2025年8月22日金曜日

生活学・新原論Ⅷ-4:単身者・男性×女性を比較する!

今回の生活コスト分析では、前回の「複合世帯当×単身世帯」に続き、単身世帯の「男性×女性」を検討してみます。

●基本データ

➀日本の単身世帯は2,296万世帯(総世帯数の40%)で、男性が1,176万世帯(21%)女性が1,121万世帯(19%)です(国立社会保障・人口問題研究所・日本の世帯数の将来推計:2025)。

➁生活コストのデータは、総務省統計局の「家計調査年報・家計収支編:2024年」の「男女・年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)」です。

➂集計対象となったサンプル数は649平均年齢は58.7(男性53.5歳、女性63.4歳)、有業者比率は57(男性67%、女性47%)、持家率は60.1(男性52.4%、女性66.8%)です。

➃1ヵ月当たりの消費支出額は、男性世帯が164,372女性世帯が174,112であり、女性の方が10,000ほど多くなっています。理美容商品・サービスや交際費などが多少多いから、と思われます。


●消費傾向比較

以上のようなデータを基に、男女別の消費傾向を当ブログの「7差化」で比較してみましょう(前回と同じく、教養娯楽データは「差真化」と「差戯化」に等分しています)。


❶7差化別の消費構成は、男性、女性ともほぼ同じ傾向を示しています。

❷7差化で比較すると、男性が高いのは差戯化と差汎化女性が高いのは差延化、差元化、差識化、差異化で、差真化はほぼ同じです。

男性差戯化6%ほど高いのは、外食、酒、たばこなどが、差汎化が1%高いのは自動車関係費などが、それぞれ比重が重いからです。

女性差延化4%ほど高いのは理美容用品・サービスなどが、差元化2%ほど高いのは野菜・海藻類が、差識化0.7%ほど高いのは光熱水道費や生活雑費などが、差異化で0.6%ほど高いのは洋服代や通信費などが、それぞれ重いからです。

以上のように見てくると、男性では差戯化や差汎化など、どちらかといえば外向きの消費傾向が強いのに対し、女性では差延化で理美容消費とともに、差識化や差元化など、生活の基本に関わる内向き消費が多いことが浮かんできます。 

2025年8月12日火曜日

生活学・新原論Ⅷ-3:家族世帯と単身者を比較する!

当ブログの提案する「生活世界構造」によって、生活コストの実態を分析しています。

総務省統計局の「家計調査年報・家計収支編:2024年」のデータに基づき、今回は複合世帯(2人以上世帯)単身世帯月間消費動向を比較してみましょう。

日本の家族構成2024年で推計すると、複合世帯は3,431世帯(60)単身世帯は2,296世帯(40%)となっています(国立社会保障・人口問題研究所・日本の世帯数の将来推計:2025)。

両方の世帯において1ヵ月当たりの消費支出額を比較すると、複合世帯(2024年人員:2.99人)300,243、単身世帯では169,547となっています。

それぞれの中味を当ブログの7差化で比較してみましょう。


消費金額比較

●上の図の上方金額別に見ると、両世帯の消費金額はほぼ同じ傾向を示しています。

前回と同じく、教養娯楽データは差真化と差戯化に等分しています。)

●出費傾向では、複合世帯のトップが差元化(食料、寝具など)であるのに対し、単身世帯のトップは差識化(住居、光熱費など)となっています。

●なぜ単身世帯で差識化が高いのでしょうか。食料や寝具などへの基本的な出費(差元化)は、世帯人数に比例していますが、ベーシックな差識化への負担は、単身世帯でも複合世帯とほぼ同様にかかり、人数配分の少ない分だけ多くなるからだ、と思います。

消費構成比較

●図の下方構成比(%)に比較すると、複合世帯は差元化と差真化で、単身世帯は差識化、差延化、差戯化でそれぞれ高く、差異化と差汎化ではほぼ同じです。

●複合世帯で差元化が高いのは、上記のように世帯人数に比例しているからであり、差真化が高いのは、授業料や教科書代など子どもたちへの費用がかかるからです。

●単身世帯で差識化が高いのは、家賃や設備など住宅関連の費用が高いためであり、差延化が高いのは理美容品やサービスへの消費が多いからです。差戯化が高いのは、外食の消費機会が多いからだ、と思われます。


以上のように、複合世帯と単身世帯の消費傾向を比較してみると、基本的な消費構成はほぼ同じではありますが、世帯人数、育児・教育費、嗜好消費などの点では当然のように差異が浮上してきます。

2025年7月26日土曜日

生活学・新原論Ⅷ-2:10年で生活コストが変わった!

