2025年11月26日水曜日

生活学・新原論を応用する・・・生活行動

生活学・新原論の論考を整理し、応用分野を展開しています。

今回は「生活願望」と「ネウチ」を応用した「生活行動」論です。

前回述べたように、「生活世界構造」から生まれてくる「生活願望」と「ネウチ」を前提にすると、私たちの生活行動は大きく分けて、差異化、差元化、差延化、差汎化、差真化、差戯化、差識化の7つに分かれてきます。



縦軸・・・上方の「欲望」からは差異化」行動が、下方の「欲動」からは「差元化」行動が生まれます。

横軸・・・左下の「私欲」からは「差延化」行動が、右上の「世欲」からは「差汎化」行動が生まれます。

➂前後軸・・・右下の「真欲」からは「差真化」行動が、左上の「虚欲」からは「差戯化」行動が生まれます。

➃中央・・・「欲求」「実欲」「常欲」から生まれてくる「日欲」からは「差識化」行動が生まれます。


7つの生活行動の要点を整理しておきましょう。

差異化とは、【差異化行動とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲望」に対応して、モノやサービスのうえに言語やイメージなど、さまざまな「記号」を求める生活行動です。

事例:常欲レベルでは、作文や日記などの記述。虚欲レベルでは、お気に入りファッションの着用。真欲レベルでは、哲学書の講読など。

差元化とは、【差元化行動とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲動」に対応して、記号や機能をあえて外し、身体性や直感性、原始性や動物性などの「身分け」力を回復させる生活行動です。

事例:常欲レベルでは、温浴行動。虚欲レベルでは、夢や幻想などに戯れる行動。真欲レベルでは、自然現象を神や仏として信仰する行動など。 

差延化とは、【差延化行動とは何か?】で述べたように、供給者の差し出す「ききめ」、つまり「共効」を素材として用い、生活民一人ひとりが独自の「ねうち」、つまり「私効」を積極的に創りだす生活行動です。

事例:欲求レベルでは、生活民が自ら行う装飾・塗装行動。欲望レベルでは、メモ帳に自分の論理や理屈を書く行動。欲動レベルでは、自然現象を自ら信仰する行動など。

差汎化とは、【差汎化行動とは何か?】で述べたように、社会、価値、同調などを求める「世欲」に応えて、社会的なネウチや共同体的な価値を創りだす生活行動です。

事例:欲求レベルでは、生活基盤を求めて就業する行動。欲望レベルでは、大学の講義を聴講する行動。欲動レベルでは、夢や幻想を宗教化する行動など。

差真化とは、【差真化行動とは何か?】で述べたように、真実界から生まれてくる、儀礼や儀式、学習や訓練、自制や自律などを求める真欲に応えて、儀式や儀礼、勉学やトレーニング、自省法や内観法などを実行する生活行動です。

事例:欲求レベルでは、生活作法を学ぶ行動。欲望レベルでは、大学などで講義を学ぶ行動。欲動レベルでは、木像信仰を宗教化する行動など。

差戯化とは、【差戯化行動とは何か?】で述べたように、虚構界から生まれてくる弛緩、解放、遊興などを求める虚欲に応えて、虚脱・混乱、浪費・蕩尽、戯化・模擬、ゲーム・競争などを実行する生活行動です。

事例:欲求レベルでは、自作のスマホゲームを発信する行動。欲望レベルでは、黒板やディスプレィに戯画や漫画を描く行動。欲動レベルでは、頭の中で夢や幻想と戯れる行動など。

差識化とは、【差識化行動とは何か?】で述べたように、「欲求」「実欲」「常欲」が“認識”する、さまざまな有用性の中から、個人的に必要な「ききめ」を判断し、それらを求める生活行動です。

