2015年12月26日土曜日

差異化と差元化を比較する!

これまで生活学の視点から、マーケティングの7つの戦略について述べてきましたので、ここからは各戦略の優劣について考えていきます。

最初に「差別化」の上下に位置する「差異化」と「差元化」、つまり、私たちの生活願望の中の、「欲求」の上下に潜む「欲望」向けと「欲動」向けについて、その利害を比較してみましょう。

 
差異化とは何か、差元化とは何か、初めに両方の定義を改めて確認しておきます。
 
化戦略とは何か。
  1. 生活球の上部に位置する生活願望「欲望」に向けて、商品やサービスのうえに、言語やイメージなど、さまざまな「記号」を載せ、新規性や異質性を訴求する戦略。
  2. 「モノ」の上に「コト」、つまり「記号」を乗せることで、言葉によって掻き立てられた「欲望」をキャッチしようとする戦略。
  3. 基本的な手法は、カラー化、デザイン化、ネーミング化、ストーリー化など。
 

化戦略とは何か。

  1. 生活球の下部に位置する生活願望「欲動」に向けて、商品やサービスから言葉やイメージなどの「記号」をあえて外し、身体性や直感性、原始性や動物性などの「身分け」能力を回復させようとする戦略。
  2. 「モノ」の上に載った「コト」、つまり「記号」を外すことで、言葉によって掻き立てられる以前の「欲動」へ向かって、あえて接近しようとする戦略。
  3. 基本的な手法は、象徴・神話化、無意識・未言語化、感覚・体感化など。

2つの戦略を以上のように定義した上で、それぞれの利点・欠点を考えてみましょう。


2015年12月14日月曜日

差戯化の4つの戦略

虚構願望を的確にとらえ、ユニークな緩み方や遊び方を開拓し、斬新な虚構界を築いていくには、これまでの怠惰や遊戯対応を超えた、より的確なマーケティング戦略が必要です。

そこで、対象となる虚構願望の中身を大別してみると、次の4つの戦略が浮かんできます。


第1は浪費・蕩尽戦略目標や目的を意図的に放棄して、気の向くままに行動することを意味します。私的な生活次元での無為や惰性などの「怠惰」戦略を基盤にして、経済的な生活次元では無駄づかいや蕩尽などの「浪費」戦略が、社会的な生活次元では冗費や乱費やなどの「蕩尽」戦略が生まれてきます。

第2は虚脱・混乱戦略。陶酔、酩酊、トランポリンなど虚構空間の中で私的な錯乱状態を求める「めまい」戦略を基盤にして、温泉や気晴らし旅行など体感次元の発散を求める「虚脱」戦略や、遊園地やカーニバルなどの設備で集団的に虚脱空間を作りだす「混乱」戦略が生まれてきます。

第3は戯化・模擬戦略仮面遊びや着せ替え遊びなどの虚構ルールへ私的に戯れようとする「私戯」戦略を基盤として、娯楽やレジャーなど日常的な虚構を実行しようとする「戯化」戦略や、映画、演劇、音楽、美術など虚構空間を集団的に作りだそうとする「模擬」戦略が生まれてきます。

第4はゲーム・競争戦略。ギャンブルやくじなどの虚構ルールへ私的に挑戦しようという「賭け」戦略を基盤として、囲碁や麻雀などの虚構ルールへ日常的に戯れる「ゲーム」戦略や、競技や競演など虚構ルールへ集団的に戯れようとする「競争」戦略が生まれてきます。

差戯化戦略では、以上の4つの方向のそれぞれに応えて、まったく新たな商品やサービスを作りだしていく手法はもとより、日常願望や真実願望向けの商品やサービスを虚構願望に向けて転換してしまうといった、幾つかの手法が必要になるでしょう。

2015年12月7日月曜日

虚構願望はなぜ高まるか?


虚構願望の高まる背景には、やはり人口減少社会があります。

人口が減るのは、1億2800万人の人口を可能にしてきた「人口容量」の壁に突き当たったためですが、この壁を超えるには数十年かかりますから、それまでの間は閉塞感が高まってきます。

閉塞感が高まれば、緊張や不満も高まりますから、それらを緩和するため、一時は怠惰に逃げ込んだり、仕事や勉学を放棄して、娯楽や遊興に耽りたい、と思うようになります。

これらの生活願望が、人口が増加した成長・拡大期とは一味も二味も違う、成熟・濃縮期独特の休み方や遊び方を求める需要を高めていきます。

同じように人口減少期であった江戸中期にも、虚構願望がかなり高まっていました。

農村から離脱した無宿人博徒となって増加し、各地に賭博場を増やし、賭場主である親分同志の闘争まで引き起こしました。


都市でも多くの奉公人が無断で店を抜け出し、群れをなして伊勢神宮へ参詣する「お蔭参り」が数十年ごとに起こっています。東国や東北からの参詣者たちは、江戸、秋葉山、津島などに詣でてから伊勢神宮に参り、さらに吉野、高野山、奈良や金毘羅、大坂、京都、善光寺にまで、足を延ばしていました。
 他方、新たな遊も広がっています。

