生活学・新原論の4番めのテーマとして、生活民を取り巻くモノやコトのネウチを考えます。
主体である「生活民」については、【生活主体を考える➔生活民!】や【「生活民」とはどんな人?】などで述べていますが、市場社会を前提にした「消費者」や営利主義の対象を抑制するだけの「生活者」を大きく超えて、市場社会とは柔軟につきあう自律的な人間を意味しています。
このような生活民が、現代の市場社会とつきあっていくには、前回述べた生活願望の横軸の3つの願望、つまり〔世欲・実欲・私欲〕によって、これらの対象となるモノやコトなどへの満足感、つまり「ネウチ」を仕分けていかなければなりません。
3つの願望によって、生活民はどのようなネウチを求めるのでしょうか。
このテーマについても、【生活民の求めるネウチとは何か・・・】以下で延々と述べていますが、とりわけ関連の深いのは【「効用」とは何か・・・3つの定義】や【「限界効用」の限界!】です。
つまり、現代社会の市場機構を前提にすると、生活民は一方では、経済学でいう「価値」や「効用」というネウチを認めていますが、それだけでは終わらず、もう一方で独自のネウチ、「効能」を求めています。
それゆえ、生活民の視点に立つと、モノやコトのネウチは、【生活世界構造を言語機能で考える!】で述べた3つの生活世界、つまり〔社会界・間人界・個人界〕を前提に、それぞれの世界で求める、3つの生活願望、つまり〔世欲・実欲・私欲〕によって、次のように生まれてきます。
つまり、社会界の世欲の対象となるのが「価値:Value」であり、間人界の実欲の対象として「効用:Utility」が生まれてきます。そして、個人界の私欲の対象となるのが「効能:Effect」として位置づけられます。
整理すれば、【生活民は「価値」よりも「私効」を重視!】で示したように、次のようになります。
●価値(Value)とは、社会界において、社会集団が共同主観として認めている「共効(共同的有用性:social Utility)」です。 ●効用(Utility)とは、間人界において、生活民が個人使用を行う時に、一人の個人として、社会的効用を受け入れた「個効(個人的有用性:Individual Utility)」です。 ●効能(Effect)とは、私人界において、生活民が私的使用を行う時、一人の私人が独自に創り出した「私効(私的有用性:Private Utility)」です。 |
このように生活民にとってのネウチを位置付けると、これを研究対象とする生活学の位置づけが、下図のように浮上してきます。
これを見ると、経済学とは価値と効用を、また家政学とは効用を中心に価値と効能を、それぞれ研究対象にする学問ですが、生活学は効能を中心にしつつ効用や価値を考えていく学問、と言えるでしょう。
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