「Science:科学」という識知が集約・統一・統合化へと変化していく時、科学用語に求められる条件は3つある、と述べてきました。
今回は3つめの「システム化からストラクチャー化へ」。
【ル・ルネサンスは集約・統合的科学をめざす!】で述べたように、今や始まろうとしているル・ルネサンス時代には、科学用語を使った思考方式もまた、網の目状から風呂敷状への接近を検討しなければなりません。
システム思考で使われている用語(システム用語)の限界を超えて、ストラクチャー思考で使われている用語(ストラクチャー用語=日常言語)との接点をいかにして増やしていくか、という課題です。
なにゆえ、そのような課題が生まれるか、といえば、両方の用語には、次のような違いがあるからです。
システム用語
システムでは、思考対象となる全体像をさまざまな点で織りなす「網の目」として把握しており、個々の点の対象となった要素が、一つの言語や記号として使われている。 それゆえ、使われている言語や記号は、網の目の結節点の対象のみを意味(シニフィエ)しており、限定化・正確化された意味を示している。 その代わり、結節点の周辺の対象は省かれているため、網の目から漏れた部分は、全て捨てられている。 |
日常言語では、思考対象となる全体像をさまざまな切片による「風呂敷」状として把握しており、切り分けられた面状の示す要素が、一つの言語や記号として使われている。 それゆえ、使われている言語や記号は、切り分けされた面の全体を意味しており、その分、曖昧、あるいは大まかな意味となる。 その代わり、切り分けされた面の全ての対象を意味しているため、日常用語には切片の全てが含まれていることになる。 |
2つの用語がこのように異なる以上、システム用語の「正確ではあるが狭意である」という限界を超えるためには、ストラクチャー用語への限りなき接近が求められると思います。
筆者もまた、OR(Operations Reseach) やQC(Quality Control)による経営管理や、多変量解析、Econometrics、System Dynamicsなどによる社会・経済予測において、システム用語に何かと関わってきました。
その経験から言えば、数字・記号・数式などは、さまざまな現象の単純化によって思考の速度や精度を上げはしますが、他方では思考の結果もまた単純化されたシニフィエとなり、説明しようとすると、幾つかの前提を置いたうえでの、限られた情報だけを述べることになります。
こうした限界を乗り超えて、より効果的な説明を行うには、数値・記号化の過程で捨象された、幾つかの要素をもう一度見直し、適切に付加するような手順を加えることで、よりリアルな情報伝達をめざすべきだ、と思います。
例えば、次の3つのような方向です。
①思考結果を表現するシステム用語に、思考過程で捨象した要素を可能な限り復活させ、日常的なシニフィエに近づける。 ②システムの網目をできるだけ細かくして、結節点であるシステム用語の数を増やすことにより、表現対象をより多く汲み取れるようにする。 ③個々のシステム用語のシニフィエをできるだけ大きくし、ストラクチャー用語の表現対象に近づける。 |
以上のような修正によって、科学用語の一角をなすシステム用語にも、新たな次元へと進むチャンスが巡ってくるでしょう。
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