言語6階層説の最終段階として、観念言語を取り上げてきました。
自然言語の網分けによる思考言語をさらに進め、人工言語の網分けによって生まれたのが観念言語です。
それがゆえに、圧倒的な利点を生み出すとともに、幾つかの欠点も潜むことになります。
どのような利点と欠点があるのでしょうか。
この件については、すでに【思考・観念言語の利点と限界を考える!】において詳述していますが、そこでは「思考言語」と「観念言語」を分けていませんでしたので、今回は観念言語に絞って、その特性を整理してみました。
観念言語は、自然発生的な地縁言語共同体に基盤を置く自然言語の応用から始まった思考言語を大きく超えて、専門分野や特異分野といった、特定の“理”縁言語共同体において新たに創造された人工的言語です。
それゆえ、思考言語と比べてみると、次のような特性が強まってきます。
①自然発生的な音声性や包括性が薄くなり、極めて人工的な構造となるから、議論や論文などで使用されるにつれて、目的性や正確性などの識知要素が濃くなる。 ②自然言語、交信言語、思考言語に比べ、多義性や曖昧性などが消えて、極めて純粋な意味が濃くなるから、意味も文法もともに取捨選択されて、明確かつ狭義的なものなる。 ③特定分野の専門家などの理縁集団によって創造され、使用されるケースが多くなるが故に、地縁発生的な要素が消えて、ほとんど“理”縁的な構造となる。 |
当ブログの視点からいえば、「身分け」が捉え、「識分け」が認めた現象の中から、特定の思考目的に見合うように「網分け」したモノコトだけを、シニフィエ(意味されるもの)とするように作り上げられたサイン(記号)であり、それらを繋ぐシンタックス(繋がり方)もまた、特定の目的の範囲内に定められている言語体系、といえるでしょう。
とすれば、この言葉には、次のような利点と限界が潜んでいます。
利点
❶狭義的で正確性が強く、特定の目的となる現象を理知的に理解し、的確に対応することができる。 ❷理縁的共同体に属する人々の間で、理解と利用が広まるにつれ、共同的な思考行動を拡大できる。 ❸現象を細分化した、個々の言語をネットワーク的に連結することで全体を把握し、システムとして対応できる。 |
限界
❶狭義的、あるいは一義的であるため、現象の一面しか表示(シニフィエ)できず、全体像を見失う恐れがある。 ❷専門家集団の内部でしか意味交換ができず、通常の地縁集団や日常集団などとの間では、言語として流通することができない。 ❸ネットワークに基づくシステム的な対応では、ラッピング状に分節化されたストラクチャーの全てを動かすことはできない。 (システム的対応とストラクチャー的対応の違いについては【システム(体系)でなくストラクチャー(構造)で捉える!】を参照のこと) |
以上のように見てくると、科学用語や数理記号などに代表される観念言語では、さまざまな社会現象はもとより、気候変動やパンデミックなどの自然現象についても、その対応力は必ずしも完璧なものではなく、常に浮遊しているものだ、と理解すべきでしょう。
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