2024年11月29日金曜日

生活学・新原論Ⅴ-6:差戯化行動とは何か?

生活行動論の6番めは「差戯化」行動です。

差戯化とは、【コンデンシング・ライフ】で述べたように、虚構界から生まれてくる弛緩、解放、遊興などを求める虚欲に応えて、虚脱・混乱、浪費・蕩尽、戯化・模擬、ゲーム・競争などを実行する生活行動です。

生活体でいえば、後方に位置する生活願望「虚欲」に向けて、欲望・欲求・欲動次元や、私欲・実欲・世欲次元において、さまざまな生活行動を展開することになります。

具体的には下図に示したように、生活体の後側の虚欲次元において、縦軸の欲望・欲求・欲動と、横軸の私欲・実欲・世欲をクロスした、9つの空間向けの9つの行動として生まれてきます。


このうち「実欲・虚欲・欲求」以外の8つについては、すでに差異化、差元化、差延化、差汎化の各行動で説明しておりますので、改めて整理しておきましょう。

◆中段・・・世界認識の中核として識分けを行う次元であり、次の3つの差戯化行動が生まれてきます。

➀私欲・虚欲・欲求行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める識分け行動・・・例:生活者個人が自ら調合した絵の具によって、大理石模様や木目模様など、装飾的な仕上げを行うデコラティブペインティング(装飾塗装)(差延化の➀)。

➁実欲・虚欲・欲求・・・日常的な虚構の「効用」を求める識分け行動・・・例:日々の暮らしを楽しむため、さまざまな冗談や大法螺(おおぼらなどを交し合う(当行動のオリジナリティ)

③世欲・虚欲・欲求行動・・・個人的な虚欲行動を普遍化し、社会的な虚構「価値」を創り出そうとする識分け行動・・・例:生活民個人が自ら考案したスマホゲームを、ゲームサイトが取り上げ、より多くのユーザー向けに発信する(差汎化の➀)。

◆上段・・・「差異化行動」の上段3欄ですでに述べたように、以下の3行動は「差異化の差戯化」といえるものです。

➃私欲・虚欲・欲望行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める言分け行動・・・例:裏紙に詩作や創作などを書いて遊ぶ。黒板やディスプレィなどに戯画や漫画などを描いて遊ぶ(差異化の)(差延化の➃)。

➄実欲・虚欲・欲望行動・・・日常的な虚構の「効用」を求める言語行動・・・例:雑誌やディスプレィで小説を読んだり、ゲームに戯れる。美術館などで絵画に見たり、劇場で芝居を楽しみ、お気に入りのファッションを着る(差異化の➄)。

⑥世欲・虚欲・欲望行動・・・社会的な虚構の「価値」を創り出す言語行動・・・例:ネット上で好きになったブログを宣伝し、ヒット数を増やす。ネット上で超有名になった観光地を訪れ、有名ブランドのスーツを着る(差異化の⑥、差汎化の➃)。

◆下段・・・「差元化行動」の下段3欄ですでに述べたように、以下の3行動は「差元化の差戯化」といえるものです。

⑦私欲・虚欲・欲動行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中で夢や幻想などを描き、その中で戯れる行動。メタバースの中で音や風景などを楽しむ行動(差元化の➃、差延化の⑦)。

⑧実欲・虚欲・欲動行動・・・日常的な虚構の「効用」を求める身分け行動・・・例:個人的に脳内に描いた夢や幻想を、他者に話して共有しようとする行動。メタバース上の音や風景などを他者と共に楽しむ行動(差元化の➄)。

⑨世欲・虚欲・欲動行動・・・社会的な虚構の「価値」を創り出す身分け行動・・・例:夢や幻想の世界が多くの人間に共有しているものと理解する行動。 メタバース上の音や風景などは皆で楽しめるもの、と理解する行動(差元化の⑥、差汎化の⑦)。

以上のように、差戯化行動を生活体の後面への対応と考えると、言語・認識・感覚などで捉えた対象を全て「虚構」と見なそうとする生活行動が、日常次元はもとより、深層次元や表層次元にまで広がっていく実態が構造的に見えてきます。

これによって、「遊び」という生活行動の本質も見えてきますから、R.カイヨワが『遊びと人間』の中で提案した「遊びの4類型」もまた越えていきます。

2024年11月24日日曜日

生活学・新原論Ⅴ-5:差真化行動とは何か?

