ほぼ1年半にわたり「生活学・新原論」を展開してきましたので、ここでひとまず、基本的な方向を整理しておきましょう。
◆新原論Ⅰ・生活主体・・・「生活民」を提案しました。 生活民とは、市場社会のユーザーを超えて、市場の成立以前から存在した、自立的な人間像を意味しています。「自給自立人」という発想ですから、英訳すれば「Self-helper」になるでしょう。 ◆新原論Ⅱ・生活意識・・・縦軸、横軸、前後軸の3視点で意識構造を捉えます。 縦軸では未知界~認知界~識知界~言知界~理知界の5つの認識行動、横軸では社会界~間人界~個人界の3つの対応行動、前後軸では真実界~日常界~虚構界の3つの世界が浮上し、3軸をクロスさせた立方体を生活民の意識構造と考えます。 ◆新原論Ⅲ・生活世界構造・・・3軸をクロスした立方体を、生活民の意識構造から拡大し、最も基本的な生活世界へと展開していきます。 言葉が創り出す、3つの軸で構成される生活世界構造。これこそが、生活民の心理、願望、行動などが生まれてくる基盤となります。 ◆新原論Ⅳ・生活願望論・・・生活世界構造から7つの願望が浮上してきます。 私たちの生活願望は、欲望~欲求~欲動、世欲~実欲~私欲、真欲~常欲~虚欲の9つに分けられ、欲求・実欲・常欲を「日欲」とまとめると、7つに整理できます。 ◆新原論Ⅴ・生活行動論・・・生活願望を基盤にすると、生活民の生活行動は7つの行動として展開されることになります。 生活願望の構造からは、差識化、差異化、差元化、差延化、差汎化、差真化、差戯化の、7つの生活行動が生まれてきます。 ◆新原論Ⅵ・生活空間論・・・生活民の居住空間もまた、7つの生活願望に基づいて、7つの要素に分かれてきます。 差識化では最も基本的な居住「住み家」、差異化では家屋のデザインや屋内の家具意匠、差元化では家屋への直感や雰囲気、差延化では自室や寝室への自作行動、差汎化では改造可能性の高い居室やDIY先導型の家具、差真化では学びや信仰のための住居や家具、差戯化では遊びや休養のための別荘や家具などが、それぞれ求められます。 ◆新原論Ⅶ・生活時間論・・・生活民の生活時間についても、7つの生活願望に基づいて、7つの要素に分かれてきます。 生活世界構造で生活時間統計を読み解くと、【感覚⇔観念】の比重、つまり上下活動(感覚的・無意識的行動⇔記号的・意識的行動)が中心であり、この軸に生活時間消費の核心が潜んでいることがわかります。 ◆新原論Ⅷ・生活コスト論・・・生活世界構造で家計調査を分析すると、私たちの暮らしの重層的な構造が浮かび上がってきます。 コスト構成の基本的傾向としては、差元化(食料、寝具、下着、医療など)、差識化(家賃、光熱費、消耗品、雑費など)、差汎化(交通、通信、交際など)の3つが高い順に並び、続いて差戯化(菓子、酒類、外食など)、差真化(教育、教養など)、差異化(装飾品、ファッション、通信など)、差延化(理美容、身のまわりなど)の順となっています。 |
以上のように、新原論の原点では、新たな生活主体としての「生活民」の立場から、衣食住などへの生活願望、生活時間、生活コストなどの基本要素を見直すことができました。
この延長線上では、どのような展開が可能なのでしょうか。
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