2023年3月25日土曜日

対話型AIはどこまで使えるのか?

ハイテクツールの最初は、今や革命的情報ツールとして、世間の注目を集めている生成系AIをとりあげます。

Chat GPT」に代表される対話系AIを、生活構造の中に位置付けると、どうなるのでしょう?

私たちの生活構造については、【「生活体」の3つの軸】で述べたように、①感覚・言語軸(縦軸)、②個人・社会軸(横軸)、③真摯・虚構軸(前後軸)の、3つの軸による立方体で構成されています。

対話系AIを、この3軸の中に位置付けてみましょう。

 

感覚・言語軸・・・体感的・感性的な世界と記号的・言語的な世界を両端とする軸

当ブログでは、この軸を縦軸【縦軸の構造・・・「身分け」と「言分け」】と名づけ、その構造を様々に検討して、【生活世界構造図】に至っています。



この図の中に対話系AIを位置付けると、次のような特性が浮かんできます。

➊対話型AIで交わされる言語は、日常・交信言語と思考・観念言語が基本である。

❷詩や文学などの対話では、深層・象徴言語が使われると考えがちだが、その言語は本来の深層・象徴言語ではなく日常・交信言語の中から選ばれたものにすぎない。

❸対話型AI言語は、既存の言語集積の中から選択された言葉であり、自らモノコト界、モノ界、ソト界へ降りて、新たに創り出された言葉ではない。


個人・社会軸・・・私的・個人的な世界と集団的・社会的な社会を両端とする軸

当ブログでは、この軸を横軸【横軸の構造・・・ラングとパロール】と名づけ、その構造を【言語行動が作る3つの世界】で表しています。



この図の中に対話系AIを位置付けると、次のような特性が浮かんできます。

➊対話型AIで交わされる言語は、ラングとパロールⅠ、つまり社会界と間人界の中で行われる。

❷対話型AIで使われる単語(シニフィアン)の意味(シニフィエ)は、社会界で固定されたものである。

❸対話型AIで使われる文法(シンタックス)もまた、社会界で固定されたものである。

❹それゆえ、新たな意味を生み出したり、新たな使い方を作り出す活動、いわゆる「差延」行動は起こりえない。


真摯・虚構軸・・・目標的・真摯的な世界と遊戯的・虚構的な世界を両端とする軸

当ブログでは、この軸を前後軸【前後軸が作る3つの生活願望】と名づけ、その構造を【前後軸が作る3つの世界】で表しています。



この図の中に対話系AIを位置付けると、次のような特性が浮かんできます。

➊対話型AIで交わされる言語は、日常界で使われている真偽混在の言語である。

❷対話型AIで交わされる言語は、基本的に虚構であることを前提にして使われている。

❸対話型AI言語が真実的なことを述べたとしても、その中に含まれている虚構部分を見分けなければならない

❹それゆえ、対話型AI言語は遊戯やシミュレーションなどには最適だが、儀礼や信仰などには不適である。

 

以上のような特性から推察すると、対話型AIによって生み出される、新たな対話現象は、あくまでも表層的、固定的、虚構的な次元に留まるもので、深層的、創造的、真相的な次元には到底届かないもの、と考えるべきではないでしょうか。

2023年3月16日木曜日

ハイテクツールの生活学

「生活様式の変化」が一段落しましたので、新たなテーマとして「ハイテクツールの生活学」を思考していきます。

昨今、急激に発達している、さまざまなハイテクノロジーは、私たちの生活形態に大きな影響を与え始めています。

未だ発展途上にあり、今後さまざまな方向に発展していく可能性を秘めていますが、現在の時点において、どのような影響を与え、いかなる限界が潜んでいるのか、を考えてみたいと思います。

とりあげたい対象をその特性によって分けると、ハード系ソフト系に大別できます。ツールの用途によって、ハード系とは物量の変動に向けられたもの、ソフト系とは情報の変動に向けられたもの、ということです。

さらにその用途によって分けると、基礎系応用系に大別できます。基礎系とはテクノロジーの基盤になるもの、応用系とは実際の生活に使われるもの、ということです。

これら4つの区分を組み合わせて、注目を集めているテクノロジーやツールを仕分けしてみると、下表のようになります。

分野別に再掲しておきます。

➀ハード・基礎系では、次世代半導体、量子計算機、ハイテク精密機械など。

②ハード・応用系では、汎用ロボット、ヒューマノイド(人型ロボット)、家庭用ロボット、産業用ロボット、物流ロボット、ドローン(空撮、産業、水中)、飛行車など。

②ソフト・基礎系では、基礎的AIArtificial Intelligence:人工知能)、機械学習、ニューラルネットワーク、ディープラーニングなど。

④ソフト・応用系では、生成系AI、テキスト入力・画像生成、音声入力・文字翻訳、AI翻訳、基礎的VRVirtual Reality:仮想現実)、メタバース(仮想空間・アバター操作)、デジタルツイン(現実・仮想連動空間)など。

これらのニューツールは、私たちの生活構造にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

当ブログで展開してきた生活構造論【「生活体」を提唱する! から 七つの生活願望とは何か?  まで】の、さまざまな領域に対して、いかなる影響を与えるのか、おおまかに位置付けてみると、下図のようになります。


こうした位置づけを前提にしつつ、個々のツールの効用や限界を、多面的かつ多角的に検討していきたいと思います。