生活学・新原論では、8番目の検討項目として「生活コスト論」を考えてきました。
総務省統計局の「家計調査年報・家計収支編」をベースに、当ブログの「生活世界構造」の視点に基づき、➀10年間の変化、➁複合世帯と単身者、➂単身者の男性と女性、➃単身者の年齢別消費について、7差化の動向を分析しました。
➀10年間の変化では、差元化と差戯化で自宅内・家庭内での生活コストが増える一方、差異化、差延化、差汎化では、外部や外見などへの支出を減らす傾向が見られました。 ➁複合世帯と単身者を比較すると、前者では差元化と差真化が、後者では差識化、差延化、差戯化がそれぞれ高く、背景には世帯人数、育児・教育費、嗜好消費などの違いが読み取れました。 ➂単身者の性別を比べると、男性では差戯化や差汎化など、外向きの消費傾向が強く、女性では理美容消費の差延化や、差識化や差元化など、内向き消費が多いようです。 ➃単身者の年齢別では、「~34歳」の若い世代は居住や遊びなどに、「35~59歳」の中年世代は交通費や交際費などに、「60歳~」の高齢世代は医療費や交際費などに、それぞれが生活行動の重点を置いている、などがわかりました。 |
以上のような傾向を「生活世界構造」として判読すると、次のような生活態様が浮かんできます。
❶コスト構成の基本的傾向としては、差元化、差識化、差汎化の3つが高い順に並び、続いて差戯化、差真化、差異化、差延化の順となっています。 ❷上位の3つ、差元化(食料、寝具、下着、医療など)、差識化(家賃、光熱費、消耗品、雑費など)、差汎化(交通、通信、交際など)は、生活の基本的な消費を示しており、身体維持を基本としつつ、外部的な交流が求められているようです。 ❸下位の4つ、差戯化(菓子、酒類、外食など)、差真化(教育、教養など)、差異化(装飾品、ファッション、通信など)、差延化(理美容、身のまわりなど)は、個人的な嗜好性に基づく生活志向を示しています。 ❹下位前半の差戯化と差真化は、心理的、あるいは精神的な消費の比重を示しており、遊びなどの方が勉学よりも多少多く求められるようです。しかし、差戯化と差真化に相当する消費データは、「家計調査年報」では「教養娯楽用品・サービス等」として一括集計されていますので、両者の強弱を正確に把握することはできません。 ❺下位後半の差異化と差延化は、純個人的な趣味や独創性の比重を示しており、生活世界の主体である生活基盤の強弱を表わしているようです。 |
このように整理してみると、「生活世界構造」による「生活コスト」分析によって、私たちの暮らしの深層的な構造が、朧げながらも浮かび上がってきます。