2015年2月11日水曜日

生活者と市場社会の矛盾を超える!

前回、「立場は異なるが、すべてに共通するのは、消費者とは市場社会の内にとどまる人であり、生活者とは市場社会を超えた人なのである」と、15年前の主張を紹介しました。

この文意からいえば、生活者とマーケティングは相いれないもの、ということになります。生活者は「市場社会を超えた人」であり、マーケティングは、その言葉通り「市場行為」、つまり「市場社会を前提にした企業行為」である以上、両者は明らかに矛盾した概念です。

しかし、あえて「生活学マーケティング」という、一見矛盾したブログを始めたのは、私たちの生きている世界が市場社会そのものであり、その生活を構成している、ほとんど全てのモノやサービスは、市場からの供給を前提にしているからです。いいかえると、私たちは「市場」を否定しては、暮らしを構成できない社会に生きている、ということです。

とはいえ、生活者の生活欲求と企業の差し出す商品やサービスの間には、限りなく深いギャップがあります。消費者を脱した生活者は、市場の差し出すモノやコトを、そのまま受容しているわけではありません。さまざまな不満を抱きつつ、妥協しているにすぎません。
他方、供給者である企業の側も、生活者の求めるモノやコトを、すべて的確に把握しているとは限りません。詳細なマーケティングリサーチや市場分析などを行いつつも、既存の市場概念に基づいて、新商品や新サービスを提案しているだけです。

生活学マーケティングとは、このギャップを埋めるものです。生活者の求める、多様な生活願望に応えるため、企業としてできることは何かを追及していきます。一方では、市場社会を利用しつつ、生活者が自らの生活願望を実現していくにはどうすればいいのか。他方では、市場社会を通じつつ、供給者がどこまで生活者の願望の隅々にまで到達できるのか、を検討していきます。

生活者と市場社会の矛盾、それがあればこそ、従来とは全く異なるマーケティングの方向が見えてくるのです。

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