前回紹介した、3つの効用を、近代経済学の「効用」観と比較してみましょう。
●共効:一定の社会集団が共通に認めた有用性ですから「全部効用」に該当します。
●個効:個人が共効に基づいて認め、かつ実際に感じる有用性ですから、概ね「限界効用」に相当します。
●私効:私人が社会的な「共効」とはまったく別に、純私的かつ独創的に認める有用性であり、「限界効用」とは別の次元において、新たに「愛着効用」もしくは「執着効用」とでも名づけるべきものです。
「限界効用」は「全部効用(共効)」という有用性に従いつつ、利用の数が増えるごとに、個々のモノの有用性が次第に減少していくという効用です。効用の量的な変化においては「全部効用」との差を強調していますが、中味の差、つまり質的な差異についてはまったく配慮していません。
これに対し、「愛着効用」は個々のモノに対して、使用者が共効とはまったく別の有用性を見出し、自ら愛着を増していくという効用ですから、「全部効用」や「限界効用」とは異なる、質的な差異です。それゆえ、必ずしも逓減傾向を示すものではなく、私人の評価や気分によって増えたり減ったりすることもあります。
もし供給側が、このような「愛着効用(私効)」を需要側に提供しようとするのであれば、従来の「全部効用」や「限界効用」を前提にした経済学やマーケティング理論を大きく超えて、まったく新たな展開が期待できるでしょう。
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