2025年4月30日水曜日

生活学・新原論Ⅶ-2:生活時間の行動分類を比較する!

総務省統計局の「社会生活基本調査」を参考に、生活時間の動向を考えています。

前回はこの基本調査の分類方式と当ブログの生活世界構造を比較し、さまざまな行動について両者の対応を示してみました。

この対応に基づき、『社会生活基本統計』の最新版(令和3年:2022年公表)の統計データを素材として、両方の分類結果を量的に比較してみました。


両者を比べてみましょう。 

➀基本調査では、1次行動(睡眠、身の回り、食事)が45.62次行動(通勤・通学、仕事、学業、家事など)が28.3、3次行動(移動、マスコミ、休養・くつろぎ、趣味・娯楽など)が26.1で、1次行動が主流となっています。

➁生活世界構造では、中心活動の差識化(身の回り、食事、家事)が19.9上下活動の差異化(マスコミ)と差元化(睡眠、くつろぎ・休養など)が50.4左右活動の差延化(看護・介護、意気地など)と差汎化(通勤・通学、移動、ボランティア活動など)が21.9前後活動の差戯化(趣味・娯楽、スポーツなど)と差真化(学業、学習・自己啓発など)が7.8で、上下活動が半数を占めています。

両者の差異は、次のように読み取れます。

➂基本調査では、1次=生存的時間、2次=必要的時間、3次=余裕的時間という発想で区分され、その順序で時間配分が現れています。

➃これに対し、生活世界構造では、日常的な中心活動の下に、上下活動の記号次元と感覚次元、左右活動の個人行動次元と社会行動次元、前後活動の遊戯次元と真摯次元が、順番に現れています。

2つの時間配分状況をグラフ化してみると、下図のようになります。


これを見ると、生活基本統計の1次・2次・3次の段階的構造に対し、生活世界構造では、比較的小さな中心活動の上に上下、左右、前後活動が続いていることがわかります。

とすれば、生活世界構造によって、基本統計の生活時間数値を読み解くと、上下活動(感覚的・無意識的行動⇔記号的・意識的行動)に、生活行動の核心が潜んでいることがわかります。

私たちの生活構造においては、上下活動、つまり【感覚⇔観念】の比重が極めて大きいことが現れているのではないでしょうか。

2025年4月23日水曜日

生活学・新原論Ⅶ-1:生活時間論が始まる!

生活空間論」がひとまず終わりましたので、生活学・新原論は「空間から時間へ」と視点を移し、今回から「生活時間論」を考えていきます。

生活時間の構成や統計については、総務省統計局1976(昭和51)年から5年ごとに実施している「社会生活基本調査」が、先例として参考になります。

この調査は、統計法に基づく基幹統計『社会生活基本統計』の資料として、生活時間の配分や自由時間の活動状況など、国民生活のデータを集めるもので、生活時間の構成については、次のように設定されています。

1次活動・・・睡眠、身の回りの用事、食事

2次活動・・・通勤・通学、仕事、学業、家事、介護・看護、育児、買い物

3次活動・・・移動(通勤・通学を除く)、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌、休養・くつろぎ、学習・自己啓発・訓練(学業以外)、趣味・娯楽、スポーツ、ボランティア活動・社会参加活動、交際・付き合い、受診・療養、その他

このような生活区分に対し、当ブログ「生活学・新原論」の生活行動体系では、次のように7つに設定しています(7差化)

❶差延化(個人的・純私的行動)⇔ ❷差汎化(社会的・集団的行動)

❸差異化(記号的・意識的動)⇔ ❹差元化(感覚的・無意識的行動

❺差戯化(遊戯的・虚構的行動)⇔ ❻差真化(真摯的・目標的行動)

❼差識化(生活世界の中心としての日常的行動)

