2018年5月10日木曜日

C.メンガーの “価値”観

オーストリアの経済学者、C.メンガー(Carl Menger)もその著『一般理論経済学』(Grundsätze der Volkswirtschaftslehre,1923,八木紀一郎他訳,1982)の中で、商品の”効用”や”価値”について、次のように述べています(要旨)。


効用性とは・・・
「ある物が人間の欲望の満足に役立つという適正(Tauglichkeit)を示すことができるのは、もっぱら、その物の性質によってだけである。

けれども効用性(Nützlichkeit)というのは、何ら物の客観的な性質ではなくて(個体的もしくは種属的に)規定された事物の人間に対する関係すぎない。」

価値とは・・・
「価値は、財に付着したものでも、財の属性でもなければ、自立的な、それだけで存立している物でもない。

価値とは、具体的財が経済活動を行なう人々にたいしてもつ意義であり、この財がそれを獲得するのは、自分たちの欲望の満足いかんがその財(の支配)に依存していることを彼らが意識しているからである。
それゆえに、人間の意識の外には存在していない(後略)。」

価値とは、具体的な財または具体的な財数量が、われわれにたいして獲得する意義、自分の欲望を満足させることがこれらの支配に依存していることをわれわれに意識させることによって、それらがわれわれにたいして獲得する意義である。」

価格とは・・・
価格、いいかえれば交換において現れる財の数量は、たとえそれがわれわれの感覚に鮮明に訴えるために科学的観察のもっとも慣行的にとりあげられる対象をなしているにせよ、決して交換という経済現象にとって本質的なものではない

本質的なものはむしろ両交換者の欲望満足のための交換によってより良好な先慮がもたらされるということのうちに横たわっているのである。」

以上のように、メンガーは極めて主観主義的な「ねうち」観に立って、価値や価格は交換経済の本質的なものではないとし、アリストテレスからアダム・スミスに至る古典派経済学の【「あたひ=相等性」×「ねうち=相当性」】二元論を厳しく批判しています。

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