会話に使う自然言語、言語が生まれる前の情動言語、思考に専用する思索言語三階層説が提唱されています。

これに当てはめると、思索言語には前回の思考言語と今回の観念言語両方が相当することになります。

しかし、思索という行動には、日常言語レベルの通常思考と、専用言語を使った濃密思考という、段階的な進展があると思います。後者で使われる言語こそ「観念言語」ということになるでしょう。

だが、それがゆえに、観念言語には、圧倒的な利点とともに、幾つかの欠点も潜むことになります。

次回からは、それらの問題を考えていきましょう。

2023年12月7日木曜日

言語6階層説:思考言語とは・・・

言語6階層説の5番めは「思考言語」です。

思考言語は、共同体との交流を通じて個人の中に育まれた「自然言語」を、音声や記号で自分の思考用に使用する言語です。



この言語は、「言分け」による「コト界(言知界)」から、「網分け」による「アミ界(理知界)」への移行を促す言葉でもあります。

「網分け」とは、【言語6階層論へ進展する!】で述べたように、「言分け」による「分節」によって生み出された自然言語や自然記号に対し、さらに特定の意図による「網」をかけ、抽象化された言葉や記号を創り出すことです。

こうした言葉や記号の中心にあるのは、次回で述べる「観念言語」ですが、抽象化された言葉や記号を創り出す前に、自然言語や自然記号によって「網」をかけ、対象を比較することでシニフィエ(意味されるもの)を明確化する、という段階があります。ここで使われる言葉が「思考言語」です。

目の前に差し出された未知の果物を、「食べる」か「食べない」という言葉で「網分け」し、どちらを選ぶべきかを「考える」言葉ともいえるでしょう。

それゆえ、「思考言語」は「コト界(言知界)」と「アミ界(理知界)」の境界を行き交う言葉ということにもなります。

 

具体的な事例で考えてみましょう。













●色鮮やかな対象「」を、【赤(進むな)・黄(止まれ)・緑(進める)】という視覚言葉で「網分け」し、「横断禁止」と考える言葉です。

●どこかから聞こえてくる「泣声」を、【泣く・笑う・唸る】という音声言葉で「網分け」し、泣声」と考える言葉です。

●漂ってくる匂いを、【桜・菜の花・蒲公英・菫】などという記号イメージで「網分け」し、「桜が香ってくるな」と考える言葉です。 

●飲料のを、【甘い・辛い・苦い・酸っぱい・うまい】という味覚言葉で「網分け」し、「甘いジュースだ」と考える言葉です。 

●真冬の「寒さ」を、【寒い・暑い・涼しい】という触覚言葉で「網分け」し、「今朝は一番寒いな」と考える言葉です。 

以上のように、感覚が「認知」し、意識が「識知」した対象を、共同体で使われている言葉で自覚するのが「自然言語」であり、それらを「網」化したうえで使用するのが「思考言語」です。

 

従来の言語論でいえば、「思考言語」は「内言」や「言語」に当たります。

心理学者のL.S.ヴィゴツキーは、人間の発話を「内言」(音声を伴わない、内面化された思考のための言語)と、「外言」(通常の音声を伴う、伝達の道具としての社会的言語)に分け、「外言」が内省化したものが「内言」と位置づけていますので、「思考言語」は「内言」ということになります。

一方、言語学者の.チョムスキーは、言葉を「言語(internalized language, I-language)」(脳と心の中に実装された知識体系としての言葉)と、「E言語(externalized language, E-language)」(言語の産出物として外界に表出する言葉)を区別したうえで、言語」が生み出すものが「E言語」だ、と述べていますので、「思考言語」は「言語」ということになります。

これらの分類では、頭や心の中で行き交う言葉を、言語能力が生み出した段階の言語(自然言語)と、それらをさまざまに駆使する思考段階の言語(思考言語)を分けていませんので、両者が混在しています。つまり、「自然言語」と「思考言語」が両方とも「内言語」「I言語」ということになり、両者を区別していないのです。