両者を対比させると、下図のようになります。

 の意味するところを、一通り説明しておきましょう。

➀1次活動

●睡眠・・・典型的な感覚的・無意識的行動であり、差元化です。

●身の回りの用事・・・最も日常的な行動であり、差識化です。

●食事・・・これまた典型的な日常的な行動であり、差識化です。

➁2次活動

●通勤・通学・・・社会活動への参加という意味で、差汎化です。

●仕事・・・最も社会的な活動という意味で、差汎化です。

●学業・・・真理を求める行動として、差真化です。

●家事・・・典型的な日常行動として、差識化です。

●介護・看護・・・個人的な支援活動として行われており、差延化です。

●育児、買い物・・・介護・介護と同じく、個人的な生活行動であり、差延化です。

➂3次活動

●移動(通勤・通学を除く) ・・・社会的な目標に向かうという意味で、差汎化です。

●テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・・・典型的な記号訴求行動であり、差異化です。

●休養・くつろぎ・・・虚脱行動そのものであり、差元化です。

●学習・自己啓発・訓練(学業以外) ・・・典型的な真理的・真摯的行動であり、差真化です。

●趣味・娯楽・・・典型的な遊戯行動であり、差戯化です。

●スポーツ・・・これまた広義の遊戯行動であり、差戯化です。

●ボランティア活動・社会参加活動・・・社会へ向かう意識の点で、典型的な差汎化です。

●交際・付き合い・・・社会への関与を求める点で、差汎化です。

●受診・療養・・・身体という感覚器官に関わる点で、差元化です。

●その他・・・上記以外のさまざまな生活行動は、生活世界の中心において、日常的な差識化として行われています。 

このような対比を前提にしつつ、「社会生活基本調査」の統計的データを「生活学:新原論」の生活構造素材として、多面的に活用していきます。

2025年4月10日木曜日

生活学・新原論Ⅵ-7:生活空間論:居住空間の差識化

生活空間論の7番めは「居住空間の差識化」、つまり居住者が住宅や家具などを、通常の暮らしに利用する行動です。

差識化とは【差識化行動とは何か?】で述べたように、生活世界の中央の「日欲」を構成する3つの生活願望、つまり「欲求」「実欲」「常欲」が“認識”する、さまざまな有用性の中から、個人的に必要な「ききめ」を判断し、それらを求める生活行動です。

生活体でいえば、下図➀のように、欲求ブロック、実欲ブロック、常欲ブロックの3つのブロックが交差する、中央のブロック(オレンジ部分)において、最も基本的な居住行動を展開することになります。


これらの3ブロックの中核となる行動を抜き出して見ると、下図➁のように、6つの居住行動のクロスする、中央の核(オレンジ部分)が差識ブロックということになります。


そこで、6つの居住行動の求める住居・家具などの要素を、これまで述べてきた6つの居住行動から抜き出して見ると、下図➂のように、6つの対応が浮かんできます。


縦軸上部の「欲望・実欲・常欲」行動では「
見栄え」が、下部の「欲動・実欲・常欲」では「住み心地」がそれぞれ求められています。

横軸右上の「欲求・世欲・常欲」行動では「新機能住宅」が、左下の「欲求・私欲・常欲」では「手作り自宅」がそれぞれ求められています。

前後軸右下の「欲求・実欲・真欲」行動では「充実書斎」が、左上の「欲求・実欲・虚欲」では「新型別荘」がそれぞれ求められています。

となると、3軸の交差する中央ブロックの「欲求・実欲・常欲」行動では、何が求められるのでしょうか。

このブロックは、意識の織りなすさまざまな生活願望が、頻繁に交差する行動次元ですから、居住行動もまた最も基本的、あるいは究極的なものになります。

つまり、「欲求・実欲・常欲」が求める差識化行動とは、居住者にとって、最も基本的な居住行動、すなわち「住み家」という要素を求めることです。

いいかえれば、見栄えや住み心地、新機能や手作り、充実や新型など、さまざまな居住願望が交差する中で、最も基礎的な居住環境を求める次元として、差識化行動が位置づけられるのです。