2023年11月21日火曜日

言語6階層説:自然言語とは・・・

言語6階層説の3番めは「自然言語」です。

自然言語は「言分け」によって生まれる言語です。

「言分け」というのは、人類が「身分け」し、「識分け」した対象を、コトバやシンボル(絵や形)によって捉え直す行為です。

これによって、外部世界は本能で捉えたモノ界(認知界:ピュシス:physisから、意識が捉えたモノコト界(識知界:ゲゴノス:gegonósを経て、コトバやシンボルが把握した、もう一つ別の外界像、コト界(言知界:コスモス:cosmosを描くことになります【言語6階層説へ進展する!】。

ここで使われているのが「自然言語」です。



前回の「象徴言語」と「自然言語」と区別するのは、「言分け」、つまり「言葉になるか否か」です。「識分け」が捉え、「言分け」が捉える前の事象をとりあえず記号化するのが「象徴言語」であり、「言分け」が捉えた事象を明確に言語化するのが「自然言語」です。

次回の「交信言語」と区別するのは、他者との「交信」機能の高低です。外部世界を把握するため、自らのために創造する言語が「自然言語」であり、他者との会話を前提にして創造された言語が「交信言語」ということになります。

もっとも、自然言語と交信言語は、両方ともコト界(言知界)において使われる言語ですから、前後や順序の区分があるわけではなく、機能や目的によって差異が生まれるだけです。

それゆえ、既存の学問では、「自然言語」と「交信言語」の違いを、「内言語(内言)」と「外言語(外言)」などという名称で分けています。

ロシアの心理学者 L.S.ヴィゴツキー

内言語を「音声を伴わない、思考のための道具としての個人的言語」とし、外言語を「音声を伴う、伝達の道具としての社会的言語」と定義し、このような言語を扱う人類の能力は、「外言語から内言語へ」と発達していく、と説明しています(『思考と言語 新訳版』)。


アメリカの言語哲学者 N.チョムスキー

脳と心の中に実装された知識体系としての「内言語=I言語(internalized language, I-language」と、その産出物として外界に表出する現象としての「外言語=E言語(externalized language, E-language」として区別し、内言語は子どもが言葉を獲得する際、始めに得る言語の青写真とも定義しています(『チョムスキー言語基礎論集』)。

当ブログの視点から言えば、ヴィゴツキーの「内言語」もチョムスキーの「I言語」も、ともに前回の「象徴言語」であり、「外言語」も「E言語」もまた、今回の「自然言語」と「交信言語」ということになります。

とすれば、「自然言語」とは、「象徴言語」を生み出す個々人の能力を基礎に、血縁・地縁の間で醸成された共通言語として生み出され、より広い共同体の間に定着した記号体系ということになるでしょう。

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