2019年11月9日土曜日

マーケティングを外部転換するには・・・

マーケティングを「脱構築(déconstruction)していく、もう一つの方向は、その外縁を再構築していく「外部転換」です。

外部転換とは、企業の経営活動の一つであるマーケティングの限界を超えて、望ましい社会構造を形成していくための、新たな役割を担うことを意味しています。

望ましい社会構造については、さまざまな意見がありますが、一つの方向は、先に述べたような、生成者(生活民)が新たな社会制度を創造する生成社会であり、具体的には、人類が歴史的に創造してきた、再配分、市場交換、互酬制の3つの分配制度を新たに組み合わせ、現代社会にふさわしい「三立社会」を創り出すことです。

このうち市場交換については、
先に述べたような、内部転換という形で再構築されるとすれば、改めて外部転換が必要になるのは、再配分互酬制への関わり方ということになります。



そこでまず、再配分への関係を見ておきましょう。

再配分の主体である政府部門や行政部門に対して、これまでの企業や諸法人は、一方では公共投資や受託事業などで売り上げを伸ばし、他方では納税という形で再配分の財源を担ってきました。それゆえ、マーケティングの課題は専ら公的事業への売り込みや継続性であったといえるでしょう。

この両面性は今後も基本的には変りません。

だが、三立社会が目標になってくると、さらに新たな活動が期待されます。なぜなら、政府や自治体の行政行動もまた、望ましい社会配分を達成するための一部門と考えると、企業や諸法人との関係もまた見直す必要が出てくるからです。

新たな関係とは何でしょうか。

一つは、公共的な事業への関わり方を、まったく新たな視点から見直すことです

従来、公共的なソフト事業へ民間企業などが関わる経営行動は、一般に「ソーシャル・ビジネス」や「ソーシャル・マーケティング」などとよばれてきました。

これは、企業のマネジメント・システムや市場経済システムを、社会・公共分野にも応用しようとするものです。

しかし、マーケティングの外部転換は、これとは基本的なスタンスが異なります


外部転換とは、再配分・市場交換・互酬制のバランスのとれた複合社会をめざして、企業やマーケティングに何ができるかを改めて問いかけようとするものです

それゆえ、新たなマーケティングの目標は、市民や住民などの暮らしを維持・改善するために、何が求められ、誰が対応していくべきかを、改めて検討し直し、提案していくことになるでしょう。

もう一つは、以上のような発想を基盤にして、望ましい再配分のための企画や代行へ実際に参加していくことです。

それには、従来の表層的なマーケティング手法に加えて、内部転換で再構築された深層的なマーケティング手法もまた駆使し、政府や自治体などの政策需要や行政需要を新たな視点から発掘することが求められます。

こうした経営活動によって、公的主体の発想をも超えた、新しい公共商品や公共サービスなどを積極的に提案していくことが可能になります。

例えば、福祉行政については、公的年金を補完する新私的年金制度、公的介護サービスのより適切な運用方法、生活保護とボランティア活動の連携化など、また次世代育成行政については、公的サービスを補完する育児・保育サービスの増強、国公立・私立を超えた学校制度の提案など、公私の境界を超えた事業が考えられます。

産業育成や企業支援面においても、公私一体となった新産業や新商品の開発、企業診断やコンサルティングと一体化した資金支援など、また人的能力向上面では、労働と教育の連関を強化した社会人教育や職業教育の拡大といった分野で、民間企業の制約を超えた公的支援活動が予想できます。

以上のように、これからのマーケティングは、政府や地方自治体の行政活動とも、積極的に関わっていかなければなりません。

2019年10月26日土曜日

ライフ・サポーティングへ向かって

マーケティングの内部転換について、前回に引き続き、第3.第4の方向を考えていきます。


第3は、顕示性提供から充足性支援への移行。

従来のマーケティングが、流行や権威など外側へ向かって、限りなく拡大する「外延市場」対応であったとすれば、これからはむしろ、心の内側に潜む体感や自足などの「内包生活」を深化させるという対応が求められます。

それは、ブランド消費の対極にある「
自己深化」といった生活行動に、積極的に対応することであり、需要者の内部を豊かにする「インナー・サポーティング」の拡大を意味しています。

