2015年3月3日火曜日

身分け・言分けが6つの世界を作る!

2つの網の目を通して把握された、周りの世界とはどのようなものなのでしょうか。これまで紹介した先学の諸説を整理して、筆者なりにイメージ化すると図のようになります。



上の図は生活世界の縦構造を描いたものですが、外側にいくほど全体を、逆に内側にいくほど、個別の世界を示しています。一番外側には「物理的世界」、すなわち「物界(フィジクス:physics)」が広がっていますが、そこから人間は「身分け」によって「本能によるゲシュタルト:gestalt」をつかみ出します。

この時、本能や感覚器がとらえた限りでのモノの世界は「モノ界(環境世界)」になりますが、とらえきれなかった世界は「感覚外界(メー・オン:mee on=非在)として排除されます。

例えば、紫外線という光は、魚類、爬虫類、鳥類、昆虫などには感知できる種がいますから、まちがいなく実在していますが、ヒトの目にはまったく見えませんから存在しないのと同じことです。犬笛が発する1600~2000ヘルツの音も、犬には聞こえますが、ヒトにはほとんど聞こえませんから、物質的には存在しているものの、人間には存在しないことになります。

こうしてとらえられたモノ界が、いわゆる「自然(ピュシス:physis)」です。「自然」というと、物理的世界そのものと思いがちですが、そうではありません。ヒトという種にとっての「自然」とは、物界そのものなのではなく、あくまでもヒトという種の本能や感覚器を通過したかぎりでのフィジクスにすぎません。


続いて人間は「言分け」によって「自然=モノ界」から「言葉による世界=コト界」を抽出します。つまり「コト=シンボル化能力」によって、「モノ界」の中から、言葉によって理解される限りでのゲシュタルトをつり上げて、新たに「コト界」を形成していきます。

この時、「言分け」の網の目によって、モノ界からコト界へくみ上げられたものが「コスモス(cosmos)になり、くみ上げられなかったものが「カオス(chaos)になります。

コスモスというと、一般には「物理的な宇宙」のことですが、ここでは「言葉による世界=コト界」を意味します。逆にいえば、物理的な宇宙もまた、人間が言葉によって把握している限りでの世界にすぎませんから、結局は「コト界」と同義語になります。


またカオスとは、一般には「混沌」と訳されていますが、ここでは「言分け」の網の目がモノ界からひろい上げきれなかった「言語外の世界」を意味しています。

ピュシスの中からコスモスを把握した瞬間、私たち人間の内部には自我や意識が生まれてきますが、その一方で、把握できなかった部分がカオスとなって、エス(心の無組織状態)や無意識という形で心の底に沈潜していきます。

 そして、私たちの生きている、現実の世界は、コスモスとカオスのせめぎ合う世界、あるいはモノとコトの行き交う世界、つまり「ゲゴノス(gegonós)となります。これこそ「現実の世界=モノコト界」といえるでしょう。

このように「身分け」によって、
周りの世界はまず「感覚外界(メー・オン)」と「物界(フィジクス)」と「モノ界(ピュシス)」の3つに分けられ、続いて「言分け」によって「言語外界(カオス)」と「モノコト界(ゲゴノス)」に分かれ、さらに言葉の作用によって「コト界(コスモス)」が浮上してきます。つまり、周りの世界は6つに分割されます。

6つの世界のうち、私たちが毎日どっぷり浸かっているのは「モノ界(感覚界)」「モノコト界(認知界)」「コト界(言語界)の3つです。この3つの世界において、私たちはさまざまな日常的行動を行っているのです。

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