前回、生活世界の基本構造を4つの世界で説明してきました。
しかし、研究者諸賢や読者の皆様からさまざまなご批判やご意見をいただきましたので、一部を下図のように修正したいと思います(今後、再考によって再修正も考えられます)。
第1は「生活構造論」の名称変更です。
この言葉を、当ブログでは、哲学系先達の用法を継承して使ってきましたが、経済学や生活学などでは、「個人や家族の営む生活行動に観察される構造」など、主としてミクロ経済的・家計分析的な意味として使用されており、現象学的な「生活世界」にまでは及んでいません。
そこで、当ブログの趣旨を明確にするため、E.フッサールの「生活世界」論やA.シュッツの現象学的社会学に因んで、新たに「生活世界構造論」と名称を変更し、図解についても、「生活世界構造図」と名づけることにします。
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第2は名称変更に伴う構造内の用語の変更と明確化です。
前回の文章の内、下線をつけた赤い文字を、新たな言葉に置き換えました。
生活世界の基本構造・・・私たちが日頃どっぷり浸かっている生活世界は、「ソト界(物質界)」「モノ界(認知界)」「モノコト界(識知界)」「コト界(理知界)」の4つから成り立っています。 ❶ソト界(物質界:physics)・・・私たち人間や動物などを取り巻く、ありのままの環境世界。 ❷モノ界(認知界:physis)・・・私たち人間が自らの「身分け」能力によって、周りの環境世界の中から把握した世界。「身分け」されたものは、まずは「無意識」として佇み、されなかったものは「無感覚」として物界に沈んでいく。 ❸モノコト界(識知界:gegonós)・・・私たち人間が自らの「識分け(しわけ)」能力によって、モノ界の中から認知できた世界。「識分け」されたものは「意識」の対象となり、されなかったものは「無意識」のままモノ界に沈んでいく。 ❹コト界(理知界:cosmos)・・・私たち人間が自らの「言分け」能力によって、モノ界の中から把握した世界。「言分け」されたものは「知識」となり、されなかったものは「意識」のままモノコト界を漂うことになる。 |
以上のような修正を行った理由を述べます。
①4つの世界の名称のうち、3つはコト界、モノコト界、モノ界と大和言葉で表現していますので、物界も外界、つまり「ソト界」に修正します。
②4つの世界の別称を、物質界、感覚界、認知界、識知界としてきましたが、感覚界は「身分け(=認知)」によって生まれる世界ですから「認知界」に、また認知界は「識分け(=識知)」によって生まれる世界ですから「識知界」に、それぞれ変更します。
③従来のモノコト界=認知界を今回は「識知界」に変えましたので、今回のコト界は新たに「理知界」と名づけることにします。この世界は「言分け」によって生まれる世界ですから、「理(ことわり)」による「知」という意味で、このような言葉を使いました。
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第3はコト界、モノコト界、モノ界、ソト界の精神状態の明確化です。
身分け→識分け→言分けが進むにつれて、私たちの精神状態また次第に変わっていきます。
その変化を無感覚→無意識→意識→知識と明確化しました。
以上のような修正によって、生活世界構造論は今後、より多面的な議論を引き起こす可能性を孕んだ、と考えています。
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