生活学・新原論の2番めは、生活民の意識構造、つまり生活主体の意識がどのような世界から生まれてくるのか、という課題です。
意識構造を捉えるには、縦軸、横軸、前後軸の3つの視点があります。
今回は縦軸から入りますが、このテーマについては、当ブログにおいて幾度か修正を加えながら、「生活世界構造」と題して詳しく展開してきました。主な論点を整理しておきましょう。
①【生活構造の縦と横】では、私たちのさまざまな生活意識が生まれてくる〝場〟、現象学的社会学が「生活世界」と名づけた生活空間を提案しています。この空間を、縦軸としての心の階層と、横軸としての行動の空間の、相互にクロスする次元として把握しています。2つの軸のうち、縦軸が生活意識の生まれてくる次元です。 ②【身分け・言分けが6つの世界を作る!】では、縦軸を構成する、最も基本的な要素として「身分け」と「言分け」の2つを挙げています。「身分け(みわけ)」とは、哲学者の市川浩が「身によって世界が分節化されると同時に、世界によって身自身が分節化されるという両義的・共起的な事態」と定義したもの、また「言分け(ことわけ)」とは、言語学者の丸山圭三郎が「シンボル化能力とその活動」、つまり広い意味でのコトバを操る能力とそれによって生まれる世界を意味しています。 ③【言語3階層説の基盤を考える!】では、「身分け」「言分け」に加えて、「識分け(しわけ)」の導入を、筆者が提案しています。「識分け」とは、仏教の唯識論や言語学者・井筒俊彦の言語アラヤ識論にも因んで、「身分け=感覚把握」と「言分け=言語把握」の間に、もう一つ「識分け=意識把握」の次元がある、ということです。 ④【「ことしり」から「ことわり」へ!】では、「身分け」「識分け」「言分け」に加え、さらにもう一つ「網分け(あみわけ)」を、筆者が提案しました。「網分け」とは日常的な言語の上に、もう一つ思考・観念的な言葉の次元を配慮したものです。「言分け」の分節化で生み出された言葉や記号の上に、さらに特定の意図による「網」をかけて、抽象化された言葉や記号を創り出すことを意味しています。「網分け」によって、日常的かつ広義的な言語が推理・整頓され、極めて狭義的かつ正確的な思考・観念言語が生み出されるのです。 |
以上のような4つのプロセスを設定すると、生活民の生活心理、つまり生活意識は下図のような「生活世界構造」として把握できます。
身分け・識分け・言分け・網分けの4分けによって、生活意識は次のように作動することになります。
❶生活民の意識行動は【おぼえず~おぼえる~しる~はなす~かんがえる】に分かれてきます。 ❷意識行動の変化によって、生活民の心の中には、ソト界(未知界)~モノ界(認知界)~モノコト界(識知界)~コト界(言知界)~アミ界(理知界)の、5つの心理的世界が生まれてきます。 ❸5つの世界では、無感覚~無意識~意識~知識~学識という、 5つの認識行動が動き出します。 |
生活学の新たな原論では、生活民が営む、さまざまな生活行動の背景に、以上のような意識構造と手順が潜んでいる、と考えています。
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