2019年5月27日月曜日

生成社会へ移行できるのか?・・・その1

消費社会からポスト消費社会へ、と進んでいくためには、次にあげる、3つの条件をクリアしなければならない、と思います。

生成社会への移行」「統合社会への転換」「複合社会への進展」の3つです。

第一の方向は「生成社会への移行」です。

近代産業社会は、
前回の図1のように、まずは生産者が市場をリードする「生産社会」として成長して、続いて前回の図2のように、消費者が市場をリードする「消費社会」へと移行しました。


産業革命の結果、19世紀から20世紀前半にかけて、ヨーロッパを中心に科学技術が工業生産を主導する「前期産業社会(early industrial society)が実現され、大量の工業生産物を市場に供給する体制が確立されました。

もっとも、この時期にはまだ需要量の拡大に供給量が追いつかなかったため、生産者が消費市場をリードする「生産(主導)社会」が続いていました。

しかし、20世紀も後半になると、新たなリーダーとなったアメリカが、科学的生産管理法や品質管理法などを取り入れて、大量に生産した工業製品をそのまま消費市場へ送り込む「後期産業社会(late industrial society)へと発展させました。

この社会では、供給量が需要量を追い越すにつれて、需要側の立場が次第に優位になり、消費者自身が消費市場をリードする「消費(主導)社会」が実現しました。

その後、20世紀の終わるころには、世界の主要先進国はいずれも消費(主導)社会に入りました。

このため、供給側も消費者の好みや願いを細かく探し出し、それに対応する商品やサービスによって、なおも生産を拡大しようとしましたから、消費市場では過剰なブランド志向や偏執狂的なカスタマイズ対応など、いびつな構造が強まりました。

時には「浪費が豊かさの中心となった社会」という表現まで囁かれているようです。

こうした異常事態については、本ブログで紹介してきたように、先見的な理論家や識者の中から、鋭い批判が提起されています。

資源・環境視点からの批判はもとより、産業社会や市場社会の需給構造そのものへの反省も広がっています。

このような消費主導社会を改革するには、まずは「生成社会」の可能性を確かめることでしょう。

2019年5月19日日曜日

消費社会のポジションを考える!

「消費社会」をよりマクロな社会・経済構造の中に位置づけてみると、主導的定義と対象的定義の2つの視点によって、そのポジションが変わってきます。

主導的定義では、横軸を基準にして社会をリードする主体の変化をとらえますから、図1に示したように、まずは「生産(主導)社会」が社会制度と共生生活の上に成立した、といえるでしょう。




だが、時代の流れとともに変化して、図2に描いた如く、共生生活の上に「消費(主導)社会」が被さってきたのです。


他方、対象的定義では、縦軸を基準にして社会構造の違いを分けていますから、近代の産業社会も当初は中段、欲求次元の「機能社会」として広がりました。

その後、供給過剰の進行に伴って「物の有用性」よりも物にまつわる記号」の消費が拡大したため、図表3の一番上、欲望次元の「記号社会」へと移行しました。


両方の定義を重ね合わせてみると、消費社会とは、横軸上では共生生活の上に比重をおく「消費(主導)社会」であり、また縦軸上では欲望次元の「記号社会」に相当します。

とすれば、主導としての消費(主導)社会と、対象としての記号社会互いにクロスした領域、つまり図表4に示した「純消費社会」こそが、最も濃密な消費社会といえるでしょう。

 

消費社会がこのような特性を持っている以上、この社会に潜む、さまざまな問題点を乗り越えて、ポスト消費社会へと進むためには、幾つかの条件をクリアしていかなければなりません。

2019年5月11日土曜日

生活空間から消費社会を考える!

消費社会の問題点を考える場合、対象的視点主導的視点の、両方からのアプローチが必要です。

そこで、主導的な定義と対象的な定義を、これまで述べてきた生活空間、つまり縦軸と横軸でとらえなおしてみましょう。

図1にあげた生活空間は、縦軸に心理構造
欲望―欲求―欲動】をとり、横軸に言語構造ラング―パロール1―パロール2】を援用した【社会制度―共生生活―私的生活】をおいて、両者をクロスしたものです。


こうした視点は、人間の言語能力そのものに準拠していますから、生活願望やねうち構造を超えて、社会・経済の構造にも拡大できます。

実際にこのフレームによって経済の構造を考えてみると、図2の横軸【社会制度―共生生活―私的生活】には、【経済制度―経済行動―生活行動】が該当します。



社会制度には「既存の貨幣制度や生産・流通・市場経済システム」という経済制度が、

共生生活には「既存の経済システムに則って個人や集団が行なう売買、取引、消費」という経済行動が、
私的生活には「既存の経済システムを自在に変換して私人が行なう私的な行為」という生活行動が、
それぞれ含まれているからです。

また縦軸【欲望―欲求―欲動】の各次元に、私たちの生きている社会の構造を振り分けてみると、図3のように【記号社会―機能社会―象徴社会】が浮かんできます。




記号社会とは「言語や観念、デザインやブランドなどで構成された社会」、
機能社会とは「機能、性能、品質など、物質的、実質的な環境が広がる社会」、
象徴社会とは「感覚的なネウチや象徴的な交換など、体感・知覚や伝統・習俗に基づく社会」を、
それぞれ意味しています。

以上のような社会・経済構造の中に、消費社会を位置づけてみると、主導的定義対象的定義の2つの視点によって当然変わってきます。

どのように変わるのか、次回から眺めていきましょう。