当ブログの提案する「生活世界構造」によって、生活コストの実態を分析しています。

総務省統計局の「家計調査」のデータ(2人以上の世帯・1世帯当たり1か月間の用途別支出金額)を素材に、今回は10年間の変化を考えてみます。

20142024を、前回述べた生活行動7項目【生活世界構造】によって仕分けし、デフレーターを考慮して、で表してみると、下図のようになります。

(教養娯楽データは、前回指摘したように差真化と差戯化に等分しています。)

2014年と2024年を比べてみると、全体では次のような変化が浮上してきます。

➀7項目別では、差識化(約25%)、差元化(約23%)、差汎化(約12%)の比重が高く、この3つで60に達しています。

2014年より2024年が高かったのは差元化(+3.42%)と差戯化(+1.26%であり、ほとんど変わらなかったのは差真化(+0.02%、低かったのは差識化(−0.25%)、差異化(−0.86%)、差延化(−1.32%)、差汎化(−2.27%です。

生活行動別に眺めると、次のような変化が見られます。

❶差元化では、調理食品、肉類、穀類などの食品保険医療費が増えています。

❷差戯化では、菓子類外食などが増えています。

❸差真化では、教育、教養費がともに伸びています。

❹差識化では、家事用消耗品家庭用耐久財などへの支出が増えましたが、光熱・水道費が減っています。

❺差異化では、洋服通信費が減っています。

❻差延化では、理美容品やサービスが増えましたが、小遣い使途不明金が減っています。

❼差汎化では、交際費が大幅に減っています。

全体的に見れば、差元化、差戯化などで自宅内・家庭内での生活コストが増えていますが、差異化、差延化、差汎化などでは、外部や外見などへの支出を減らす傾向が現れています。

この背景には、コロナ禍の残滓による在宅中心生活の継続や、濃密社会の浸透に伴う欲望志向の低下などが推定されるでしょう。

2025年7月19日土曜日

生活学・新原論Ⅷ-1:生活コスト論が始まる!

「生活時間論」がひとまず終わりましたので、生活学・新原論は「時間から費用へ」と視点を移し、今回から「生活コスト論」を考えていきます。

生活コストの代表的な指標としては、総務省統計局の「家計調査」があります。1946年に始まった「社会生活基本調査」を継承し、1953年からは「家計調査」として5年ごとに実施されています。

家計調査の用途別支出項目を、当ブログの【生活世界構造】に対応させるため、まずは世界構造の7つの生活行動を確認しておきましょう。

差識化・・・さまざまな有用性の中から、日常的に必要な「ききめ」を求める生活行動。

差元化・・・身体性や直感性、原始性や動物性など「身分け」力を求める生活行動。

差異化・・・言語やイメージなど、さまざまな「記号」を求める生活行動。

差汎化・・・社会的なネウチや共同体的な「ねうち」つまり「共効」を求める生活行動。

差延化・・・生活民が個人的な「ねうち」、つまり「私効」を求める生活行動。

差真化・・・儀式、勉学、トレーニングなど「真面目」を求める生活行動。

差戯化・・・虚脱、浪費、戯び、ゲームなど「遊び」を求める生活行動。

以上のような7つの生活行動へ、家計調査の用途別支出項目を当てはめると、下表のようになります。


用途別支出項目を生活世界要素に振り分けてみましょう。

食料費では、穀類、魚介類、肉類、乳卵類、野菜・海藻、果物、油脂・調味料、調理食品、飲料が「差元化」に、また菓子類、酒類、外食が「差戯化」に該当します。

住居費では、家賃地代、設備修繕・維持  が「差識化」に当たります。

光熱・水道費では、電気代、ガス代、上下水道料が「差識化」に当たります。

家具・家事用品費では、家庭用耐久財が「差識化」、室内装備・装飾品が「差異化」、寝具類が「差元化」、家事雑貨・消耗品・家事サービスが「差識化」に、それぞれ該当します。

