生活行動論の6番めは「差戯化」行動です。
差戯化とは、【コンデンシング・ライフ】で述べたように、虚構界から生まれてくる弛緩、解放、遊興などを求める虚欲に応えて、虚脱・混乱、浪費・蕩尽、戯化・模擬、ゲーム・競争などを実行する生活行動です。
生活体でいえば、後方に位置する生活願望「虚欲」に向けて、欲望・欲求・欲動次元や、私欲・実欲・世欲次元において、さまざまな生活行動を展開することになります。
具体的には下図に示したように、生活体の後側の虚欲次元において、縦軸の欲望・欲求・欲動と、横軸の私欲・実欲・世欲をクロスした、9つの空間向けの9つの行動として生まれてきます。
◆中段・・・世界認識の中核として識分けを行う次元であり、次の3つの差戯化行動が生まれてきます。
➀私欲・虚欲・欲求行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める識分け行動・・・例:生活者個人が自ら調合した絵の具によって、大理石模様や木目模様など、装飾的な仕上げを行うデコラティブペインティング(装飾塗装)(差延化の➀)。 ➁実欲・虚欲・欲求・・・日常的な虚構の「効用」を求める識分け行動・・・例:日々の暮らしを楽しむため、さまざまな冗談や大法螺(おおぼら)などを交し合う(当行動のオリジナリティ)。 ③世欲・虚欲・欲求行動・・・個人的な虚欲行動を普遍化し、社会的な虚構「価値」を創り出そうとする識分け行動・・・例:生活民個人が自ら考案したスマホゲームを、ゲームサイトが取り上げ、より多くのユーザー向けに発信する(差汎化の➀)。 |
◆上段・・・「差異化行動」の上段3欄ですでに述べたように、以下の3行動は「差異化の差戯化」といえるものです。
➃私欲・虚欲・欲望行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める言分け行動・・・例:裏紙に詩作や創作などを書いて遊ぶ。黒板やディスプレィなどに戯画や漫画などを描いて遊ぶ(差異化の➃)(差延化の➃)。 ➄実欲・虚欲・欲望行動・・・日常的な虚構の「効用」を求める言語行動・・・例:雑誌やディスプレィで小説を読んだり、ゲームに戯れる。美術館などで絵画に見たり、劇場で芝居を楽しみ、お気に入りのファッションを着る(差異化の➄)。 ⑥世欲・虚欲・欲望行動・・・社会的な虚構の「価値」を創り出す言語行動・・・例:ネット上で好きになったブログを宣伝し、ヒット数を増やす。ネット上で超有名になった観光地を訪れ、有名ブランドのスーツを着る(差異化の⑥、差汎化の➃)。 |
◆下段・・・「差元化行動」の下段3欄ですでに述べたように、以下の3行動は「差元化の差戯化」といえるものです。
⑦私欲・虚欲・欲動行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中で夢や幻想などを描き、その中で戯れる行動。メタバースの中で音や風景などを楽しむ行動(差元化の➃、差延化の⑦)。 ⑧実欲・虚欲・欲動行動・・・日常的な虚構の「効用」を求める身分け行動・・・例:個人的に脳内に描いた夢や幻想を、他者に話して共有しようとする行動。メタバース上の音や風景などを他者と共に楽しむ行動(差元化の➄)。 ⑨世欲・虚欲・欲動行動・・・社会的な虚構の「価値」を創り出す身分け行動・・・例:夢や幻想の世界が多くの人間に共有しているものと理解する行動。 メタバース上の音や風景などは皆で楽しめるもの、と理解する行動(差元化の⑥、差汎化の⑦)。 |
以上のように、差戯化行動を生活体の後面への対応と考えると、言語・認識・感覚などで捉えた対象を全て「虚構」と見なそうとする生活行動が、日常次元はもとより、深層次元や表層次元にまで広がっていく実態が構造的に見えてきます。
これによって、「遊び」という生活行動の本質も見えてきますから、R.カイヨワが『遊びと人間』の中で提案した「遊びの4類型」もまた越えていきます。
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