生活行動論の5番めは「差真化」行動です。

差真化とは、【コンデンシング・ライフ】で述べたように、真実界から生まれてくる、儀礼や儀式、学習や訓練、自制や自律などを求める真欲に応えて、儀式や儀礼、勉学やトレーニング、自省法や内観法などを実行する生活行動です。

生活体でいえば、前方に位置する生活願望「真欲」に向けて、欲望・欲求・欲動次元や、私欲・実欲・世欲次元において、さまざまな生活行動を展開することになります。

具体的には下図に示したように、生活体の前側の真欲次元において、縦軸の欲望・欲求・欲動と、横軸の私欲・実欲・世欲をクロスした、9つの空間向けの9つの行動として生まれてきます。


このうち「実欲・真欲・欲求」以外の8つについては、すでに差異化、差元化、差延化、差汎化の各行動で説明しておりますので、改めて整理しておきましょう。

◆中段・・・世界認識の中核として識分けを行う次元であり、次の3つの差真化行動が生まれてきます。

➀私欲・真欲・欲求行動・・・個人的な真実の「効能」を求める識分け行動・・例:ホテル提供のサービスメニューの中から、ユーザー自らが選別して構成するオーダー式の結婚式パーティー(差延化の③)。

➁実欲・真欲・欲求行動・・・日常生活の中で真実の「効用」を求める識分け行動・・・例:毎日の暮らしを支える、さまざまな礼儀作法を学ぶ(当行動のオリジナリティ)

③世欲・真欲・欲求行動・・・個人的な真欲行動を普遍化し、社会的な真実「価値」を創り出す識分け行動・・・例:個人的に営んでいた大木崇拝を、多くの隣人の間に広げ、新宗教として定着させていく(差汎化の③)。

◆上段・・・「差異化行動」の上段3欄ですでに述べたように、以下の3行動は「差異化の差真化」といえるものです。

私欲・真欲・欲望行動・・・個人的な真実の「効能」を求める言分け行動・・・例:メモ帳に思いついた論理や理屈を書く。黒板やディスプレィなどに発想した設計図を描く。心の中で祈念する(差異化の⑦、差延化の⑥)。

➄実欲・真欲・欲望行動・・・日常的な真実の「効用」を求める言語行動・・・例:書籍で哲学書を読んだり、ディスプレィ上で確実な情報を求める。コミュニティーの礼節に合った挨拶をする(差異化の⑧)。

⑥世欲・真欲・欲望行動・・・社会的な真実の「価値」を創り出す言分け行動・・・例:自ら抱いた関心を広げ、大学の講義で真理を求めたり、寺院や教会で教義に触れる(差異化の⑨、差汎化の⑥)。

◆下段・・・「差元化行動」の下段3欄ですでに述べたように、以下の3行動は「差元化の差真化」といえるものです。

⑦私欲・真欲・欲動行動・・・個人的な真面目さの「効能」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中で夢や幻想などを描き、それらを信じたり重んずる行動。メタバース上に現れた虚像を信仰すべき対象と思う行動(差元化の⑦、差延化の⑨)。

⑧実欲・真欲・欲動行動・・・日常的な真面目さの「効用」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中へ描いた事象や信仰などを、他人に話して共有しようとする行動。メタバース上に現れた虚像を他者に信仰すべきと勧める行動(差元化の⑧)。

⑨世欲・真欲・欲動行動・・・社会的な真面目さの「価値」を創り出す身分け行動・・・例:夢や幻想の世界に現れた神聖さや尊さは、多くの人間によって共有されている、と理解する行動。メタバース上に現れた虚像を神や仏として信仰する行動(差元化の⑨、差汎化の⑨)。

以上のように、差真化行動を生活体の前面への対応と考えると、言語・認識・知覚などで捉えた対象を全て「真実」と見なそうとする生活行動が、日常次元はもとより、深層次元や表層次元にまで広がっていく実態が構造的に見えてきます。

2024年11月13日水曜日

生活学・新原論Ⅴ-4:差汎化行動とは何か?