しかし、両者の間には違いがあります。どのように違うのか、当ブログの立場で言えば、「自然言語」は「言分け」が捉えた事象を、音声や記号にともかく置き換えた言葉であり、「思考言語」は自然言語による、何らかの「網」をかけ、使用者の選択性を促す言葉、といえるでしょう。

とすれば、「思考言語」とは、自然言語の網を使いつつ、発声しないまま、さまざまな選択を促す言葉なのです。

2023年11月28日火曜日

言語6階層説:交信言語とは・・

言語6階層説の4番めは「交信言語」です。

交信言語は共同体との交流を通じて個人の中に育まれた「自然言語」を、音声や記号で他者との交流用に使用する言語です。



前回の「自然言語」と今回の「交信言語」は、両方とも「言分け」と「網分け」の間に生まれる「コト界(言知界)」、つまり日常生活の中で使われています。

両者を分けるのは、発声や文字などで発信するか否か、という点です。発信しないで頭の中だけで使うのが前者であり、発信するのが後者です。 

具体的な事例で考えてみましょう。

感覚が「認知」し、意識が「識知」した対象を、共同体で使われている言葉で自覚するのが「自然言語」であり、音声記号で他者に向かって表現するのが「交信言語」です。



色鮮やかな対象を「赤い」という言葉で自覚するのが「自然言語」、「交差点は今、赤ですよ」と話しかけるのが「交信言語」です。

どこかから聞こえてきた音を「泣声」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その泣声は「隣室のベビーの声だ」と話しかけるのが「交信言語」です。 

漂っている匂いを「香り」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その香りを「桜が香ってくるな」と話しかけるのが「交信言語」です。 

呑み込んだ飲料の味を「甘い」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その味を「甘いジュースだよ」と話しかけるのが「交信言語」です。 

真冬の大気に接して「寒い」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その味を「今朝は一番寒いな」と話しかけるのが「交信言語」です。 

 

「交信言語」とは、以上のような特性を持つものですが、前回述べた、これまでの言語論では、「交信言語」は「外言語」と定義されています。

アメリカの言語哲学者N.チョムスキーは、「内言語=言語」を脳と心の中に実装された知識体系、「外言語=E言語」を内部体系の産出物として外界に表出する現象としています。

これに当てはめれば、「自然言語」が「内言語」、「交信言語」が「外言語」ということになります。「交信言語」とは、「自然言語」を発声や記述によって外界へ表出する言語であり、表出しないのが「自然言語」ともいえるでしょう。

もっとも、このように定義すると、「自然言語」を発声や記述によって外界へ表出しない、もう一つの言語、次回の「思考言語」との違いが問われることになります。

両者はどのように違うのでしょうか? 

2023年11月21日火曜日

言語6階層説:自然言語とは・・・

言語6階層説の3番めは「自然言語」です。

自然言語は「言分け」によって生まれる言語です。

「言分け」というのは、人類が「身分け」し、「識分け」した対象を、コトバやシンボル(絵や形)によって捉え直す行為です。

これによって、外部世界は本能で捉えたモノ界(認知界:ピュシス:physisから、意識が捉えたモノコト界(識知界:ゲゴノス:gegonósを経て、コトバやシンボルが把握した、もう一つ別の外界像、コト界(言知界:コスモス:cosmosを描くことになります【言語6階層説へ進展する!】。

ここで使われているのが「自然言語」です。



前回の「象徴言語」と「自然言語」と区別するのは、「言分け」、つまり「言葉になるか否か」です。「識分け」が捉え、「言分け」が捉える前の事象をとりあえず記号化するのが「象徴言語」であり、「言分け」が捉えた事象を明確に言語化するのが「自然言語」です。

次回の「交信言語」と区別するのは、他者との「交信」機能の高低です。外部世界を把握するため、自らのために創造する言語が「自然言語」であり、他者との会話を前提にして創造された言語が「交信言語」ということになります。