被服及び履物費では、和服や洋服が「差異化」、シャツ・セーター類  ・下着類が「差元化」、履物類や被服類が「差識化」に当たります。

保健医療費では、医薬品や器具類、保健医療サービスが「差元化」に当たります。

交通・通信費では、交通や自動車等関係費  が「差汎化」に、通信が「差異化」に該当します。

教育費では、授業料等や教科書・学習参考教材が「差真化」に相当します。

教養娯楽費では、教養娯楽用品や  教養娯楽サービスなどで真面目と遊びが混在しているため、「差真化」と「差戯化」の2つに分けることになります。

諸雑費では、理美容サービスや理美容用品、身の回り用品が「差延化」、たばこが「差戯化」、他の諸雑費が「差識化」に相当します。

こづかいや使途不明金は、「差延化」に当たります。         

交際費は「差汎化」に相当します。

仕送り金は「差汎化」に相当します。

以上のような対応を前提にすると、私たちの生活構造が「貨幣価値」として浮かび上がってきます、これにより、生活経済学家政学本質的な分析が期待できるでしょう。             

2025年7月6日日曜日

生活学・新原論Ⅶ-6:生活時間の地域差・差元化×差異化

総務省統計局の「社会生活基本調査」(2022年版)をベースに、生活時間の地域差を考えています。前回の【差真化×差戯化】に続いて、今回は【差元化×差異化】を取り上げてみましょう。

差元化(睡眠、休養・くつろぎ、受診・療養)差異化(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)とは、「体感性」と「情報性」、あるいは「やすらぎ」と「ときめき」とでもいうべき対比でしょう。両者の地域差はどうなっているのでしょうか。

下表は差元化と差異化の高い地域低い地域を、それぞれ都道府県別にあげたものです。

差元化では、上位が東北と北海道、下位が東京や大阪およびその近隣地方です。眠りや休養など体感性を求める行為は、北国で強く、大都市圏で弱いということでしょうか。

差異化では、上位が北海道や外辺地方、下位が東京都や宮城県、およびその周辺地域です。マスコミやソーシャルメディアなどに接する行為は、外辺地域で多く、大都市近郷では少ないという、意外な結果が現れました。どうしてなのか、差元化と差異化をクロスしてみましょう。

この図を見ると、両方の位置が高いほど、ここでも生活時間の「ゆとり」の大きさが現れているようです。

点線で囲った、6つのグループを順番に眺めていきます。

➀差元高・差異高地域・・・北海道、青森、秋田、山形の北日本の地域。体感享受時間が大きいうえ、ゆとりも大きく、その分情報摂取へ積極的なようです。気温の低さや他の行動に割かれる時間が少ないからではないでしょうか。

➁差元中・差異低地域・・・宮城、山梨、滋賀という、大都市やその近郊地域。体感時間も情報時間も比較的低いのは、仙台市を始め、東京都に近い山梨、大阪府に滋賀の3つです。⑥で述べるように、移動時間内の情報摂取時間が配慮されていないからではないでしょうか。

➂差元低・差異高地域・・・愛媛、山口、香川、静岡と概ね外辺地域。体感時間が低いのに、情報時間が高いのは、大都市圏から離れた地域に多いようです。差汎化(身の回り・食事・家事など)や差識化(通勤・通学・仕事・社会活動など)が少ない分、情報への接近が多いのかもしれません。

➃差元低・差異中地域・・・大阪、愛知、神奈川、埼玉、岡山など大都市圏とその周辺。体感時間が低く情報時間も中程度なのは、大阪市、名古屋市、横浜市などの大都市やその周辺地域です。これもまた、⑥で述べるように、移動時間内の情報摂取時間が配慮されていないからだと思います。

➄差元中・差異中地域・・・全国に散在する、上記4地域を除いた26地域。中心部には、体感時間も情報時間も、ともに中程度の、数多くの地方が分散しています。

⑥差元低・差異低地域・・・東京のみです。体感時間が低いのは理解できますが、情報時間も低いのは不思議です。この背景には、➁➃で触れたように、通勤・通学時間やその他の移動時間が多いにもかかわらず、その内部での情報行動が加えられていないことが潜んでいます。これらの時間の多くは、電車内携帯電話などに使われていますから、もし移動時間の6割が情報時間だとすれば、東京都は差元中・差異低地域に入ることになります。

以上で見てきたように、差元化×差異化でも、都道府県は6つ、ないし5つのグループに分かれてきます。

もっとも、基礎となる統計データが単一行動に基づいているため、移動+情報のような多重行動は把握できず、不可思議な構図となっています。

生活時間分析としては、新たな計測方法の開発が求められるでしょう。

2025年6月28日土曜日

生活学・新原論Ⅶ-6:生活時間の地域差を考える!

