2025年10月25日土曜日

生活学・新原論を応用する・・・生活世界構造

生活学・新原論に関連する、このブログの論考を整理し、応用分野を展開しています。

今回は「意識構造」や「生活行動」の前提となる「生活世界構造」を整理していきます。

生活世界は、下図のように、縦軸、横軸、前後軸の3つの軸で構成されています。


それぞれの軸の意味するものは、次の通りです。

縦軸・・・生活心理を考える・・・意識としての生活世界構造202437日)

縦軸は心の階層であり、「身分け」「識分け」「言分け」「網分け」で、感覚的世界から観念的世界へ移行していきます。

これにより、生活民の意識行動は【おぼえず­~おぼえる~しる~はなす~かんがえる】に分かれ、心の中には、ソト界(未知界)~モノ界(認知界)~モノコト界(識知界)~コト界(言知界)~アミ界(理知界)の、5つの心理的世界が生まれてきます。5つの世界では、無感覚~無意識~意識~知識~学識という、 5つの認識行動が動き出します。

横軸・・・生活心理を横軸で考える2024329日)

横軸は言葉によって作られる個人・社会の階層であり、外側の世界と交流する「社会界」、日常的な暮らしで交流を行なう「間人界」、自己の内側と交流する「個人界」に分かれます。社会界は集団的な価値観や制度を受け入れつつ、同時に社会そのものへ働きかける集団的な世界、間人界は社会界を前提に、会話、実践、交換などを〈交流〉している日常的な世界、そして個人界は社会のしくみに従いながらも、純個人として自らの内部に語りかけたり、社会規範を自分なりに変換して、新たな表現を作りだす純私的な世界です。

前後軸・・・生活心理・前後軸から考える!2024418日)

前後軸は、日常を超える超越的な「メタ・メッセージ」によって、言葉の示すことをすべて真実とみなす「真実界」、逆に言葉の示すことはすべて虚構とみなす「虚構界」、2つの狭間にあって真偽が曖昧なままの「日常界」、の3つに分かれます。

真実界(儀礼界)では儀礼、儀式、緊張、勤勉、学習、訓練、節約、貯蓄など、日常界では普段、平常、平生、常日頃、日々など、そして虚構界(遊戯界)では遊戯、弛緩、怠惰、遊興、放蕩、浪費、蕩尽など、それぞれの生活行動が生まれてきます。

3軸の構造・・・生活世界構造を言語機能で考える!2024430日)

生活民の生きている空間は「言葉」によって作られていますから、縦軸(感覚⇔観念)では象徴言語・交信言語・観念言語が、横軸(個人⇔社会)では独考言語・日常言語・交流言語が、そして前後軸(真実⇔虚構)では真言・常言・虚言という言語機能が生まれてきます。

私たちの生きている生活世界を、以上のような言語構造として理解すると、さまざまな生活意識はもとより、生活願望生活行動の生まれてくる根源が、じわじわと浮かび上がってきます。

2025年10月19日日曜日

生活学・新原論を応用する・・・意識構造と生活構造

生活学・新原論に関連する、このブログの論考を整理し、応用分野を展開しています。

前回に続き、「新原論Ⅰ・生活主体」で提唱した「生活民(Life Creator」について、今回は「意識構造」と「生活行動」を整理していきます。




➀「生活民」の意識構造

生活民は「価値」よりも「私効」を重視!20161122日)

生活民はそれぞれの生活の中で、自分で創り出した「私効」を中心としつつも、外部から調達してきた「共効」を「個効」として受け入れ、新たな「私効」へと変換することにで、有用性の範囲を広げているのです。

生活民の求めるネウチとは何か・・・2018131日)

大和言葉では、モノの有用性について「ねうち(有用性)」と「あたひ(相当性)」を分け、この区分を歴史的に続けてきました。

生活民はアタヒよりネウチを重視!201828日)

「ねうち」とは「私効」であり、「あたひ」とは「価値」に相当しますから、生活民とは「あたひ」よりも「ねうち」を求める主体ということになります。 

➁「生活民」の生活行動

「価値創造」より「私効復活」へ!20181021日)

生活民には、マスメディアや消費市場から押し付けられる流行やライフスタイルを一旦棚上げにしたうえで、自分自身の中身や暮らしを見つめ直し、そこから改めて「何が欲しいのか」、生活願望を再構築していくことが求められます。

生活行動の判断基準は「私効」から・・・20181129日)

生活民の判断基準については、社会-個人軸上の「私効」をべ-スとしつつも、さらに言語-感覚軸上の「感覚」や「象徴」、真実-虚構軸上の「虚構」を含めた次元から説明していくことが求められるでしょう。

「私効」を実現する生活行動とは・・・2018129日)

モノの用途における「差延」とは、予め作られたモノの共効や個効ではなく、提供者と私用者の間で時間とともに作られていく私効ということになるでしょう。

以上、生活新原論の応用分野として、前回の「生活民」の定義と生活構造に続き、今回は意識構造生活行動を取りまとめてみました。

2025年10月11日土曜日

生活学・新原論を応用する・・・生活民と生活構造

生活学・新原論を提案してきましたが、この視点を応用して、このブログではすでにさまざまな論考を展開してきましたので、今一度振り返り、ポイントを整理しておきましょう。

最初は「新原論Ⅰ・生活主体」で提唱した「生活民Life Creator」です。

「生活民」とは、経済学での「消費者(Consumer」、経営学や家政学での「生活者(User」などを大きく越えて、市場社会の枠組みを超えた、自律的な人間像を意味しています。


生活民」という主体が創り上げられてきたプロセスは、以下のとおりです。

➀「生活民」の定義

「生活民」とはどんな人?20161013日)

「生活民」とは、生活の主体である人間像を、生活学の「生活人」や社会経済学の「生活者」を継承しつつ、より統合化したコンセプトです。

「生活民マーケティング」はLC-Marketing」だ!2017730日)

生活民の英語名称も、Consumer(消費者)やPro-sumer(生産・消費者)はもとより、User(需要者)やSelf-helper(生活者)もまた超えて、Life Creatorというべきです。

アトモノミクスの基盤を考える!20181120日)

新しい生活学=アトモノミクスátomo:私人・原子  nomos:法)では、市場の成立以前から存在した、自立的な人間像の上に、Life Creatorという、新たな要件を満たす人格を改めて「生活民」と定義し、彼の行う生活諸行動について、様式や原理などを構築していきます。

➁「生活民」の生活構造

これが生活体だ!2015319日)

私たちの生きている生活世界は、感覚⇔言語軸、個人⇔社会軸、真実⇔虚構軸の、3つの軸によって構成されています。

生活体マンダラ・立方界を提案する!2015322日)

3つの軸によって【感覚・認知・言語】【個人・間人・社会】【遊戯・日常・儀礼】の各要素をクロスさせると、3×3×3の、27の小立方体に分割できます。

「生活体」から「生活球」へ201541日)

「生活体」という立法体を「生活球」という球体でとらえ直すと、真ん中の平常球を中心に、言語球、感覚界、社会球、個人球、儀礼球、遊戯球の、7つの小球で構成されています。

今回はとりあえず、生活民の定義と生活構造を振り返りました。次回は意識構造生活行動です。