宝永から天保期にかけては、江戸歌舞伎の黄金時代となり、二代目市川団十郎の『助六由縁江戸桜』から、四世鶴屋南北の『東海道四谷怪談』まで、新たな大衆娯楽が確立しました。

 
 
戯作でも、談義本、洒落本、読本、黄表紙、滑稽本、人情本、合巻など、大衆向けの娯楽出版物が数多く出版されています。とりわけ読本では、山東京伝曲亭馬琴が悪、美、怪奇などを表現し、多くの読者を獲得しています。


また絵画では、多色刷りの浮世絵が、天明から寛政期に鳥居清長、喜多川歌麿東洲斎写楽、歌川豊国らの優れた絵師を輩出して黄金時代を迎えました。続く化政・天保期には、葛飾北斎や歌川広重の、芸術性と大衆性を統一した高度な版画や、渓斎英泉や歌川国貞の、退廃的でグロテスクな作品に移行しています。


このように江戸中期の遊びには、形態的には新しい集団性が育まれ、また内容的には夢幻、怪奇、爛熟、退廃的な趣向や、洗練、風刺、洒落、さらには停滞を打破しようとする批判精神まで絡みあっています。

同様の傾向は今後の日本でも次第に強まっていきます。人口が減少するにつれて、新たな楽しみや遊びへの需要が高まり、人生85~90歳という長寿化も重なって、これまで以上に遊びや怠惰への願望を高めていくことになるでしょう

2015年11月29日日曜日

差戯化とは何か?

7番目のマーケティング戦略は「差戯化」です。

差戯化は、
真摯・虚構軸の上の虚構界から生まれてくる虚構願望に応えて、新しいネウチを創り出し、商品やサービスのうえに載せていく手法です。

虚構界とは、言葉の示すことをすべて虚構とみなしたうえで、その嘘を楽しむ場であり、いわゆる「ザレゴト」「アソビゴト」「カケゴト」「ソラゴト」「タワゴト」などが浮遊する空間です。

ここから生まれてくる虚構願望は、言葉の示す目標を意識的に緩め、自らの行動をあえて弛緩させ、遊びや解放を味わおうとします。

それゆえ、この願望には、言葉の持つ規範性を無視して、怠惰、虚無、浪費、蕩尽などへ向かっていく消極的な方向と、言葉の虚構性を認めて、遊戯、ゲーム、模擬、混乱などを楽しもうとする積極的な方向の2つがあります。

前者の例が個人的次元の怠惰や惰性、経済的次元の浪費や蕩尽などであり、後者の例が社会的次元の遊戯や遊興スポーツやエンターテインメントなどです。

こうした虚構願望は、今後の社会でますます高まると予想されますが、その背景には一体何があるのでしょうか。

2015年11月25日水曜日

差真化の4つの戦略

真実願望が広がれば、差真化手法への期待はますます高まってきます。その方向を考えてみると、対象となる真実願望の中身に応じて、次の4戦略が浮かんできます。


第1は自制・自律戦略。望ましい自己を実現しようという目標(言語規範)をめざして、自省や内省を深める「内観」戦略を基礎に、行動や生活を制御しようとする「自律」戦略,自らの将来を描こうとする「向上」戦略が期待されます。

第2は勉学・教育戦略。将来の知的能力を築こうという目標(言語規範)をめざして、自ら学ぼうとする「自習」戦略をベースに、家庭や職場などでも勉学の機会を増やそうとする「勉学」戦略、さらには学校教育や専門教育などを利用して、知力を向上しようとする「教育」戦略が考えられます。

第3は修行・訓練戦略。自らの身体的・精神的能力を高めようとする目標(言語規範)をめざして、トレーニングや修練を行おうとする「自強」戦略をベースに、より強く訓練や鍛錬、節度や摂生を自らに課そうとする「修行」戦略、さらには学校やトレーニング機関で体力を向上しようとする「訓練」戦略が生まれてきます。

第4は作法・儀式戦略。望ましい公共生活を作りだそうという目標(言語規範)をめざして、わがままやエゴを抑制しようとする「自戒」戦略をベースに、マナーや家庭慣習などを守りたいという「作法」戦略、季節儀礼や通過儀礼などを守ろうとする、新たな「儀式」戦略が生まれてきます。

今後のマーケティングでは、以上の4つの願望のそれぞれに応えていく戦略が必要になるでしょう。

2015年11月16日月曜日

真実願望がなぜ高まるのか?