総務省統計局の「社会生活基本調査」(2022年版)をベースに、生活世界構造の視点から生活時間の実態を探っています。

今回は地域差、つまり都道府県別に生活構造の差異を読み取ります。

まずは差真化(学業、学習・自己啓発・学業以外の訓練)差戯化(趣味・娯楽、スポーツ)の地域差。いわば「まじめさ」と「おあそび」ともいうべき行動で、とりまとめれば地域別の「ゆとり」度はどうなっているのでしょうか。

下表は差真化と差戯化の多い地域を、都道府県別のベストテンとしてあげてみたものです。

差真化では、沖縄県がトップで、京都府、滋賀県、佐賀県が続き、埼玉県以外はすべて西日本の地域です。「まじめさ」行動では西日本が勝っているということでしょうか。

差戯化では、東京都がトップで、神奈川県、大阪府、宮城県、愛知県と続いていますが、高知県以外はほぼ中央地域が入っています。「おあそび」行動は、仙台から大阪までの中央部に偏っているようです。

続いて下図では、差真化(真)と差戯化(戯)のデータをクロスしてみました。両方の位置が高いほど、全体的な「ゆとり」の大きさが現れており、点線で囲ったような、5つのグループが浮かんできました。


➀真高・戯高地域・・・学び度も遊び度もともに高く、ゆとり度の高い地域・・・東京都、大阪府、神奈川県・・・中央地域

➁真高・戯低地域・・・学び度が遊び度より高い地域・・・沖縄県、九州諸県、島根県などの7県・・・主に西日本地域

➂真低・戯高地域・・・遊び度が学び度より高い地域・・・北海道、高知県、宮城県・・・ぼ遠隔地

➃真低・戯低地域・・・学び度も遊び度もともに低い地域・・・青森県、秋田県、山形県・・・東北地域

➄真中・戯中地域・・・学び度も遊び度もともに中程度の地域・・・上記以外の31府県・・・平均的な地域

以上のように、差真化と差戯化をクロスすると、日本列島の地域別特性がかなり明快に現れてきます。

2025年6月16日月曜日

生活学・新原論Ⅶ-5:生活時間の年齢差を考える!

総務省統計局の「社会生活基本調査」(2022年版)をベースに、生活世界構造の視点から生活時間の実態を探っています。

今回はこの調査のデータ(2021年)で作成した図と表(週間時間)を、7差化時間で比較してみると、年齢によって次のような差異が読み取れます。



主な年齢差をあげていきます。

生理的な必要行動である「差元化」時間は、1014歳の669時間から徐々に減り始め、5559歳の546時間で底を打つが、その後は次第に増え始め、85歳以上で735時間と最高になる。主な要因は睡眠時間であり、1014歳で575時間、5559歳で437時間、85歳以上で560時間と変化している。

日常的な必須行動である「差識化」時間は、1015歳の172時間から、年齢上昇とともに一貫して増え続け7084歳で350時間を超えている。家事時間45歳以上で100時間を、また食事時間60歳以上で、それぞれ100時間を超えているためだ。

社会的な活動である「差汎化」時間は、1019歳では60130時間であるが、2024歳の319時間から増え始め、4549歳の397時間で最高に達した後、徐々に減って、6569歳の208時間から減り始め、85歳以上では38時間に落ちる。いうまでもなく、仕事に従事する時間の大小のためである。

情報への接触を求める「差異化」時間は、年齢とともに徐々に増加し、5054歳で100時間を超えると、8084歳では268時間に達する。図に示したように、「差汎化」時間に反比例している。

純私的な生活行動である「差延化」時間は、2529歳から増え始め、3034歳の91時間でピークに達した後、徐々に減って行く。主な要因は2544歳女性層で育児時間が増加するためだ。

遊びを求める「差戯化」時間は、1014歳の102時間から徐々に低下し、5059歳で39時間まで落ちるが、その後は幾分回復し、7579歳には68時間となる。前半の低下傾向と後半の増加傾向は、いずれも「差汎化」時間への反比例のためと思われる。

学びや訓練を求める「差真化」時間は、1019歳の350を超える時間の後、2024歳で106時間まで急減し、25歳以降は10時間内外を続けていく。1019歳では、学業と学習・自己啓発などへの時間が多いものの、25歳を超えると、自己啓発や訓練などには一定時間しか割けないようになってくるようだ。

以上で見てきたように、生活世界構造の視点から生活民の時間消費を探ってみると、20歳と65歳あたりで、私たちの生活構造には大きな変化があるようです。