2022年2月11日金曜日

数字・計算文字で思考する!

思考・観念言語における文字言語の位置を考えています。

文字言語とは、【思考・観念言語は地縁共同体から”理”縁共同体へ!】で述べたように、日常・交信言語を抽象化して創り出された思考語を、専門分野や特異分野など特定の“理”縁言語共同体向けに、数字や文字の形で表現した学術文字や専門文字です。

事例としては、数字、漢字、音符などが考えられますので、まずは数字やその関連の計算文字が、どのように創られ、どのように使用されているか、を振り返っておきましょう。 

●数字・・・123IIIIIIなど数量文字

数字の起源を考える!】で詳しく述べたとおり、123というアラビア数字では、B.C.300年頃にインドで生まれたブラーフミー数字(バラモン数字)が、A.D.500年頃までに 0 が発明されて十進法位取りのデーヴァナーガリー数字となり、元型が成立しました。

これがイスラム圏へ伝わって、少しずつ改変され、1013世紀ごろにヨーロッパへと広がりました。同地ではさらに修正が加えられた後、急速に世界中に広まって、現在のアラビア数字となりました。

またIIIIIIというローマ数字は、B.C.1000年頃、古代ローマ帝国で生まれたもので、帝国が衰退した後もヨーロッパで使われ、中世後期までは定着していましたが、1314世紀に至って、アラビア数字に置き換わったようです。

これらの数字を使って行なわれる数学は、古代のエジプト数学アラビア数学に始まり、バビロニア数学,ギリシア数学,中世ヨーロッパ数学,インド数学,中国数学,日本数学 (和算などがそれぞれ別個に発達してきましたが、1920世紀の国際化の中で次第に統一され、現代の「唯一の数学」へと統合されました。

ここで使われている数字は、深層・象徴言語から日常・交信言語へと進化してきた「数」というシニフィエ(所記)が、文字というシニフィアン(能記)に表象された結果です。

思考・観念言語としては、環境世界から「身分け」された生活世界を、「数」という網目のみによって、厳密に切り取った観念ともいえるものです。

それゆえに、観念として抽象化された「数」は、特有の規則(シンタックス)に基づいて、さまざまな形での「計算」を可能にする「数学」を発展させました。そのシンタックスとして使われる文字が、次に述べる計算文字です。

●計算文字・・・+、-、=、≠、√、∽ など演算文字

数学で使われている計算文字にも、さまざまな歴史があります。

+と-】は、樽の水やブドウ酒の上下を表すことが起源とされ、13世紀にドイツのJ.ウィッドマンが『商業用算術書』(1489) において,「+」はラテン語の“et英語のand) を単純化したもの、「-」は“minus” の頭文字「m」の筆記体から生まれものとして印刷したことで、以後はヨーロッパに広まりました。

×】は15世紀にイギリスの.オートレットが『数学の鍵』(1631) において、また【÷】はスイスのJ.H.ラーンが『代数の本』(1659) の中で初めて使用し、その後、イギリスのJ.ウォリスワリスI.ニュートンにも採用されて、欧米諸国で次第に使われるようになりました。

】はイギリスのR.レコードが『知恵の砥石』(1557) において初めて使用し、次第に著名な数学者の間に浸透しました。

これらの計算文字は数字の間の関係を示す、厳密なシンタックスを示していますから、使用する場合は、その仕組みを共有する“理”縁共同体の規則に従うことが大前提となっています。 

以上のように、数字における思考は、さまざまな数量文字に設定されたシニフィエと、厳密に設定されたシンタックスに基づいて行われるため、両者を十分に理解した知識集団、つまり数“理”縁共同体に加わることが前提となっています。

いいかえれば、思考・観念言語としての数字とは、使用者に対し、それぞれの単語に託された意味(シニフィエ)と文法(シンタックス)を、予め十分に習得しておくことを求めるものといえるでしょう。

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