生活意識の構造を掴むため、前回の縦軸に続いて、今回は横軸を考えます。
横軸は、言葉という人工物が持っている、本質的な構造によって、新たに生み出されてくる、個人・社会の軸です。
このテーマについても、当ブログでは「個人・社会」構造として、さまざまな角度から思考してきましたので、主な論点を整理しておきましょう。
横軸の基本的な構造については、【横軸の構造・・・ラングとパロール】で述べています。
●言葉の機能には、民族や国家が共有している「ラング」の次元と、それを使って個人が会話を交わしたり、思考するという「パロール」の次元がある。 ●ラングとは、文法や単語、音声や意味など、社会集団が共有している言語体系であり、パロールとは、それらを前提にして話したり考えたりする、個人的な言語行動である。 ●パロールという行為には、他人との交流のために行う「パロールⅠ」と、自らと会話する「パロール2」がある。 ●言葉によって作られる生活世界は、ラング界、パロール1界、パロール2界の、3つに分かれる。 ●ラング界は外側の世界と交流する「社会界」、パロール1界は日常的な暮らしにおいて交流を行なう「間人界」、パロール2界は自己の内側と交流する「個人界」と言い換えることができる。 |
社会界、間人界、個人界の、それぞれの特徴は【横軸が作る3つの世界・・・社会界・間人界・個人界】で述べています。
●社会界・・・ 私たちがラング(言語、文化、伝統、歴史、慣習、規範、法律など集団的な価値観や制度)を受け入れつつ、同時にラングそのものへ働きかけている集団的な世界。 ●間人界・・・ ラングを前提に、私たちが会話、実践、交換などを〈交流〉している日常的な世界。 ●個人界・・・ 私たちがラングに従いながらも、純個人として自らの内部に語りかけたり、ラングを自分なりに変換して新たな表現を作りだしている私的な世界。 ●これら3つの言語的世界は、私たちの日常生活はもとより、一般的な社会活動から経済活動にまで、大きく広がっている。 ●横軸は、社会学的な「社会⇔個人」、経済学的な「集団的な価値⇔純個人的なネウチ」、心理学的な「集団への同調⇔純個人的な愛着」など、空間的な対応を示唆している。 |
3つの世界から生まれてくる生活願望については【横軸が作る3つの生活願望・・・世欲・実欲・私欲】で述べています。
●世欲・・・社会的な地位や経済的な成功など、世間的な評価を手に入れたいと思う生活願望 ●実欲・・・家事、就業、勉強など日常的な生活の中で、実効的な効果や成果を得たいと思う生活願望 ●私欲・・・自省や内省など自分自身との交信の中で、他人に何といわれようとも、純私的に満足したいと思う生活願望 |
以上のように、生活構造の横軸には、社会界、間人界、個人界が潜み、それぞれの内部から、世欲、実欲、私欲の3つの生活願望が生まれてきます。