生活空間論の3番めは「居住空間の差延化」、つまり居住空間の個室や寝室の構築、あるいはDIYやカスタマイズなどについて考えます。
差延化とは【生活学・新原論Ⅴ-3:差延化行動とは何か?】で述べたように、生活願望の「私欲」に対応して、自分だけの効能、感性、記号などを求める生活行動であり、社会的な価値や日常的な効用、あるいは共同的な記号や感性などを抑制する行動ともいえるでしょう。
こうした行動を居住空間に当てはめると、家屋での自室や寝室作り、あるいは居住空間へ参加行動などが対象になってきます。
差延化行動は、上記の【新原論Ⅴ-3】で示したように、9つの行動に分かれていますので、それぞれの行動が生活空間に何を求めるのか、を考えてみましょう。
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このうち、上段の「欲望」欄は【居住空間の差異化】で述べた差異化行動、下段の「欲動」欄は【居住空間の差元化】で述べた差元化行動と連動しています。
以上の動向を組み入れながら、差延化行動の行方を展望していきます。
●上段の「欲望」段では、中央の「個性的:手作りデザイン居間」を挟んで、「ふまじめさ:手作り軽薄デザイン」と「まじめさ:手作り真面目意匠」が求められます。
➀私欲・虚欲・欲望では「ふまじめ:手作り軽薄デザイン」でできる建物、つまり所有者が既成の機能や用途よりも自分だけの遊び心や手先で造り出せるデザインや雰囲気などが求められます。 ➁私欲・常欲・欲望では「個性的:手作りデザイン」でできる建物、つまり所有者が自らデザインできる建物や家具などが求められます。 ➂私欲・真欲・欲望では「まじめさ:手作り真面目デザイン」でできる知的物件、つまり所有者が自らデザインできる書斎や学習室などが求められます。 |
●中段の「欲求」段では、中央の「手作り自宅」を挟んで、「手作り別荘」と「手作り書斎」が求められます。
④私欲・虚欲・欲求では「手作り」でできる遊戯用建物、つまり建築業者など設計や構築を越えて、所有者自らが造り出せる別荘や遊具などが求められます。 ➄私欲・常欲・欲求では「手作り」でできる建物、つまり建築業者など設計や構築を越えて、所有者自らが造り出せる自宅や家具などが求められます。 ⑥私欲・真欲・欲求では「手作り」でできる知的物件、つまり建築業者など設計や構築を越えて、所有者自らが造り出せる書斎や勉強部屋などが求められます。 |
●下段の「欲動」段では、中央の「居心地:手探り家具」を挟んで、「夢心地:手探り夢具」と「まおもて(真面):手探り神具」が求められます。
⑦私欲・欲動・虚欲では「夢心地」の「手探り」で造り出す夢具、つまり所有者が無意識の中をさまよいつつ、自らの手で造り出せる建造物や夢遊道具などが求められます。 ⑧私欲・欲動・常欲では「居心地」を求めて「手探り」でできる建物、つまり所有者が無意識の中をさまよいつつ、自らの手で造り出せる自宅や家具などが求められます。 ⑨私欲・欲動・真欲では「まおもて(真面)」で製作できる知的物件、あるいは無意識の中をさまよいつつ、自らの手で造り出せる神殿や神具などが求められます。 |
以上で述べた、9つの差延化行動を、具体的な事例として考えてみると、次表のようになります。
これこそ「居住空間の差延化」という居住行動の意味するところでしょう。