「過去20年間、人口容量にゆとりが生まれているのに、人口は減り続けている。一体、どういうことなのか?」と、ご質問をいただきましたので、お答えしましょう。
一言でいえば、生活民全体の期待する生活水準、筆者が「総生涯期待値」と名づけているものが、人口容量を大きく超えているからです(筆者の「人減ブログ」では「総期待肥大値」と名づけていますが、当ブログでは生活民の視点で言い換えました)。
「期待」というのは、一人の生活民が生まれた時の生活容量を前提に、それぞれの心に抱く一生涯の生活水準です。自分の一生は、おそらくこの程度の生活水準で生きられるだろう、と思う、無意識次元の願望といってもいいでしょう。
この「生涯期待値」を全人口で集計した数値が「総生涯期待値(総期待値と略す)」ですが、次のような手順で計算できます。
①個人の生涯期待値=人口容量÷出生年の総人口 日本列島の人口容量は、戦前(~1944年)約7,500万人、戦後(1945年~)1億2,800万人と推定されるため、第二次世界大戦の前後で世代別の生涯期待値のベースが大きく異なる。 ②X年の同年齢別生涯期待値=個人の生涯期待値×X年の年齢別人口 この数値は、ある年に同年齢の人口集団が抱いている生涯期待値であり、時間の変化とともに人口ピラミッドを上昇していく。 ③X年の総生涯期待値(総期待値)=X年の各年齢別生涯期待値の合計 総期待値は、ある年における、全年齢集団の生涯期待値を集計したもので、人口数で表現され、総人口と比較される。 |
このような手順で、2015年の年齢別生涯期待値と総期待値を計算し、人口ピラミッドの上で比較してみると、下図のようになります。
①総人口の1億2,710万人に対し、総期待値は1億5,197万人と2,487万人ほど多く、人口容量を2,397万人ほどオーバーしている。 ②71歳以上の世代は戦前生まれのため、年齢別生涯期待値は年齢別人口とさほど差はない。 ③70歳以下の世代では、年齢別生涯期待値が年齢別人口を超え始め、とりわけ70~35歳の団塊・谷間・団塊二世・谷間二世の間で大きく超えている。 ④30歳以下の世代では、年齢別生涯期待値が急速に低下し、年齢別人口に接近している。 |
以上のように見てくると、人口減少が始まって数年、2015年には人口容量に90万人ほどゆとりが出ているにもかかわらず、依然として人口減少が進んでいるのは、総期待値が人口容量をはるかに超えているからだ、といえるでしょう。
人口減少の背景には、総人口数という数値を超えて、人生設計という、生活民一人一人の生活意識が潜んでいるのです。
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