2024年8月28日水曜日

生活学・新原論Ⅴ:生活行動・・・7つを考える!

生活学・新原論の5番めのテーマは、生活民の行う「生活行動」です。

新原論Ⅳで述べた「生活願望」を前提にすると、生活民の「生活行動」が浮かんできます。

生活行動というと、家事や仕事、外出や帰宅、学校や公園などでの行動と思いがちですが、この原論が究明していくのは、もっと本質的な次元です。

生活行動の前提として、生活願望の構造を確かめておくと、下図に示したように、中央の「日欲」を囲んで、「欲望」と「欲動」、「私欲」と「世欲」、「真欲」と「虚欲」の、6つの生活願望が取り囲んでいます。

日欲」とは、「欲望」と「欲動」の間で、さまざまな不足分を補いたいという「欲求(want」を基礎に、「私欲」と「世欲」の間に浮かんだ実用的な「実欲」と、「真欲」と「虚欲」の間に生まれる「常欲」の、3つの願望を取りまとめた、最も日常生活的な生活願望です。

以上のような生活願望の構造を前提にすると、私たちの生活行動の種類が下図のように浮かんできます。



➀中央の「日欲」からは、「欲求」「実欲」「常欲」から生まれてくる、さまざまな対象に「差」をつけようという行動、つまり「差識化」が生まれてきます。

➁縦軸の「欲望」に対しては「差異化」が、「欲動」に対しては「差元化」が生まれてきます。

➂横軸の「私欲」に対しては「差延化」が、「世欲」に対しては「差汎化」が生まれてきます。

➃前後軸の「真欲」に対しては「差真化」が、「虚欲」に対しては「差戯化」が生まれてきます。

 

7つの生活行動とはいかなるものか、概要を整理しておきます。

差識化とは、「欲求」「実欲」「日欲」が“認識”する、さまざまな有用性の中から、個人的に必要な「ききめ」を判断し、それらを求める生活行動です。

差異化とは、【差異化とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲望」に対応して、モノやサービスのうえに言語やイメージなど、さまざまな「記号」に載せることで、新しさやユニークさなどを満足しようとする生活行動です。

差元化とは、【差元化とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲動」に対応して、記号や機能をあえて外すことで、身体性や直感性、原始性や動物性などの「身分け」力を回復させようとする生活行動です。

差延化とは、【差延化行動の3つの特性】で述べたように、供給者の差し出す「ききめ」、つまり「共効」を素材として用い、生活民一人ひとりが独自の「ねうち」、つまり「私効」を積極的に創りだそうとする生活行動です。

差汎化とは、【差汎化とは何か?】で述べたように、社会、価値、同調などを求める「世欲」に応えて、社会的なネウチや共同体的な価値を創りだす生活行動です。

差真化とは、【コンデンシング・ライフ】で述べたように、真実界から生まれてくる、儀礼や儀式、学習や訓練、自制や自律などを求める真欲に応えて、儀式や儀礼、勉学やトレーニング、自省法や内観法などを実行する生活行動です。

差戯化とは、【コンデンシング・ライフ】で述べたように、虚構界から生まれてくる弛緩、解放、遊興などを求める虚欲に応えて、虚脱・混乱、浪費・蕩尽、戯化・模擬、ゲーム・競争などを実行する生活行動です。

以上のように、私たち生活民の生活行動は、概ね7つの行動で構成されています。

それぞれの特性を考えていきましょう。

2024年8月10日土曜日

生活学・新原論:ネウチ観を考える!

生活学・新原論の4番めのテーマとして、生活民を取り巻くモノやコトのネウチを考えます。

主体である「生活民」については、生活主体を考える➔生活民!や【「生活民」とはどんな人?】などで述べていますが、市場社会を前提にした「消費者」や営利主義の対象を抑制するだけの「生活者」を大きく超えて、市場社会とは柔軟につきあう自律的な人間を意味しています。

このような生活民が、現代の市場社会とつきあっていくには、前回述べた生活願望の横軸の3つの願望、つまり〔世欲・実欲・私欲〕によって、これらの対象となるモノやコトなどへの満足感、つまり「ネウチ」を仕分けていかなければなりません。

3つの願望によって、生活民はどのようなネウチを求めるのでしょうか。

このテーマについても、【生活民の求めるネウチとは何か・・・】以下で延々と述べていますが、とりわけ関連の深いのは【「効用」とは何か・・・3つの定義】や【「限界効用」の限界!】です。

つまり、現代社会の市場機構を前提にすると、生活民は一方では、経済学でいう「価値」や「効用」というネウチを認めていますが、それだけでは終わらず、もう一方で独自のネウチ、「効能」を求めています。

それゆえ、生活民の視点に立つと、モノやコトのネウチは、【生活世界構造を言語機能で考える!】で述べた3つの生活世界、つまり〔社会界・間人界・個人界〕を前提に、それぞれの世界で求める、3つの生活願望、つまり〔世欲・実欲・私欲〕によって、次のように生まれてきます。

つまり、社会界の世欲の対象となるのが「価値:Value」であり、間人界の実欲の対象として「効用:Utility」が生まれてきます。そして、個人界の私欲の対象となるのが「効能:Effect」として位置づけられます。

整理すれば、【生活民は「価値」よりも「私効」を重視!】で示したように、次のようになります。

価値(Valueとは、社会界において、社会集団が共同主観として認めている「共効(共同的有用性:social Utility」です。

効用(Utilityとは、間人界において、生活民が個人使用を行う時に、一人の個人として、社会的効用を受け入れた「個効(個人的有用性:Individual Utility」です。

効能(Effectとは、私人界において、生活民が私的使用を行う時、一人の私人が独自に創り出した「私効(私的有用性:Private Utility」です。

このように生活民にとってのネウチを位置付けると、これを研究対象とする生活学の位置づけが、下図のように浮上してきます。

これを見ると、経済学とは価値と効用を、また家政学とは効用を中心に価値と効能を、それぞれ研究対象にする学問ですが、生活学は効能を中心にしつつ効用や価値を考えていく学問、と言えるでしょう。