科学用語や数理記号などに代表される観念言語の利点と限界を考えています。
これらの言語の最先端では、ChatGPTに代表される生成AI言語が絶大な注目を集めています。その効用については、すでにさまざまな見解が流布されていますが、限界についてはほとんど議論されていません。
AI言語には限界はないのでしょうか。それとも、どのような限界があるのでしょうか
AIで使われているプログラム言語は、次のような特性があります。
①典型的な観念言語 観念言語とは、「身分け」「識分け」「言分け」が捉えた事象を、「網分け」の理知によって精細に捉え直し、音声や記号などで表現した言葉です。 それゆえ、日常的に使われている自然言語としてはほとんど通用せず、電子信号を動かすためだけに使われる記号言語です。 ②高度な表象記号 表象記号とは、【表象記号で思考する!】で述べたように、物理記号、化学記号、学術記号など、表現対象を特定するため、意図的、固定的に創造された論理記号群です。 AI言語は、サイン(単語)もシンタックス(文法)も ともに「表象記号」で作られていますから、専門的知識人や特定社会集団などの“理”縁共同体において主に使用され、それ以外での使用はほとんどできません。 |
以上のような特性を持つがゆえに、プログラム言語は、思考や演算などには最適な記号ではありますが、もう一方では次のような限界も内包しています。
❶網分け言語の限界 典型的な網分け言語であるAI言語は、狭義的、あるいは一義的であるため、現象の一面しか表示(シニフィエ)できず、全体像を見失う恐れがあります。 【科学用語・・・数値絶対化から数値相対化へ!】で述べたように、AI言語には捨象された要素が多く、その意味(シニフィエ)には、さまざまな限界のあることを前提にしなければなりません。 ❷システム用語の限界 AI言語を繋いでいるシンタックス(文法)は、ネットワークを前提とするシステム的な連結方式ですから、日常言語によってラッピング状に分節化されたストラクチャーの全てを動かすことはできません。 【科学用語・・・システム化からストラクチャー化へ!】で触れたように、システム用語の「正確ではあるが狭意である」という限界を超えるためには、ストラクチャー用語への限りなき接近が求められるでしょう。 ❸生活世界把握の限界 AI言語は、「言分け」によって日常言語が使われているコト界の現象(知識)については、記号として表現することはできますが、「言分け」以前のモノコト界の現象(意識)については、ほとんど正確には表現できません。さらに「識分け」以前のモノ界の現象(無意識)については、まったく表現できません。 |
しかし、現実の世界では、ソト界、モノ界、モノコト界、コト界のさまざまな現象が飛び交っていますから、AI言語による世界把握は、極めて限定的であることを自覚すべきでしょう。
このように整理すると、最先端技術を支えるAI言語にも、幾つかの限界があることを前提に、応用・拡大すべき分野と管理・抑制すべき分野を明確に仕分けることが必要ではないでしょうか。
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