2023年10月28日土曜日

言語6階層説:深層言語とは・・・

言語6階層説の最初は「深層言語」です。

当ブログでは、これまで「言語3階層説」と題し、深層・象徴言語日常・交信言語思考・観念言語の3つを分けてきました。

これを進展させた、今回の言語6階層説では、深層・象徴言語を「深層言語」と「象徴言語」の2つに分けました。

両者を区分するのは「識分け」、つまり「意識するか否か」です。「身分け」が捉えたものを意識するか否かで、2つの言葉が分かれてきます。

意識されたものを言語化するのが「象徴言語」であり、意識されないものを言語化するのが「深層言語」です。

「身分け=感覚」が把握したものでも、「識分け=意識」が把握しない限りは、「無意識=深層意識」となって、身分けされた空間の底へ沈殿していきます。この沈殿物を何らかの形で言語化したもの、それが「深層言語」です。



換言すれば、深層言語とは、「身分け」が把握したが、「識分け」が漏らした、無意識(深層意識)の事象を、言葉になる以前のイメージや偶像などで表した記号、ということです。

当ブログの過去の記述を振り返ると、ユングの「元型」論、井筒の「種子」論が相当します。

C.G. ユング・・・意味付与は一定の言語の型を使ってなされるが、この型はさらに原始心像から生まれる。意味がどこから来るのかという質問をどこで発しても、われわれは必ず言語やモチーフの歴史へ入りこんで行き、その歴史はつねにまっすぐに未開人の不思議の世界へと通じている。(『元型論』林道義訳:1999年)

●井筒俊彦・・・およそ外的事物をこれこれのものとして認識し意識することが、根源的にコトバ(内的言語)の意味分節作用に基づくものであることを私はさきに説いた。そして、そのような内的言語の意味「種子(ビージャ)」の場所を、「言語アラヤ識」という名で深層意識に定位した。(『意識と本質』1982年

これらの言説に置き換えれば、深層言語とは、無意識下の原始心像である「元型」であり、言語の種子である「言語アラヤ識」である、ということになるでしょう。

以上のように位置づけると、深層言語とは、自然的な言葉が生まれる前に、胎内的な言葉が湧き上がる次元、ということになります。具体例としては、次のような事例が挙げられます。

●音声言語・・・無意識のため息・喘ぎ・息づかい

●文字言語・・・無意識の手振り・身振り・しぐさ

●表象記号・・・元型・心像イメージ・・・例えば、ユングが元型(アーキタイプ)論で示した太母、老賢者、トリックスターなどの心像

要約すれば、深層言語とは、感覚が捉えた対象を、意識が把握する前の、体感的・心像的動作やイメージなのです。

2023年10月11日水曜日

言語6階層説へ進展する!

ハイテクツール論がひとまず終わりましたので、今度は言語6階層説に進みます。

言語階層論については、何度も書いてきましたが、どんどん進化してきました。

従来の言語3階層から、今度は言語6階層説へと進展してきましたので、その要点をしばらくの間、書かせていただきます。

6階層説の前提となっているのは、生活世界構造です。

生活構造図を「生活世界構造図」に修正する!】や【「ことしり」から「ことわり」へ!】で、私たちの環境把握力への見解を、従来の【身分け・言分け】の2に区分に、新たに【識分け・網分け】を加え、【身分け・識分け・言分け・網分け】の4区分に修正しました。

識分け(しわけ)」とは、感覚把握(身分け)と言語把握(言分け)の間に、もう一つ「意識」把握の次元がある、ということです。感覚が捉えた対象を、意識が認め、音声やイメージなどに置き換える次元です。言語階層で言えば、自然的な言葉が生まれる前に、深層的な言葉が湧き上がる次元を位置付けたのです。

一方、「網分け(あみわけ)」とは、「言分け」による「分節」によって生み出された自然言語や自然記号に対し、さらに特定の意図による「」をかけ、抽象化された言葉や記号を創り出すことです。言分けで生まれたコト界では、自然発生的に生み出された自然言語によって、日常的な会話や文通などが行われていますが、考察や思索などの行動になると、人類は人為的にさらに抽象化された思考言語を使います。こうした言語によって、コト界の中に、もう一つ、新たに仕分けされた世界、アミ界という次元が生まれ、いわゆる観念的な言葉が行きかうようになります。

2つの新たな仕分けによって、3段階であった生活構造は、5階層の生活世界構造に進化してきました。

これに基づいて、言語の階層3階層から6階層へ変化していきます。


従来の【身分け・言分け】論では「言葉がつかむか否か」で世界を分けていましたので、言語は未言語状態言語化状態の、2つの階層を作り出していました。

しかし、【身分け・識分け・言分け・網分け】論になると、新たな境界として「識分け」「言分け」「網分け」の3つが加わりますから、言語という集団的交信装置もさらに分化し、6つの階層に分かれていきます。

それは、深層言語、象徴言語、自然言語、交信言語、思考言語、観念言語で構成される言語6階層です。

それぞれの機能や役割については、次回から考察していきます。