第4は、消費者志向から生成者(=
生活民)支援への転換。

これからの需要者は、単なる消費者や生活者を超えて、生活上の新たな「
ねうち」を次々に創造する生成者(=生活民)へと進化していきます。

こうした需要者の変化に向けて、供給者が柔軟に対応していくためには、生成者の工夫やアイデアを敏感に吸収して、生み出された私効を社会的な共効や個効を変えていくことが望まれます。

具体的には、独自の「情報」や「イメージ」を創りだす私人の成果を商品やサービスに取り入れたり、商品やサービスを、できるだけ取捨選択や変換再編が可能なように設計していきます。

他方では、需要者の純私的な私効やアイデンティティーにはできるだけ踏み込まないように配慮します。

こうした方向は、従来の消費者対応や生活者対応をはるかに超えて、「ジェネレーター・サポーティング(生成者対応)」、あるいは「セルフヘルパー・サポーティング(生活民支援)」とでもよぶべきものになるでしょう。

以上にあげた4つの方向を実践していくことによって、これまでの消費市場のみを対象にした「オールド・マーケティング」はひとまず解体され、需要者自身の作り出す生き方や暮らしを、柔軟に支援する「ライフ・サポーティング」へと、徐々に再構築されていくことになるでしょう。

2019年10月18日金曜日

マーケティングを内部転換するには・・・

マーケティングを「脱構築(déconstruction)」していくには、マーケティングそのものの内部を再構築する「内部転換」と、マーケティング活動の外縁を再構築する「外部転換」の、2つの方向がある、と思います。

内部転換というのは、マーケティングの表面的な機能である「市場対応」を乗り超え、より本質的な目標である「需要者=生活民対応」をめざして、従来のさまざまな経営行動を再構築していくことです。

この点については、当ブログですでに幾つかの提案をしていますので、下表のように全体像を整理してみました。





第1は、従来の記号(サイン)誘導から
象徴(シンボル)支援への移行。

肥大化するコト=記号の支配を薄め、需要者自身の
モト=象徴力を回復させるためには、供給者は次のような活動に軸足を移さなければなりません。

例えば、言語以前の体感的、直感的な次元への回帰を支援する「体感・感覚力支援」、無意識への回帰をめざして、没我へと導く「没我力支援」、霊感や六感を増加させる「直感力支援」、無意識次元で自らの原点を確認させる「自己対面力支援」などです。

さらには、象徴力の強化をめざして、元型との出会い機会を増やす「象徴・元型支援」、宇宙や大海など絶対物を体験する「不変物信仰支援」、私や個を超えた次元を体験する「集合的無意識支援」など、多様多彩な需要者支援策を展開していくことです。

こうした活動は、企業のマーケティング活動を超えて、宗教活動や医療活動と同様、需要者の自律性や象徴性を支援する行動、いわば「シンボル・サポーティング:Symbol Supporting」とでもいうべきものです。

第2は、共効・個効提供から
私効支援
への移行。

供給者側からの一方的な「共効・個効」提供を極力抑えて、今後は需要者自身が求める「私効」重視へと転換します。あるいは「共効・個効」と「私効」のバランス回復をめざす、という方向です。

具体的にいえば、「価値創造」や「効用創生」などと称して、供給者側が押し付ける流行やライフスタイルを一旦棚上げにし、需要者のより自律した生活形成、つまり「私効独創」に役立つような商品やサービスを提供していきます。

これらは、市場を前提にした「バリュー・マーケティング:Value Marketing」を縮小し、需要者私効を支援する「エフィカシィ・サポーティング:Efficacy Supporting」とでもいうべき活動を拡大していくことを意味しています。

第3、第4については、次回へ続きます。

2019年10月9日水曜日

マーケティングを脱構築する!