差真化は生活者の真実願望に応える戦略です.

真実願望は、今後の社会でますます高まっていくと思われます。なぜなら、現代社会と同じように、人口が減少し続けた時代には、真実願望が広がっていたという歴があるからです。

一つは新たな道徳感の出現。例えば人口が減り続けた江戸時代中期には、停滞する
人口容量のもとで、膨れ上がった自意識を調整するため、さまざまなしくみが生まれています。

例えば、新たな道徳学として生まれた石門心学。1729年(享保14)、京都の商家に奉公しつつ、儒教を学んだ石田梅岩は、町人の日常生活を基礎にしたうえで、神道、儒教、仏教、老荘思想なども取り入れ、庶民向けの倫理学を生み出し、門弟の養成に努めています。

あるいはゴミ戦争の終焉。江戸前期には頻発していた、町内のゴミを夜間に隣町へ放棄し、翌日には隣町が逆襲するというゴミ戦争も、享保期以降になると、幕府公認のごみ捨て請負人組合が収集し、燃料芥、肥料芥、金物芥に分けて湯屋、農家、鍛冶屋などは売却して、再資源化と費用低減の両面を図という、見事なルールができあがってきます。

こうした作法やマナーの拡大は、同じように人口が減少していた中世後期のヨーロッパにも見られます。この時代には、父親が子どもに公私の生活心得を説く「ユルバンの訓戒」(13世紀)や「食卓の心得」(13~15世紀)といったマナー書が広く普及しています。

もう一つは向学志向の上昇。江戸中期には、武士階級を対象にした藩校はもとより、町人や百姓の子弟を対象にした寺子屋郷学も増加し、全国的に識字率が急上昇しています。

これに連動して簡易な刷物技術が拡大し、学問、思想、道徳に関わる「書物」が大量に出版され、新たな学問も進展しています。

享保期に解禁された西洋本草学や蘭学は次第に発展して、田沼時代になると、『解体新書』『蘭学事始、『蘭学揩梯』『ハルマ和解』などが出版され、さらに寛政期以降は医学系、物理・化学系、天文暦学系、世界地理学系、西洋事情系などに分かれて急速に広がっています。

このように、人口減少期は作法や儀礼、勉学や鍛錬が重視される真実の時代になります。


すでに現代日本でも、エスカレーターの片側乗りトイレやキャッシュディスペンサーの一列待ち、禁煙区域に拡大など、新たな作法やマナーが生まれていますが、これらが浸透していけば、従来の社会ルールに代わる、新たな「公共性」として世の中に定着していくでしょう。

一方、少産・長寿化の進行に伴って、各種の「脳トレ」四国八十八カ所巡礼など、新たな勉学やトレーニングも流行しはじめていますが、こうした動きはやがて公共的な教育システムの改革にまで波及していくでしょう。

今後、人口減少が進むにつれて、世の中にはゆとりが生まれてきますから、新しい作法や儀礼がさらに広がり、学問や鍛錬をめざす気風もいっそう重視されるようになります。これこそ、今後、真実願望が拡大する、社会的な背景といえるでしょう。 

2015年11月5日木曜日

差真化とは何か?

6番目のマーケティング戦略は「差真化」です。

差真化は、
真摯・虚構軸の上の真実界から生まれてくる真実願望に応えて、新しいネウチを創り出し、商品やサービスのうえに載せていく手法です。

私たちの生活体を創り出している言葉には、真実を示す機能とともに、真っ赤な嘘を示す機能も潜んでいます。


だが、このままでは不安になりますから、私たちは予め、言葉が真実を保証する場と、言葉が虚構であることを示す場を用意して、それぞれの中で言葉を使い分けています。

前者の、言葉の示すことを全く疑わないで、すべてを真実とみなす場が
真実界であり、その中で私たちは儀礼、緊張、勤勉、学習、訓練、節約、貯蓄などを行なっています。つまり、「マコト」「ナライゴト」「サダメゴト」などです。

他方、後者の、言葉の示すことをすべて虚構とみなしたうえで、その嘘を楽しむ場が虚構界ですが、ここでは遊戯、弛緩、怠惰、放蕩、遊興、浪費、蕩尽などを行なっています。いわゆる「ザレゴト」「アソビゴト」「カケゴト」などです。

2つの世界のうち、真実界のマコト、ナライゴト、サダメゴトなどを求める真実願望に向けて、積極的に働きかえる方法が差真化です。

つまり、差真化戦略とは、真摯・虚構軸上の真実界から生まれてくる、儀礼や儀式、学習や訓練、自制や自律などを求める真実願望に応えて、新たな儀式や儀礼勉学やトレーニング自省や内観法など、時代や社会の変化に応じた、新しいコトを創り出し、商品やサービスのうえに載せていく手法といえるでしょう。