ハイテクツールの最初は、今や革命的情報ツールとして、世間の注目を集めている生成系AIをとりあげます。
「Chat GPT」に代表される対話系AIを、生活構造の中に位置付けると、どうなるのでしょう?
私たちの生活構造については、【「生活体」の3つの軸】で述べたように、①感覚・言語軸(縦軸)、②個人・社会軸(横軸)、③真摯・虚構軸(前後軸)の、3つの軸による立方体で構成されています。
対話系AIを、この3軸の中に位置付けてみましょう。
①感覚・言語軸・・・体感的・感性的な世界と記号的・言語的な世界を両端とする軸
当ブログでは、この軸を縦軸【縦軸の構造・・・「身分け」と「言分け」】と名づけ、その構造を様々に検討して、【生活世界構造図】に至っています。
この図の中に対話系AIを位置付けると、次のような特性が浮かんできます。
➊対話型AIで交わされる言語は、日常・交信言語と思考・観念言語が基本である。 ❷詩や文学などの対話では、深層・象徴言語が使われると考えがちだが、その言語は本来の深層・象徴言語ではなく、日常・交信言語の中から選ばれたものにすぎない。 ❸対話型AI言語は、既存の言語集積の中から選択された言葉であり、自らモノコト界、モノ界、ソト界へ降りて、新たに創り出された言葉ではない。 |
②個人・社会軸・・・私的・個人的な世界と集団的・社会的な社会を両端とする軸
当ブログでは、この軸を横軸【横軸の構造・・・ラングとパロール】と名づけ、その構造を【言語行動が作る3つの世界】で表しています。
この図の中に対話系AIを位置付けると、次のような特性が浮かんできます。
➊対話型AIで交わされる言語は、ラングとパロールⅠ、つまり社会界と間人界の中で行われる。 ❷対話型AIで使われる単語(シニフィアン)の意味(シニフィエ)は、社会界で固定されたものである。 ❸対話型AIで使われる文法(シンタックス)もまた、社会界で固定されたものである。 ❹それゆえ、新たな意味を生み出したり、新たな使い方を作り出す活動、いわゆる「差延」行動は起こりえない。 |
③真摯・虚構軸・・・目標的・真摯的な世界と遊戯的・虚構的な世界を両端とする軸
当ブログでは、この軸を前後軸【前後軸が作る3つの生活願望】と名づけ、その構造を【前後軸が作る3つの世界】で表しています。
この図の中に対話系AIを位置付けると、次のような特性が浮かんできます。
➊対話型AIで交わされる言語は、日常界で使われている真偽混在の言語である。 ❷対話型AIで交わされる言語は、基本的に虚構であることを前提にして使われている。 ❸対話型AI言語が真実的なことを述べたとしても、その中に含まれている虚構部分を見分けなければならない。 ❹それゆえ、対話型AI言語は遊戯やシミュレーションなどには最適だが、儀礼や信仰などには不適である。 |
以上のような特性から推察すると、対話型AIによって生み出される、新たな対話現象は、あくまでも表層的、固定的、虚構的な次元に留まるもので、深層的、創造的、真相的な次元には到底届かないもの、と考えるべきではないでしょうか。