ポスト消費社会の方向を、生成、統合、複合の3つ社会が鼎立する三立社会と定めた時、従来「マーケティング」とよばれてきた企業活動は、どのような方向へ向かえばよいのでしょうか。

これまで述べてきたことを今一度整理してみると、マーケティングを解体・再構築すべき方向、つまり「脱構築(déconstruction)のゆくえが見えてきます。


それは図表に示したように、左右に分かれており、一つは左側の、マーケティングそのものの内部を再構築する「内部転換」、もう一つは右側の、マーケティング活動の外縁を再構築する「外部転換」だと思います。

内部転換とは、いうまでもなく、供給者主導の従来型マーケティングを解体し、需要者支援を強化したライフ・サポーティングへと再構築することです。

需要者、つまり生活民の暮らし向けて、新たな生活資源を開発・提供し、市場交換を通じて、それぞれの生活形成を支援するという、企業本来の機能をより徹底し、さらに深い需給関係を構築していくことです。

しかし、脱構築はそれに留まるものではありません。そうした内部転換を果たしたうえで、さらに今後のマーケティングには、消費社会から生成社会への移行に参加するという外部転換が求められます。

つまり、複合化する社会の、再配分や互酬システムとも、新たな連携を築という課題です。

そのためには、企業がまず、再配分の基本的な主体である政府や行政部門との間に、新たな関係を築きあげなければなりません。あるいは再配分という分配システムとの間に、新たな役割を創り出すことが期待されます。

また複合社会のもう一つの柱である互酬制度についても、この制度を順調に再生させるためには、家族制度や地縁社会などの共同体とも、新たな協力関係を築き上げることが求められます。それは企業やマーケティングが、共同体のために何ができるかを自問するということになるでしょう。

内部転換と外部転換の双方について、マーケティングの進むべき方向を、改めて考えてみましょう。

2019年9月28日土曜日

三立社会へ向かって!

ポスト消費社会の可能性として、これまで生成社会、統合社会、複合社会の3つを提案してきました。

3つの社会のイメージ(
生成社会統合社会複合社会)を、生活空間の上にもう一度図示しておきます。

 これら3つの社会イメージを重ねてみると、次のような位置づけになります。



これを見る限りでは、生成社会、統合社会、複合社会の、3つの社会の重なった濃厚な部分が、ポスト消費社会の進むべき方向ということになります。

しかし、この部分だけがポスト消費社会というわけではありません。




この部分が意味を持ってくるためには、3つの社会を構成する3つの要素、つまり生成社会の生産・消費・生成統合社会の記号・機能・象徴、そして複合社会の再配分・市場・互酬の、それぞれのバランス化が必要条件となるからです。

アトモノミクスの立場でいえば、一人ひとりの生活民が、本来の個体性を回復したうえで、無意識次元の象徴性もまた回復させ、さらに新たな互酬性を構築することで、生産・消費・生成の3つ、記号・機能・象徴の3つ、再配分・市場・互酬の3制度をより滑らかに融合していくことが可能になる、ということです。

とすれば、ポスト消費社会は「三立社会(triangular society)と名づけるのがふさわしいでしょう。

生成社会、統合社会、複合社会の3つの社会が鼎立するとともに、生産・消費・生成の、記号・機能・象徴の、再配分・市場・互酬の、それぞれのバランス化をめざす社会という意味です。

今後の日本がこうした方向へ進むことができれば、閉塞感の強まる市場社会を再構築できるばかりか、望ましい統合社会や複合社会に向かって、新たな一歩を踏み出ことができるはずです。

現代の日本人に求められているのは、近代産業社会、近代市場社会の最終段階に向かって、基本的な9つの要素のバランスを回復し、成熟した三立社会へ向かって、社会全体の舵取りを徐々に調整していくことだと思います。

2019年9月19日木曜日

ポスト消費社会へ・3つの条件

これまで、ポスト消費社会の可能性として、生成社会統合社会複合社会の3つをあげてきました。それぞれの社会において、検討すべき要点を改めて整理してみると、次の3つに集約されます。



第1は
個体性の回復

生産者や消費者、あるいは生活者や生活人という概念に飲み込まれていた生成者生活民)という主体を回復させて、社会や市場に対抗できる個体性を取り戻ことです。

具体的にいえば、自給自足や物々交換を見直したり、モノからコトまで、情報から道具まで、既存の「ねうち」をデコンストラクト(解体・再構築)するなどの、独創的な生活行動を拡大していきます。


これによって、生産者、消費者、生成者(生活民)という、3つの立場のバランスを回復していきます。

第2は
象徴性の回復

私たちの生活願望を、表層的な欲望から深層的な欲動へ向けさせ、それによって願望の方向を記号志向から象徴志向へと拡大します。

ここでいう象徴とは、【
「象徴」を応用する!2016年4月9日】で紹介した、C・G・ユングの「原始心像」であり、夢や幻想の中に現れるイメージとして、言語が創り出した「記号」に対抗するものです。

