2015年2月15日日曜日

消費者とは誰のことか?

消費者(consumer)という言葉は何を意味しているのでしょう。辞書を引いてみると、「物資を消費する人」とか「商品を買う人」とか書かれていますので、「商品やサービスを購入して、消費する人」ということになるでしょう。


歴史的にみると、最も古くは16世紀末のイギリスにまで遡れる可能性があります。この時期までに、同国では一般人が購入できるような消費財が普及したことが確認されていますから、「消費者」の誕生もまた、ここまで遡れるのかもしれません(J.サースク『消費社会の誕生』)。




しかし、経済学の通説によると、消費者が誕生したのは、近代的な「市場社会」が成立した19世紀末だ、とされています。市場社会とは「あらゆるモノやサービスが商品として市場で取引されるようになっている社会」と説明されているからです。この市場社会では、ほとんどの生活財が生産者によって供給されていますから、需要者はそれらを市場から購入しなければなりません。つまり、消費者というのは「生産者の提供するモノやサービスを、市場を通じて購入し、消費する人」なのです。

このため、消費者という言葉には、最初から幾つかの問題がつきまとっています。例えば、生産者の提供する範囲内でしか選べない、②市場を通じて買うしかない、③一方的に消費するしかない、などの諸点です。

市場社会が未成熟で、生産側が市場を誘導していた時代には、供給不足の影に隠れて、これらの欠点はほとんど目立ちませんでした。しかし、市場社会が進展し、供給過剰が進むにつれて、欠点が次第に表面化し、その立場に不満を漏らす人々も現れるようになってきました。

そこで、改めて求められたのが「生活者」とか「生活人」という言葉ではないか、と思います。

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