2023年11月28日火曜日

言語6階層説:交信言語とは・・

言語6階層説の4番めは「交信言語」です。

交信言語は共同体との交流を通じて個人の中に育まれた「自然言語」を、音声や記号で他者との交流用に使用する言語です。



前回の「自然言語」と今回の「交信言語」は、両方とも「言分け」と「網分け」の間に生まれる「コト界(言知界)」、つまり日常生活の中で使われています。

両者を分けるのは、発声や文字などで発信するか否か、という点です。発信しないで頭の中だけで使うのが前者であり、発信するのが後者です。 

具体的な事例で考えてみましょう。

感覚が「認知」し、意識が「識知」した対象を、共同体で使われている言葉で自覚するのが「自然言語」であり、音声記号で他者に向かって表現するのが「交信言語」です。



色鮮やかな対象を「赤い」という言葉で自覚するのが「自然言語」、「交差点は今、赤ですよ」と話しかけるのが「交信言語」です。

どこかから聞こえてきた音を「泣声」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その泣声は「隣室のベビーの声だ」と話しかけるのが「交信言語」です。 

漂っている匂いを「香り」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その香りを「桜が香ってくるな」と話しかけるのが「交信言語」です。 

呑み込んだ飲料の味を「甘い」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その味を「甘いジュースだよ」と話しかけるのが「交信言語」です。 

真冬の大気に接して「寒い」という言葉で自覚するのが「自然言語」、その味を「今朝は一番寒いな」と話しかけるのが「交信言語」です。 

 

「交信言語」とは、以上のような特性を持つものですが、前回述べた、これまでの言語論では、「交信言語」は「外言語」と定義されています。

アメリカの言語哲学者N.チョムスキーは、「内言語=言語」を脳と心の中に実装された知識体系、「外言語=E言語」を内部体系の産出物として外界に表出する現象としています。

これに当てはめれば、「自然言語」が「内言語」、「交信言語」が「外言語」ということになります。「交信言語」とは、「自然言語」を発声や記述によって外界へ表出する言語であり、表出しないのが「自然言語」ともいえるでしょう。

もっとも、このように定義すると、「自然言語」を発声や記述によって外界へ表出しない、もう一つの言語、次回の「思考言語」との違いが問われることになります。

両者はどのように違うのでしょうか? 

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