2020年5月11日月曜日

言語化とはいかなる行為なのか?

ものがたり」とは、感覚が捉えた「もの」(身分け次元)を、予め定められた枠組みの「かたり」によって“言語”化言分け次元)していく行為だ、と述べてきました。

それでは、“言語”化とは、いかなる行為をいうのでしょうか。

言語」については、先学諸賢はもとより、専門書や辞書などで幾つかの定義がありますが、筆者は「音声とさまざまな対象を、体感的あるいは恣意的に結びつけ、それぞれを区別する、人間独自の心理的行為」と定義しています。

そのうえで、「一つの言葉は、初めは多分、純個人的に使われていたものの、集団内部で共有されるにつれ、やがて社会的慣習として存立するようになった」と推定しています。

このように定義と経緯を定めたうえで、言語の表面的、形態的な区別を考えると、定説が述べているように、音声を媒介とする「音声言語(話し言葉)」と、文字を媒介とする「文字言語(書き言葉)」に分けられます。

しかし、より本質的、内容的な区別としては、「表層言語」と「深層言語」に分けられるようです。前者は音声記号や活字記号など「表層意識において理性が作り上げる言語」であり、後者は無意識をとらえる「深層意識的な言語」です(井筒俊彦『意識と本質』)。【 “象徴”力の向上でウソとマコトを見分けよう!:2017年7月19日】参照。

さらに表層言語は日常的に会話する「日常言語」と、頭の中で観念や概念として使用している「観念言語」に分けられますから、結局のところ、私たちの言語行為は次の3つに分類される、と思います。

表層言語(観念言語)・・・観念や概念など抽象化された記号として使用している言葉。

日常言語(交信言語)・・・会話や文通などで日常的に使用している言葉。

深層言語(象徴言語)は、日常言語以前のイメージ(元型)やオノマトペ(擬声語)など、無意識的な"象徴"に載って表される言葉。

このうち、深層言語には、象徴無意識感覚の3次元があります。【差異化を超えて差元化へ:2016年4月19日】参照。



3次元は次のように説明できます。

象徴=神話次元・・・既成の言語体系が形成される以前の未言語段階、あるいは前言語段階の意味体系であり、その典型が「元型」である(C.G.ユング『人間と象徴』)。【「象徴」を応用する!:2016年4月9日】。

無意識=未言語次元・・・通常は意識下の暗い深淵に潜んでいるが、時折、夢や幻想などイメージの形をとって噴出する意味体系。

感覚=体感次元・・・個々人の身分け能力、つまり五感や六感などの感覚、いわゆる本能が直観させる意味体系。 

いずれも表層・日常的な言葉になる前の、いわば「もやもや」とした、潜在的な言語段階ですが、これらを「表層・日常言語」化する行為もまた、私たちの生活行動のさまざまな分野で行われています。その一つが「物語」なのでしょう。

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