差戯化行動、つまり「遊び」行動については、フランスの社会学者、R.カイヨワが『遊びと人間』の中で提案した「遊びの4類型」が、関連学会などでは定番となっています。
彼によれば、遊びの本質は「パイディア(Pidia:ギリシャ語=遊戯、快楽)」と「ルドゥス(Ludus:ラテン語=闘技、試合)」にあります。
パイディア(Pidia)とは、気晴らし、騒ぎ、即興、無邪気な発散といった共通の原理が、ほとんど例外なしに支配している遊びの世界です。 ルドゥス(Ludus)とは、恣意的だが強制的でことさら窮屈な規約に従わせ、一層の努力、忍耐、技、器用がなければ目標に到達できない遊びの世界です。 |
パイディアの軸を意志から脱意識へ、ルドゥスの軸を規則から脱規則へとして、上下に位置付けたうえで、さまざまに展開される「遊び」を、下図のような4類型として整理しています。
●アゴン(Agon:ギリシャ語=競技、試合)・・・競争という形をとる一群の遊び。例:サッカー、ボクシング、子どものかけっこなど競技、マージャン、チェスなどのゲーム。 ●アレア(Alea:ラテン語=さいころ、賭け)・・・遊戯者の力の及ばぬ独立の決定で成りたつ、全ての遊び。例:くじ、じゃんけん、パチンコなどの賭博。 ●ミミクリ(Mimicry:英語=真似、模倣)・・・参加者がその人格を一時的に忘れ、偽装し、捨て去り、別の人格をよそおう遊び。例:演劇、物真似、仮装、ごっこ遊び、組み立て遊びなど。 ●イリンクス(Ilinx:ギリシャ語=渦巻、めまい)・・・めまいを求める、さまざまな遊び。メリーゴーランド、ブランコ、スキー、サーカスなど。 |
このような4類型を、当ブログで展開している差戯化行動として、再分類してみましょう。
生活世界構造において、パイディアの【意志⇔脱意識】を【言語⇔感覚】軸、ルドゥスの【規則⇔脱規則】を【社会⇔個人】軸とみなして、差戯化行動の9分野に位置づけてみると、概ね下図のようなります。
【アゴン:競争】は【世欲・虚欲・欲望】に、【アレア:偶然】は【世欲・虚欲・欲求】に、【ミミクリ:模倣】は【私欲・虚欲・欲求】に、【イリンクス:めまい】は【私欲・虚欲・欲動】に概ね相当しています。
とすれば、【私欲・虚欲・欲望】と【世欲・虚欲・欲動】の分野に、まだまだ新たな類型が潜んでいる可能性が見えてきます。
例えば、私欲・虚欲・欲望行動では【私戯:ホビ=Hobbie=ギリシャ語】として、独りで楽しむ言語的遊び、つまり一人替え歌、スマホゲームなどが浮かんできます。頭の中だけで考える漢字遊び、数式解読、俳句創りなども基本となるでしょう。
また世欲・虚欲・欲動行動では【集眩:マニア=mania=ラテン語】として、集団で楽しむ感覚的遊び、例えば祭や集団イベント時の熱狂行動、といったものです。
青森ねぶた祭りの「はねと」踊り、阿波おどりの「にわか連」、山形花笠まつりの「飛び入りコーナー」などでは、感覚の深部において解放感を味わえます。
以上のように、新たな生活行動論の視点に立つと、「遊び」という行動にも、カイヨワの4類型を越えて、新たな6類型が浮上してきます。
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