もっとも、自然言語と交信言語は、両方ともコト界(言知界)において使われる言語ですから、前後や順序の区分があるわけではなく、機能や目的によって差異が生まれるだけです。

それゆえ、既存の学問では、「自然言語」と「交信言語」の違いを、「内言語(内言)」と「外言語(外言)」などという名称で分けています。

ロシアの心理学者 L.S.ヴィゴツキー

内言語を「音声を伴わない、思考のための道具としての個人的言語」とし、外言語を「音声を伴う、伝達の道具としての社会的言語」と定義し、このような言語を扱う人類の能力は、「外言語から内言語へ」と発達していく、と説明しています(『思考と言語 新訳版』)。


アメリカの言語哲学者 N.チョムスキー

脳と心の中に実装された知識体系としての「内言語=I言語(internalized language, I-language」と、その産出物として外界に表出する現象としての「外言語=E言語(externalized language, E-language」として区別し、内言語は子どもが言葉を獲得する際、始めに得る言語の青写真とも定義しています(『チョムスキー言語基礎論集』)。

当ブログの視点から言えば、ヴィゴツキーの「内言語」もチョムスキーの「I言語」も、ともに前回の「象徴言語」であり、「外言語」も「E言語」もまた、今回の「自然言語」と「交信言語」ということになります。

とすれば、「自然言語」とは、「象徴言語」を生み出す個々人の能力を基礎に、血縁・地縁の間で醸成された共通言語として生み出され、より広い共同体の間に定着した記号体系ということになるでしょう。

2023年11月8日水曜日

言語6階層説:象徴言語とは・・・

言語6階層説の2番めは「象徴言語」です。

象徴言語は「深層言語」と「自然言語」の間に生まれる言語です。


象徴
(シンボル)」とは何でしょうか。さまざまな意見がありますが、当ブログでは次のように定義しています。

人間が「言分け」次元で事象を捉えるイメージが「記号(sign」であり、「識分け」次元で事象をとらえるイメージが「象徴(symbol」です【サインとシンボル・・・どこが違うのか?】。つまり、象徴言語とは、動物的、衝動的に捉えた事象を音声や図像などで表した言葉、といえるでしょう。

それゆえ、「象徴言語」を前回の「深層言語」と区分するのは、「識分け」、つまり「意識するか否か」です。「身分け」が捉えた事象に対し、意識が捉えない事象を言語化するのが「深層言語」であり、意識が捉えた事象を言語化するのが「象徴言語」ということです。

また「象徴言語」と次回の「自然言語」と区別するのは、「言分け」、つまり「言葉になるか否か」です。「識分け」が捉え、「言分け」が捉える前の事象をとりあえず言語化するのが「象徴言語」であり、「言分け」が捉えた事象を明確に言語化するのが「自然言語」です。

とすれば、象徴言語とは「身分け」が把握し、「識分け」が捉えた事象を、擬声語や擬態文字、イメージや偶像などで表した言葉ということになるでしょう。

意識が把握したとしても、自然言語が形成される前の未言語は、いわば始原的な言葉となって、モノコト界を浮遊しているのです。

 

具体例を音声言語、文字言語、表象記号であげてみましょう。


音声言語

いわゆるオノマトペ、つまり「身分け」で知覚された、さまざまな音響などを、音声で模倣した、さまざまな音声記号が代表です。記号が象徴するのは体感の先にある何かです。



文字言語

古くは象形文字(ヒエログリフ、楔形文字など)が相当しますが、現代でもメモ用手書き絵文字象形文字(パソコン用絵文字)などで使われています。



 

表象記号

古くは古墳壁画銅鐸絵画などが相当しますが、現代でも絵画記号(宗教のシンボルマーク:太陽、星、光、大樹、大河など)、アイコン(パソコン用アイコン)などで使われています。

 