事例:欲求レベルでは、渇きを潤すため水を飲む行動。実欲レベルでは、衣食住など日常生活の基本となる行動。常欲レベルでは、日常的な生活習慣で暮らす行動など。

以上のように、生活学・新原論の新視点を応用すると、私たちの生活行動のさまざまな特性が、7つの角度から次々に浮かび上がってきます。

2025年11月12日水曜日

生活学・新原論を応用する・・・生活願望

生活学・新原論の論考を整理し、応用分野を展開しています。

今回は前回の「生活世界構造」を応用した「生活願望」論です。「生活世界構造」から生まれてくる「生活願望」と、その願望が求める「ネウチ」、の2つを整理していきます。



生活願望は、【生活願望・3つの軸から生まれる】で述べたように、生活世界構造の縦軸、横軸、前後軸の3つの軸から生まれてきます。

横軸からは【世欲⇔実欲⇔私欲】が生まれてきます(生活心理を横軸で考える!)。

世欲とは「世間的な評価を手に入れたいと思う願望」、実欲とは「日常的な生活の中で実効的な効果や成果を得たいと思う願望」、私欲とは「他人に何といわれようと純私的に満足したいと思う願望」の3つです横軸が作る3つの生活願望・・・世欲・実欲・私欲

縦軸からは【欲動⇔欲求⇔欲望】が生まれてきます(生活心理を考える・・・意識としての生活世界構造)。

欲動(driveとは「無意識次元で日常的な評価基準を超えた、動物的、衝動的な願望」、欲求(wantとは「生理的な不足状態を意識がとらえた願望」です。欲望(desireとは「記号の刺激を受けて誘導的に生まれる願望」です。

前後軸からは【真欲⇔常欲⇔虚欲】が生まれてきます生活心理・前後軸から考える!)。

真欲とは「言葉の示す目標に自らの行動を律しようとする願望」、常欲とは「真実と虚構を振り分けつつ、日々の暮らしを実現しようとする願望」、虚欲とは「言葉の示す目標を緩めて遊びや解放を味わおうとする願望」です。

➃3つの軸に交点では【実欲・欲求・常欲】が重なって、最も日常的な【日欲】が生まれてきます(七つの生活願望とは何か?)。

日欲とは「欲求をベースに実効性や虚実性を共に求める願望」です。

以上のように、私たちの生活願望は7つに整理できます。

これらの願望が求めるネウチを考えると、次のようになります(ネウチ観を考える!)。

横軸・・・世欲では「価値」、実欲では「効用」、私欲では「効能」がそれぞれ求められます。

価値(Valueとは「社会集団が共同主観として認めている共効(共同的有用性:social Utility)」、効用(Utilityとは「生活民が一人の個人として、社会的効用を受け入れる個効(個人的有用性:Individual Utility)」、効能(Effectとは「生活民が一人の私人として独自に創り出した私効(私的有用性:Private Utility)です。

縦軸・・・欲動では「差元」、欲求では「差別」、欲望では「差異」がそれぞれ求められます(差元化とは何か?差別化とは何か?差異化とは何か?)。

差元」とは「身体性や直感性、原始性や動物性などの“身分け”力を求める願望」、「差別」とは「新たな機能・性能・品質を求める願望」、「差異」とは「言語やイメージなど新たな“記号”求める願望」です。

前後軸・・・真欲では「差真」、常欲では「差識」、虚欲では「差戯」がそれぞれ求められます(差真化行動とは何か?差識化行動とは何か?差戯化行動とは何か?

差真」とは「儀式や儀礼、勉学やトレーニング、自省法や内観法などを求める願望」、「差識」とは「さまざまな有用性の中から、個人的に必要な“ききめ”を求める願望」、「差戯」とは「虚脱や蕩尽、戯化や模擬、ゲームや競争などを求める願望」です。

交点部・・実欲、欲求、常欲の交差する日欲では「差識」が求められます。

差識」はさまざまな有用性の中から、日常的に必要な「ききめ」を求める願望です。

以上のように、この原論の「生活世界構造」を基盤にすると、人間の求める、さまざまな「生活願望」と、その願望に対応する、ほとんどのネウチ、つまり生活上の期待形態がじわじわと浮かび上がってきます