生活民は自らが生きていくために、衣食住などの生活分野で、さまざまな有用性を求めています。この有用性は、どのように計られているのでしょうか。
生活民がモノに感じる有用性とは、個人として感じる感情が基本です。利用したモノに対して「どれくらい役に立ったか」を示す感情の高低です。
この高低を、私たち日本人、日本列島に住む生活民は、古くから大和言葉を用いて「ねうち」とよんできました。
「ねうち」という言葉は「ねうつ」、つまり「音(ね)を打つ」ことに由来しています(日本語源大辞典・小学館・2005)。
真夏になると、私たちは西瓜をポンポンと叩いて、食べごろを推し量ります。モノの音(ね)を聞いて、モノの有用性である美味しさを推測しているのです。
とすれば、「ねうち」とはモノ自体に付随している有用性を意味しています。
生活民自身にとっては、これで十分なのですが、他人に話したり、差し出すとなると、その高低を他のモノと比べられる方がと好都合です。
そこで、もう一つ、「あたひ」という言葉を使います。
「あたひ」は「あた(当)あひ(合)」の省略されたものですで、二つ以上のモノを「突き当て」たうえで、それらが「見合っているか」を考えることです(同上)。
西瓜と茄子を交換する場合、西瓜一つに茄子は何本が見合うか、という判断です。
この場合は、2つ以上のモノの「ねうち」の比較、つまり「ねうちの相当性」を意味しています。
以上のように、大和言葉でも、モノの有用性については「ねうち(有用性)」と「あたひ(相当性)」を分けて使ってきました。
このブログで述べてきた「生活体の構造」でいえば、図に示したように「ねうち(有用性)」は縦軸の上下であり、「あたひ(相当性)」は横軸の左右ということになります。
有用性につきまとう、この二面性が、生活民から生活者や消費者、さらには生産者へと、生活世界が拡大していくにつれて、さまざまな問題を引き起こします。
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