2021年2月26日金曜日

コンデンシング・ライフ・・・虚実濃密行動へ向かって!

人口減少時代に広がる濃密型生活(Condensing Lifeでは、【コンデンシング・ライフを求めて!】で述べたように、4つのトレンドが強まってきます。

前回までの「感覚志向の見直し」に続き、3つめは「真実・虚構志向の見直し」で、真面目と遊びを共に充実させていくという方向です。

これまでの膨張型生活(Expanding Lifeでは、どちらかといえば、儀礼・学習・訓練などと遊戯・怠慢・弛緩などを共に拡大するという傾向が続いてきました。勉強も徹底的にやったら、遊びもとことん楽しむ、というトレンドです。

これに対し、これからの濃密型生活(Condensing Lifeでは、儀礼・学習・訓練などと遊戯・怠慢・弛緩などの、両方の密度を高める傾向が強まると思います。つまり、勉強の中身を深めるととともに、遊びの中身も濃くしていくという方向です。

どういうことなのでしょうか。私たちの生活構造に潜んでいる3つの軸をベースに、前後軸から説明してみましょう。

前後軸とは【前後軸が作る3つの生活願望・・・真欲・常欲・虚欲】で述べたように、真実虚構両極とする軸です。

私たちの生活世界をとらえる言葉の機能には、個々の単語がさまざまなモノやイメージを示す「基本的なメッセージ」と、幾つかの言葉がまとまって一定の約束事を示す「超越的なメッセージ」の、2つの次元があります。

後者がいわゆる「メタ・メッセージ」とよばれるもので、これによって、私たちの言語空間は、言葉の示すことをすべて真実とみなす「真実界」、逆に言葉の示すことはすべて虚構とみなす「虚構界」に分かれ、2つの狭間において、私たちが毎日暮らしている「日常界」が、真偽が曖昧なまま存在していることになります。

❶真実界(儀礼界)・・・言葉の示すことを全く疑わないで、すべてを真実とみなすメタ・メッセージの場。儀礼や儀式に代表される空間。

❷日常界・・・真実と虚構の二つの空間の狭間にあって、虚実の入り混じった場。日常の空間。

❸虚構界(遊戯界)・・・言葉の示すことはすべて虚構とみなしたうえで、その嘘を楽しむメタ・メッセージの場。遊戯やスポーツに代表される空間。

この3つの言語空間から、真欲(真実欲)日欲(日常欲)虚欲(虚構欲)の、3つの生活願望が生まれてきます。

真欲(真実願望)・・・真実界から生まれる願望であり、真実、儀礼、緊張、勤勉、学習、訓練、節約、貯蓄などを求めるもの。虚実をともに示す言葉の機能のうち、個々の言葉の意味とその対象の厳密な一致をめざそうとする願望であり、言葉の示すものを目標にして、自らの行動を厳しく律していこうとする。

社会的行動では儀式や儀礼、私的な生活行動では勤勉や学習、経済的行動では節約や貯蓄などがこれに該当する。

コトバを真実(マ)にするものであり、「マコト」を求める願望ということもできる。

日欲(日常願望)・・・真実と虚構、儀礼と遊戯、緊張と弛緩の間で、絶えず揺らめきつつ、営まれている日常界の中から生まれてくる願望。毎日の暮らしを実現していく、最も基本的な動機となって、現実的、具体的な性格を帯びている。

虚欲(虚構願望)・・・虚構界から生まれる願望であり、虚構、遊戯、弛緩、怠惰、遊興、放蕩、浪費、蕩尽などを求めるもの。個々の言葉の意味とその対象の関係を積極的にずらしていこうとする願望であり、言葉の示す目標を意識的に緩めて、自らの行動をあえて弛緩させ、遊びや解放を味わおうとする。

社会的行動では遊戯や遊興、個人的な生活行動では弛緩や怠惰、経済的行動では浪費や蕩尽などが該当する。

言葉を虚ろにする問意味では、「ソラゴト」あるいは「ザレゴト」を求める願望ということもできる。

以上のような前後軸に沿って、コンデンシング・ライフでは、外側への拡大よりも内側の充実を求める方向へ、生活民の軸足が向っていきます。その理由として、次の3つが考えられます。

①人口減少社会では必然的に情報化が進みます【トイレットペーパーはなぜ記号化するのか?】。これに伴い、SNSなどパーソナル情報化の過剰な進展で、「post-truth(脱・真実)」という現象が広がっていきます。

「客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」を意味していますが、こうしたトレンドに対抗するため、生活民の多くは自らの真実願望を改めて確かめることになります。

②人口減少社会では、無意識的に閉塞感が高まり、緊張や不満も増加してきますから、それらを緩和するため、一時的に怠惰へ逃げ込み、仕事や勉学を放棄して、娯楽や遊興に耽りたい、と思うようになります。

これらの生活願望が、人口が増加した成長・拡大期とは一味も二味も違う、成熟・濃密型の休み方や遊び方を求める需要を高めていきます。

③一方では真欲の、他方では虚欲の、それぞれの濃密化を求める狭間に立って、日欲そのものも自らの願望を改めて確認し、その充実化を求めるようになります。

以上のような要因で求心トレンドが強まってくると、生活民の行動は今後どのように変わっていくのでしょうか。

2021年2月15日月曜日

コンデンシング・ライフ・・・下降型生活行動へ向かって!