以上のように、象徴言語とは、感覚が捉え、意識がつかんだ事象を、音声やイメージ記号に置き換えて、自然言語へと橋渡しする言葉、といえるでしょう。

2023年10月28日土曜日

言語6階層説:深層言語とは・・・

言語6階層説の最初は「深層言語」です。

当ブログでは、これまで「言語3階層説」と題し、深層・象徴言語日常・交信言語思考・観念言語の3つを分けてきました。

これを進展させた、今回の言語6階層説では、深層・象徴言語を「深層言語」と「象徴言語」の2つに分けました。

両者を区分するのは「識分け」、つまり「意識するか否か」です。「身分け」が捉えたものを意識するか否かで、2つの言葉が分かれてきます。

意識されたものを言語化するのが「象徴言語」であり、意識されないものを言語化するのが「深層言語」です。

「身分け=感覚」が把握したものでも、「識分け=意識」が把握しない限りは、「無意識=深層意識」となって、身分けされた空間の底へ沈殿していきます。この沈殿物を何らかの形で言語化したもの、それが「深層言語」です。



換言すれば、深層言語とは、「身分け」が把握したが、「識分け」が漏らした、無意識(深層意識)の事象を、言葉になる以前のイメージや偶像などで表した記号、ということです。

当ブログの過去の記述を振り返ると、ユングの「元型」論、井筒の「種子」論が相当します。

C.G. ユング・・・意味付与は一定の言語の型を使ってなされるが、この型はさらに原始心像から生まれる。意味がどこから来るのかという質問をどこで発しても、われわれは必ず言語やモチーフの歴史へ入りこんで行き、その歴史はつねにまっすぐに未開人の不思議の世界へと通じている。(『元型論』林道義訳:1999年)

●井筒俊彦・・・およそ外的事物をこれこれのものとして認識し意識することが、根源的にコトバ(内的言語)の意味分節作用に基づくものであることを私はさきに説いた。そして、そのような内的言語の意味「種子(ビージャ)」の場所を、「言語アラヤ識」という名で深層意識に定位した。(『意識と本質』1982年

これらの言説に置き換えれば、深層言語とは、無意識下の原始心像である「元型」であり、言語の種子である「言語アラヤ識」である、ということになるでしょう。

以上のように位置づけると、深層言語とは、自然的な言葉が生まれる前に、胎内的な言葉が湧き上がる次元、ということになります。具体例としては、次のような事例が挙げられます。

●音声言語・・・無意識のため息・喘ぎ・息づかい

●文字言語・・・無意識の手振り・身振り・しぐさ

●表象記号・・・元型・心像イメージ・・・例えば、ユングが元型(アーキタイプ)論で示した太母、老賢者、トリックスターなどの心像

要約すれば、深層言語とは、感覚が捉えた対象を、意識が把握する前の、体感的・心像的動作やイメージなのです。

2023年10月11日水曜日

言語6階層説へ進展する!

ハイテクツール論がひとまず終わりましたので、今度は言語6階層説に進みます。

言語階層論については、何度も書いてきましたが、どんどん進化してきました。

従来の言語3階層から、今度は言語6階層説へと進展してきましたので、その要点をしばらくの間、書かせていただきます。

6階層説の前提となっているのは、生活世界構造です。

生活構造図を「生活世界構造図」に修正する!】や【「ことしり」から「ことわり」へ!】で、私たちの環境把握力への見解を、従来の【身分け・言分け】の2に区分に、新たに【識分け・網分け】を加え、【身分け・識分け・言分け・網分け】の4区分に修正しました。

識分け(しわけ)」とは、感覚把握(身分け)と言語把握(言分け)の間に、もう一つ「意識」把握の次元がある、ということです。感覚が捉えた対象を、意識が認め、音声やイメージなどに置き換える次元です。言語階層で言えば、自然的な言葉が生まれる前に、深層的な言葉が湧き上がる次元を位置付けたのです。

