コンデンシング・ライフを個人志向、感覚志向、真実・虚構志向の3面から考えてきました。4つめは3志向が交差する「日常・平常生活の濃縮化」という側面です。
日常・平常生活は、私たちの生活構造の中心部分であり、モノコト界、間人界、日常界の3つが重なる生活空間です。
それぞれの世界が意味するものを、空間の特性、発生する生活願望、起動する生活行動の3面から、もう一度確かめておきましょう。
❶特性・・・私たち人間が自らの「音分け(おとわけ)」能力によって、モノ界の中から把握できた対象と把握できなかった対象の、2つが行き交う世界。認知界(gegonós)ともよべる。 ❷欲求・・・身分けによって把握した生理状態が、音分け上に浮かび上がってきた時、その適否に対応しようとして発生する願望(want)。生物としての身体が求めるものを意識に組み入れたうえ、要・不要を判断し、改めて有用性を追い求めるもの。 ❸差別化・・・生活願望の「欲求」に対応して、モノやサービスに付随する性能や品質など、さまざまな「機能」によって、物質的な満足を得ようとする生活行動。 |
②間人界
❶特性・・・言語能力のラングを前提に、私たち人間がお互いに会話、実践、交換などの〈交流〉を行っている日常的な空間。 ❷実欲・・・家事、就業、勉強など日常的な生活の中で、実効的な効果や成果を得たいと思う生活願望。 ❸差別化・・・「実欲」を満たすため、生活民が共効に基づいて認める有用性「個効」を個人的に実現しようとする生活行動。 |
③日常界
❶特性・・・真実と虚構の2つの空間の狭間にあって、虚実の入り混じった、日常の空間。 ❷日欲・・・真実と虚構、儀礼と遊戯、緊張と弛緩の間で、絶え間なく揺らめいている日常界の中から生まれてくる生活願望。毎日の暮らしを実現していく、最も基本的な動機として、現実的、具体的な性格を帯びている。 ❸差別化・・・「日欲」を満たすため、虚実を遠ざけて、ひたすら現実を沿い合おうとする差別化行動。 |
以上のように、3世界と3願望が交わる日常界では、生活民の「日常・平常」な生活が営まれており、そこでの生活行動は「差別化」が基本になります。
「差別化」というと、従来のマーケティングでは「他の商品とは異なる機能・性能・品質で消費者に訴求する戦略」を意味していますが、ここでいう「差別化」とは「生活民各人が自分自身の生活を組み立てるために行う選択」を意味しています。
❶欲求による差別化・・・生活民各人が自分の体感が求める欲求の強弱を意識的に判断して、個人的に選択する生活行動。 ❷実欲による差別化・・・多くの生活民が認めている「共効」の中から、自分にとってふさわしい有用性を選択し、個人的に実現しようとする生活行動。 ❸日欲向け差別化・・・虚実の入り混じった日常空間の中で、一つ一つできるだけリアルな事象を選択しようとする生活行動。 |
要約すれば、生活民の差別化行動とは、欲求・実欲・日欲に基づきつつ、さまざまな有用性の中から物質的な「ききめ」を個人的に選択し、それら実現しようとする生活行動といえるでしょう。
このような差別化行動が、コンデンシング・ライフでは肥大化よりも濃密化へ向かっていきます。
図に示したモノコト界において、差別化行動とは、モノ界や個人界の比重増加に影響を受けつつ、真実界と虚構界の濃縮化にも対応して、その重心を左下の方向へ移していくということです。
新たな差別化行動とは、どのような形になるのでしょうか。
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