この拡大によって、マスメディアや市場が押し付ける、さまざまな記号(流行、権威、誘導など)だけにとらわれず、生活者の内側からにじみ出る象徴(感覚、欲動、自律など)を重視する態度を伸ばしていくことができます。

具体的には、体感、欲動、象徴といった、言語化される以前の知覚を強化することであり、その延長線上に、象徴が集団的に共有された象徴制度(家族、血縁、地縁、知縁共同体)や象徴交換(贈与、寄与、互酬性)などの復権が展望されます。

こうした方法で弱まっていた象徴能力を回復させれば、記号、機能、象徴という3能力のバランスを復活させていくことが可能になるでしょう。

第3は
互酬制の回復

個体性の回復と象徴性の回復が重なると、生成者(生活民)が象徴制度になじんできますから、互酬制を再生させる可能性が高まってきます。

近代社会では圧倒的な市場交換によって圧迫されてきた再配分や互酬制、とりわけ互酬制を回復させることができれば、市場交換を抑制しつつ、再配分を再構築して、社会制度としての3制度のバランスを回復させることが可能になります。


以上のような3つの方向へ、従来の消費社会が的確に対応していくことができれば、ポスト消費社会には明るい展望が広がってきます。

それは単に消費社会の成長・成熟という次元を超えて、近代日本社会、さらには近代経済国家の新たな方向を示しているでしょう。

2019年9月9日月曜日

ポランニーの4制度を生活空間上に位置付ける!

これまで述べてきたK.ポランニーのいう4つの制度とその動向を、このブログで何度も述べてきた生活空間【生活空間から消費社会を考える:2019年5月11日】の中に位置づけると、図1から図3のように描くことができます。

古代から中世にかけては3制度・・・図1


横軸の社会制度や共生生活の分野で、「再配分」が記号的・理知的な制度として、また「互酬」が感覚的・習俗的な制度として、それぞれが位置づけられ、さらに私的生活から共生生活にまたがる分野に「家政」が、個人や家族の自律的・自給的な制度として存在します。



再配分」は、一方では国家による租税や公的年金・保険などの公的負担、他方では生活保障や年金・保険などの給付を、それぞれ理性や理念という高度にコト化された言語次元で制度化したものです。

また「互酬」は、贈与、遺贈、寄贈などの互恵行為を、言語以前の欲動次元に基づく象徴交換制度と見なしたものです。

そして「家政」は、個人や家族が相互の生活のために行なう、自給自足的な制度であり、横軸では私的生活から共生生活まで、縦軸では感覚・象徴的な願望から機能・性能的な願望や理性・記号的な願望まで対象にしています。



近代になるにつれて4制度・・・図2


旧来の2制度、「再配分」と「互酬」の間に「交換」が割って入ります。

「交換」という行為は、「あたい」の上下を合理的に判断するものですから、機能や性能を重視する欲求次元を中心に上下に広がります。







現代では「交換」が肥大して「市場交換」・・・図3

近代から現代へ進むにつれて、「市場交換」は「再配分」や「互酬」を、さらには「家政」までも押しのけるようになってきます。












現代消費社会を位置付ける・・・図4

以上のような推移の中に、現代の消費社会を位置づけてみると、図のように市場交換」制度の中の左側に広がる領域に相当します。

消費社会というと、現代社会の全てを覆っているようにも思えますが、全体的な社会・経済制構造の中に位置づけると、この程度の社会になるでしょう。



ポスト消費社会の方向・・・図5

とすれば、ポスト消費社会についても、市場交換、互酬、再配分、家政の諸制度がほどよくバランスした、図のような「複合社会」に向かって、3つの点で調整が必要になってきます。




 
 
 
 
第1は市場交換の縮小に比例した、適度な領域へ向かうこと

第2は再配分の適正化に応じて、税金や社会保障などとの関係を見直すこと


第3は互酬制の拡大に応じて、贈答、贈与、寄与などの生活行動と一体化をめざす


こうした方向へ向かうことによって、消費社会もまた複合社会の中に、それなりの立場を見いだすことができるでしょう。