一方、「網分け(あみわけ)」とは、「言分け」による「分節」によって生み出された自然言語や自然記号に対し、さらに特定の意図による「」をかけ、抽象化された言葉や記号を創り出すことです。言分けで生まれたコト界では、自然発生的に生み出された自然言語によって、日常的な会話や文通などが行われていますが、考察や思索などの行動になると、人類は人為的にさらに抽象化された思考言語を使います。こうした言語によって、コト界の中に、もう一つ、新たに仕分けされた世界、アミ界という次元が生まれ、いわゆる観念的な言葉が行きかうようになります。

2つの新たな仕分けによって、3段階であった生活構造は、5階層の生活世界構造に進化してきました。

これに基づいて、言語の階層3階層から6階層へ変化していきます。


従来の【身分け・言分け】論では「言葉がつかむか否か」で世界を分けていましたので、言語は未言語状態言語化状態の、2つの階層を作り出していました。

しかし、【身分け・識分け・言分け・網分け】論になると、新たな境界として「識分け」「言分け」「網分け」の3つが加わりますから、言語という集団的交信装置もさらに分化し、6つの階層に分かれていきます。

それは、深層言語、象徴言語、自然言語、交信言語、思考言語、観念言語で構成される言語6階層です。

それぞれの機能や役割については、次回から考察していきます。

2023年9月29日金曜日

ハード系ハイテクツールを比較する

ハイテクツールについて、生活民の立場からそれぞれの効用可能性を考察してきました。

前回のソフト系に続いて、今回はハード系を比較してみましょう。

アンドロイドドローン家事用ロボット飛行車については、【生活世界構造図】の中でそれぞれの特性を位置付けてきました。

それぞれの応用範囲を明らかにするため、生活用、産業用、公共用という3つの需要分野別に適応状況を改めて整理してみました。











アンドロイド・・・生活用、産業用、公共用に全てに広く使われる可能性があり、とりわけ生活用での家事や娯楽、生産用での工場やサービス産業などへの適応度が高いと思われます。

ドローン・・・生活用では娯楽を中心に家事(樹木カット等)などの分野にもそれなりに、産業用ではほぼ全ての分野に、公共用でもほぼ全て、とりわけ安全や土木などへの適応度が高いでしょう。

家事用ロボット・・・名称通り、生活用の全ての分野、とりわけ家事一般(炊事・洗濯・掃除)へ、公共用では給食や掃除などへの適応度が高まると思われます。

飛行車・・・生活用では育児や介護用の移動、家族での遊び、産業用ではほとんど全ての分野、公共用では安全・医療、土木、公務などへの可能な限りでの適用が考えられます。

 

主要なハードツールの適応度は以上のようなものだと思われますが、人口減少が急速に進む、今後の日本では、労働力の不足をカバーするため、生産性の大幅な向上が求められます。

とすれば、社会的にはアンドロイドドローンへ、家庭的には家事用ロボットアンドロイドへ、とりわけ需要が高まってくるものと思われます。

2023年9月11日月曜日

ソフト系ハイテクツールを比較する!

昨今急速に進展しているハイテクツールについて、生活民の立場からそれぞれの効能を考察してきました。

10例を越えましたので、まずはソフト系から、ツール間の比較をしてみましょう。

縦軸に生活世界構造言語―感覚)、横軸に言語構造社会―個人)を組み入れたグラフに、7つのソフト系ツールを配置すると、下図のようになります。 


対話系AI(文字系:例Chat GPTの中で交わされる言語は、日常・交信言語思考・観念言語が基本で、社会界と間人界の中で行われている。

(画像系については、深層・象徴言語が、社会界と間人界の中で使われている。)

VRVirtual Reality:仮想現実)が表示する世界は、視覚・聴覚・触覚によって捉えられる認知界や識知界であり、利用者は個人界から間人界への空間を体験することができる。

ARAugmented Reality:拡張現実)は、認知界に現れるイメージを識分けし、言知界や理知界へ繋ぐとともに、個人界、間人界、社会界へ働きかけることができる。