欲望➔欲望➔欲動へと生活願望の重点が移行していくと、生活民はどのような行動へ向かっていくのでしょうか。

3つの願望に対する生活民の行動もまた、供給側からのマーケティング戦略として、当ブログで幾度も述べてきた差異化、差別化、差元化と連動していますが、生活民の立場からみれば、次のように説明できます。

◆差異化・・・【差異化とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲望」に対応して、モノやサービスのうえに言語やイメージなど、さまざまな「記号」に載せることで、新規性や異質性を満足しようとする生活行動です。

基本的な行動としては、カラー化、デザイン化、ネーミング化、ブランド化、ストーリー化などを求めることになります。

◆差別化・・・【差別化とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲求」に対応して、モノやサービスに付加された、新たな性能や品質など、さまざまな「機能」によって、物質的な優位性を満足しようとする生活行動です。

具体的な行動としては、新機能化、高性能化、高品質化などを求めることになります。

◆差元化・・・【差元化とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲動」に対応して、記号や機能をあえて外すことで、身体性や直感性、原始性や動物性などの「身分け」力を回復させようとする生活行動です。

基本的な行動としては、シンボルや元型(アーキタイプ)で集合的無意識を再確認する象徴化、意識や本能を積極的に作り出す無意識化、五感や六感などを鋭敏にする感覚化が考えられます。

このように考えると、生活民の生活行動もまた、差異化➔差別化➔差元化へと向かうことになります。衣食住で考えてみましょう。

◆衣生活・・・欲望向け差異化(カラー、デザイン、ストーリーなどの有名ブランド衣料)から、欲求向け差別化(寒暖、重軽、着やすさなどの作業服系衣料)へ、さらに欲動向け差元化(肌ざわり、快感、快汗、思い出、習俗などルーツ系衣料)へ向かっていきます。

◆食生活・・・欲望向け差異化(三ツ星ブランド、有名シェフ、ブランド食品など)から、欲求向け差別化(調理簡単、便利・実用、腹持ち強化など)へ、さらに欲動向け差元化(食感、臭覚、陶酔、回帰性など)へ向かっていきます。

◆住生活・・・欲望向け差異化(超高層マンション、ブランド住宅など)から、欲求向け差別化(居住性能、利便性、改変性に強い低層マンションなどへ、さらに欲動向け差元化(体感性、快適性、無限性など)へ向かっていきます。

昨今の生活動向を振り返ると、以上のような下降型生活行動は、すでにさまざまな分野で進んでいます

2021年2月9日火曜日

コンデンシング・ライフ・・・コト欲望よりモノ欲動へ移行!

人口減少時代に広がる濃密型生活(Condensing Lifeでは、【コンデンシング・ライフを求めて!】で述べたように、4つのトレンドが強まってきます。

前回までの「個人志向の見直し」に続き、今回からは「感覚志向の見直し」です。

言語(理性・観念・記号)よりも感覚(体感・無意識・象徴)を重視するトレンドが強まってくるということです。

何故そうなるのか、私たちの生活構造に潜んでいる3つの軸、つまり、このブログで永々と展開してきた生活構造をベースに、今度は縦軸から説明してみましょう。

縦軸とは、【縦軸の構造・・・「身分け」と「言分け」】以下で述べているように、私たち人間の感覚(体感・無意識・象徴)言語(理性・観念・記号)を両極とする生活空間であり、この軸によって、3つの空間が生まれてきます。

①3つの生活空間とは、【身分け・言分けが6つの世界を作る!】で指摘した、6つの世界のうち、とりわけどっぷり浸かっている「モノ界(感覚界)」「モノコト界(認知界)」「コト界(識知界)」の3つです。

モノ界(感覚界:physis・・・私たち人間が自らの「身分け」能力によって、周りの環境世界の中から把握した世界。

モノコト界(認知界:gegonós・・・私たち人間が自らの「音分け(おとわけ)」能力によって、モノ界の中から把握できた対象と把握できなかった対象の、2つが行き交う世界。

―――従来の投稿では、「言分け」によってモノコト界(cosmos)と言語外界(chaos)が生じるように表現してきましたが、「言分け」能力を細分すると、その前段階として、音声でモノを区切る「音分け」があり、それによってモノコト界(gegonós)と言語外界(chaos)が仕切られていますから、上記のように加筆しました。・・・この件については、別途詳説する予定です。

コト界(識知界:cosmos・・・私たち人間が自らの「言分け」能力によって、モノ界の中から把握した世界。

②3つの生活空間からは、【縦軸が生み出す3つの生活願望・・・欲動・欲求・欲望】で指摘したとおり、欲動・欲求・欲望の生活願望が生まれてきます。

欲動(drive・・・言分けできなかったモノ界の対象が、無意識となって、夢や衝動などの形で噴出する願望。通常は無意識的な願望として、意識下に沈潜している。

欲求(want・・・身分けによって把握した生理状態が、音分け上に浮かび上がってきた時、その適否に対応しようとして発生する願望。生物としての身体が求めるものを意識に組み入れたうえ、要・不要を判断し、改めて有用性を追い求めるもの。

欲望(desire・・・言分けによって、コト界に生まれてくる願望。生理的な要・不要を超えた次元で、非生理的な〈記号〉を求めるもので、まったく非生物的、人工的な願望

以上のような上下軸に沿って、コンデンシング・ライフでは、コト界・欲望方向よりもモノ界・欲動方向へ、生活民の軸足が向っていきます。

その理由として、次の3つが考えられます。

①人口容量の限界下で人口を減少させていく人々は、上方志向のコトよりも、自らの体感に沿ったモノコトやモノの方へ関心を向けていきます。

②溢れるような情報環境の中で、表面的にはコト志向に追随はするものの、内面的にはそれに反逆するように、モノや感覚の世界を渇望するようになります。

③これまでの成長拡大型社会において、供給側がリードしてきた、カラー、デザイン、ブランド、ストーリーなどの差異化戦略に飽き飽きした生活民の多くは、アーキタイプ(元型)、ミソロジー、無意識、感覚、体感化などを見直すようになります。

こうした要因で下方トレンドが強まってくると、生活民はどのような行動へ向かっていくのでしょうか。