2017年2月21日火曜日

「手作り」・・・生活民マーケティングの基本!

5つめの「手作り」は、「参加」や「変換」をさらに押し進め、生活民が生活財を”自分”の手で作る」行動です。

究極的には「自給自足」をめざすものですが、私たちが生きている、現在の市場社会ではほとんど不可能に近い行動です。

自分で水田へ行って田植えをし、収穫した籾を脱穀・精米してご飯を炊く、という単純な行為でさえ、今では容易なことではありません。スーパーでお米を買ってきて、炊飯器で手ずから炊き上げるのが精一杯の「手作り」です。

それゆえ、今時の「手作り」とは、購入してきた素材に何らかの形で自らの手を加え、最終的な生活財に作り上げる、という程度です。


言い換えれば、2~3割の素材に7~8割の手作りで目的のモノを作りだす、ということになるでしょう。

こうした視点から生活民の行動を見なおしてみると、衣食住はもとより、真面目(学習・儀礼など)や虚構(遊び・休養など)に到るまで、さまざまな先例が見つかります。



食生活分野ではもともと炊事や調理などでユーザーの手が入る比率が高かったためか、一旦は進んだ既製品化に対して、本来の自給行動が復活しつつあります。例えば、手作りのパン、味噌、豆腐、燻製、ビール、ワイン、日本酒、焙煎コーヒー、ハーブ、ヨーグルトなどです。

衣生活分野でも、自作ファッション、手作りアクセサリーから手作り化粧品、手作り手芸まで、自給的行動がすでに広がっています。

住生活分野では、セルフビルド住宅、手作り家具、手作りガーデニング、手作り工具など、いわゆるDIY行動が伸びつつあります。

真面目分野でも、手作り結婚式、手作り葬儀、手作り自費出版などで、手作りが進んでいます。手作り結婚式とは、ホテルや業者のお仕着せを嫌って新郎新婦が自ら演出する結婚式や披露宴であり、若いカップルの間で次第に伸びてきました。

虚構分野では、手作り海外旅行、デジタルクリエイター、手作りゲームなども急速に広がっています。

以上のように、生活財の購入が一般化している市場社会の中でも、「手作り」行動はなおも継続しているばかりか、デジタル化の進む中で少しずつ増殖しています。

とすれば、生活民に求められる「手作り」行動への対応力とは、次のように整理できるでしょう。

①消費市場から提供される商品やサービスの共効や個効にとらわれることなく、自らのアイデアと能力で自分だけの用途や私効を実現していく、積極的な姿勢が求められます。

②「手作り」の本質は、既存市場で通用している価値や共効にとらわれることなく、真に自らの望むモノやサービスを実現していこうとする「コト」能力ですから、日ごろから市場からの提供物を相対化する態度が求められます。

③コト次元の「手作り」目標を実現するためには、既存のモノやサービスを材料にして、自らの目標を実現していく「手作り力」が強く要求されます。

要するに、生活民の「手作り」力とは、自給自足」力と言い換えることができます。

かつて
「生活者」という言葉を初めて提唱した大熊信行は、生活の基本が「自己生産であることを自覚して」、「営利主義的戦略の対象としての、消費者であることをみずから最低限にとどめよう」とする人々だ、と述べていますが、この「自己生産」の基本こそ「手作り」である、といえるでしょう。

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