MRMixed Reality:複合現実)は、環境世界から身分け・識分け・言分けされた現実事象と、人工的に創られた仮想事象を重ねたうえで、個人界から間人界へ働きかけることができる。

SRSubstitutional Reality:代替現実)は、ディスプレイを通した仮想事象に対し、個人及び少数のユーザー間で共有される個人界・間人界の現象である。

メタバース(Metaverseは、仮想空間を識分け・言分け・識分けでき、アバターとして仮想空間に働きかけることができるから、社会界から間人界を経て個人界にまで及んでいく。

デジタルツイン(Digital twinは、ユーザーが識分け・言分け・識分けした、さまざまなデータをデジタル・アバターの元へ、リアルタイムで送り込み、社会界から間人界を経て個人界にまで及んでいく。

 

以上のように、ソフト系ハイテクツールは、全体として生活世界構造と言語構造のほぼ全域を利用域としつつ、個々のツールではそれぞれの特性に応じて、さまざまな領域に対応しているようです。

今後、人口減少が進むとともに、生活民の意識は言語—社会面から感覚—個人面へと、重心を移すことが予想されます。いわゆる「飽和・濃密化:コンデンシング」ですが、これに対応できるのは、VR,SR,ARなどのツールではないでしょうか。

2023年8月28日月曜日

飛行車はどんな用途に使えるのか?

ハイテクツールの10番めは、飛行車を取り上げます。

飛行車、つまり「空飛ぶクルマ」といえば、「自動で垂直に離着陸する移動手段」を思い浮かべます。だが、現在の段階では、明確な定義は定まっていません。

国土交通省の「空飛ぶクルマの制度整備に関する検討状況」(202212月)によれば、当面は「固定された翼で揚力を得て飛行するもの」が「飛行機」、「ヘリコプターのように回転翼により動力推進を得ているもの」が「回転翼航空機」、と説明されており、飛行機とヘリコプターの小型・私用版を意味しているようです。

業界では、滑走しないで垂直方向に離着陸する航空機を「VTOL」(Vertical Take-Off and Landing aircraft)とよんで、EV(電気自動車)にプロペラや自動制御システムをつけ、垂直に離着陸ができる電動機体については「eVTOL」などと名づけています。

(余談ですが、50年前の1972、筆者は『都市間交通におけるV/STOL機の役割』という研究報告書を提案しています。)

さらに海外では「Skycar」「Aircar」「Urban Air Mobility」「Personal Air Vehicle」「Flying cars」などとも命名されているようで、名称や機能などについても未だ曖昧なままです。

そこで今回は、飛行車の機能を次の2タイプに限定します。

ドローンの延長型で、人間が乗車可能になったもの。電動で遠隔操作や移動制御などが可能で、プロペラによってバランスを取りながら揚力を上げます。

飛行機の縮小型で、エンジンを搭載し、翼で浮力を得るもの。空中では翼を広げますが、道路走行時には格納します。

いずれも少人数の人間の乗車が可能なため、次表のような用途が想定できます。 

こうした用途を前提に、飛行車のネウチを、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸3つの軸)の中に位置づけてみましょう。 


①飛行車はモノ界・モノコト界・コト界の間に新たに登場する。

②生活民は飛行車を新たな物体として識知する。

③生活民は飛行車を新たな道具として言知する。

 


①飛行車の用途は社会界から間人界・個人界へ及んでいく。

②飛行車の用途は、社会界では上記の表のように現れる。

③個人は飛行車を生活民独自の方法で利用できる。

 


①飛行車は虚実曖昧な存在である。

②飛行車の用途は遊戯(虚構)から研究(真実)に及ぶ。

③真実的用途の拡大が期待される。

 


このように整理すると、飛行車というハイテクツールは、ヘリコプターとドローンの中間に登場し、いっそうの小型化によって、公的・私的用途の拡大を担うものと思われます。

とすれば、人口減少による労働力不足の緩和が、最大の効果となるのではないでしょうか。