2023年1月13日金曜日

学歴が上がると出生率が下がる!

人減先進国としての日本の将来。・・・それを考える前提として、過去120年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。

前回の食料自給率に続き、今回は進学率と出生率の関係を振り返ってみましょう。 


高等教育機関への進学率の推移は、生活民一人一人にとって、一方では教育費用負担の増加を、他方では高学歴化による上昇志向の拡大を、それぞれ意味しています。

その意味では、一国の人口を構成する生活民の欲望水準を象徴している、とも言えます。

そこで、高等教育機関への進学率の推移を、次のような手順で調べてみました。

戦後の進学率は、文部科学省の諸統計で、次のように算定されています。

高等教育機関進学率(過年度入学=浪人を含む)=大学・短期大学・高等専門学校進学者数/18歳人口(3年前の中学校卒業者数)

戦前の進学率は発表されていませんので、文部科学省の「明治6年以降教育累年統計」をベースとしつつ、戦後に近づけるため、次のように算定しました。

高等教育機関進学率=旧制高等学校・専門学校・実業専門学校・旧制大学・師範学校・高等師範学校などの生徒数/18歳人口

このような手順で進学率の推移を振り返ってみました。

戦前明治~大正期(19002513昭和前期192640)は4前後であった。

戦後は、1950年代の10から、60年代1920%、70年代2538%と登り始め、80年代3990年代492000年代57と急上昇した後、2010年には58.6に達している。

現在では、子作りを判断する50歳以下の4割以上が、すでに高学歴者になっている。

他方、出生率の推移を、合計特殊出生率の動きで比較してみましょう。

合計特殊出生率とは、1549歳の既婚・未婚の全女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生の間に産む子どもの数を表しています。

その推移は次のようなものです。

戦前1900年の6.25から10年の5.63まで低下した後、20年前後に6.45まで回復したものの、以後は急落し、39年に3.74まで落ちている。

戦後1947年の4.54から55年の2.37人、60年の2.00人、70年の2.13人、80年の1.7590年の1.54人、2000年の1.36と低下した後、2010年代に1.45とやや回復し、2020年に1.34に至っている。

1900年代はほぼ一貫して低下傾向にあったが、2000年代に入って横ばい状態にある。

2つのデータを比較してみると、次のようなトレンドが読み取れます。

❶進学率は18歳時点のデータではあるが、その後の経歴となるため、生活民全体の欲望水準が想定できる。

❷進学率と出生率の推移は見事に逆対称を示しており、相関係数が0.737と、強い負の相関が見られる。

1960年以前は進学率の漸増と出生率の急減、以降は進学率の急増と出生率の漸減が、明確に読み取れる。

学歴の上昇で出生率はなぜ低下していくのでしょうか。主な理由として、次の3つをあげることができます。

①高学歴者になるためには、教育費が増加し、父母の費用負担が増加する。

②高学歴者ほど自己実現欲望を拡大させ、子作りを敬遠する。

③高学歴者ほど判断能力を拡大させ、将来不安人生不安を感じる。

こうしてみると、進学率と出生率の関係には、人口容量が限界に近づくにつれて、生活民の上昇欲望や生涯意識が敏感になり、子作りを躊躇う、という関係が如実に表れている、と思われます。

これこそが、人口抑制装置が作動する仕組みの一つ、ともいえるでしょう。

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