生活行動論の4番めは「差汎化」行動です。

差汎化とは、【差汎化とは何か?】で述べたように、社会性、価値、同調などを求める「世欲」に応えて、社会的なネウチや共同体的な価値を創りだす生活行動です。

前回の差延化行動で生まれた、新しい個人的「効能」を、より広く社会的な「価値」へと拡大していこうとする行動、ともいえるでしょう。

生活体でいえば、右の方に位置する生活願望「世欲」に向けて、欲望・欲求・欲動次元や、虚欲・常欲・真欲次元において、さまざまな生活行動を展開することになります。

具体的には下図に示したように、生活体の右側の世欲次元において、縦軸の欲望・欲求・欲動と、前後軸の虚欲・常欲・真欲をクロスした、9つの空間から、9つの行動として生まれてきます。それぞれの空間において、以下のような行動が想定できます。


◆中段
・・・世界認識行動の中核として
識分け行う次元であり、次の3つの差汎化行動が生まれてきます。

➀世欲・虚欲・欲求行動・・・個人的な虚欲行動を普遍化し、社会的な虚構「価値」を創り出そうとする識分け行動・・・例:生活民個人が自ら考案したスマホゲームを、ゲームサイトが取り上げ、より多くのユーザー向けに発信する。

➁世欲・常欲・欲求行動・・・個人的な常欲行動を普遍化し、社会的な日常「価値」を創り出す識分け行動・・・例:防寒用に利用された作業着を応用して、ユニークなオーバーとして販売する。

③世欲・真欲・欲求行動・・・個人的な真欲行動を普遍化し、社会的な真実「価値」を創り出す識分け行動・・・例:個人的に営んでいた大木崇拝が、多くの隣人の間に広がり、新宗教として定着していく。

 

◆上段・・・「差異化行動」の右側の上下3欄ですでに述べているように、以下の3行動は「差異化の差汎化」といえるものです。

➃世欲・虚欲・欲望行動・・・社会的な虚構の「価値」を創り出す言語行動・・・例:ネット上で好きになったブログを宣伝し、ヒット数を増やす。ネット上で超有名になった観光地を訪れ、有名ブランドのスーツを着る(差異化の⑥)。

➄世欲・常欲・欲望行動・・・社会的な日常の「価値」を創り出す言語行動・・・例:新聞、雑誌、書籍などの閲覧やそれらへの執筆や著述。展覧会やエキシビションなどの鑑賞や参観やそれらへの展示や参加など(差異化の③)。

⑥世欲・真欲・欲望行動・・・社会的な真実の「価値」を創り出す言語行動・・・例:自ら抱いた関心を広げ、大学の講義で真理を求めたり、寺院や教会で教義に触れる(差異化の⑨)。

 

◆下段・・・「差元化行動」の右側の上下3欄ですでに述べているように、以下の3行動は「差元化の差汎化」といえるものです。

⑦世欲・虚欲・欲動行動・・・社会的な虚構の「価値」創り出す身分け行動・・・例:夢や幻想の世界が多くの人間に共有しているものと理解する行動。 メタバース上の音や風景などは皆で楽しめるもの、と理解する行動(差元化の⑥)。

⑧世欲・常欲・欲望行動・・・社会的な日常の「価値」創り出す身分け行動・・・例:個人が五感で捉え、識分けした世界の意味やイメージなどは、人間集団に共通していると理解する行動。メタバース上に現れたイメージや音声などは、誰にも共通していると理解する行動(差元化の③)。

⑨世欲・真欲・欲動行動・・・社会的な真面目さの「価値」創り出す身分け行動・・・例:夢や幻想の世界に現れた神聖さや尊さは、多くの人間によって共有されている、と理解する行動。メタバース上に現れた虚像を神や仏として信仰する行動(差元化の⑨)。


以上のように、差汎化行動を生活体の右側への対応と考えると、純私的な生活行動が集団的な認知行動へと伝播していくプロセスが、日常次元はもとより、深層次元や表層次元にまで及んでいくことが明確になってきます。