総務省統計局の「社会生活基本調査」(2022年版)をベースに、生活時間の地域差を考えています。前回の【差真化×差戯化】に続いて、今回は【差元化×差異化】を取り上げてみましょう。
差元化(睡眠、休養・くつろぎ、受診・療養)と差異化(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)とは、「体感性」と「情報性」、あるいは「やすらぎ」と「ときめき」とでもいうべき対比でしょう。両者の地域差はどうなっているのでしょうか。
下表は差元化と差異化の高い地域と低い地域を、それぞれ都道府県別にあげたものです。
●差元化では、上位が東北と北海道、下位が東京や大阪およびその近隣地方です。眠りや休養など体感性を求める行為は、北国で強く、大都市圏で弱いということでしょうか。
●差異化では、上位が北海道や外辺地方、下位が東京都や宮城県、およびその周辺地域です。マスコミやソーシャルメディアなどに接する行為は、外辺地域で多く、大都市近郷では少ないという、意外な結果が現れました。どうしてなのか、差元化と差異化をクロスしてみましょう。
この図を見ると、両方の位置が高いほど、ここでも生活時間の「ゆとり」の大きさが現れているようです。
点線で囲った、6つのグループを順番に眺めていきます。
➀差元高・差異高地域・・・北海道、青森、秋田、山形の北日本の地域。体感享受時間が大きいうえ、ゆとりも大きく、その分情報摂取へ積極的なようです。気温の低さや他の行動に割かれる時間が少ないからではないでしょうか。 ➁差元中・差異低地域・・・宮城、山梨、滋賀という、大都市やその近郊地域。体感時間も情報時間も比較的低いのは、仙台市を始め、東京都に近い山梨、大阪府に滋賀の3つです。⑥で述べるように、移動時間内の情報摂取時間が配慮されていないからではないでしょうか。 ➂差元低・差異高地域・・・愛媛、山口、香川、静岡と概ね外辺地域。体感時間が低いのに、情報時間が高いのは、大都市圏から離れた地域に多いようです。差汎化(身の回り・食事・家事など)や差識化(通勤・通学・仕事・社会活動など)が少ない分、情報への接近が多いのかもしれません。 ➃差元低・差異中地域・・・大阪、愛知、神奈川、埼玉、岡山など大都市圏とその周辺。体感時間が低く情報時間も中程度なのは、大阪市、名古屋市、横浜市などの大都市やその周辺地域です。これもまた、⑥で述べるように、移動時間内の情報摂取時間が配慮されていないからだと思います。 ➄差元中・差異中地域・・・全国に散在する、上記4地域を除いた26地域。中心部には、体感時間も情報時間も、ともに中程度の、数多くの地方が分散しています。 ⑥差元低・差異低地域・・・東京のみです。体感時間が低いのは理解できますが、情報時間も低いのは不思議です。この背景には、➁➃で触れたように、通勤・通学時間やその他の移動時間が多いにもかかわらず、その内部での情報行動が加えられていないことが潜んでいます。これらの時間の多くは、電車内携帯電話などに使われていますから、もし移動時間の6割が情報時間だとすれば、東京都は➁差元中・差異低地域に入ることになります。 |
以上で見てきたように、差元化×差異化でも、都道府県は6つ、ないし5つのグループに分かれてきます。
もっとも、基礎となる統計データが単一行動に基づいているため、移動+情報のような多重行動は把握できず、不可思議な構図となっています。
生活時間分析としては、新たな計測方法の開発が求められるでしょう。
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