2023年8月28日月曜日

飛行車はどんな用途に使えるのか?

ハイテクツールの10番めは、飛行車を取り上げます。

飛行車、つまり「空飛ぶクルマ」といえば、「自動で垂直に離着陸する移動手段」を思い浮かべます。だが、現在の段階では、明確な定義は定まっていません。

国土交通省の「空飛ぶクルマの制度整備に関する検討状況」(202212月)によれば、当面は「固定された翼で揚力を得て飛行するもの」が「飛行機」、「ヘリコプターのように回転翼により動力推進を得ているもの」が「回転翼航空機」、と説明されており、飛行機とヘリコプターの小型・私用版を意味しているようです。

業界では、滑走しないで垂直方向に離着陸する航空機を「VTOL」(Vertical Take-Off and Landing aircraft)とよんで、EV(電気自動車)にプロペラや自動制御システムをつけ、垂直に離着陸ができる電動機体については「eVTOL」などと名づけています。

(余談ですが、50年前の1972、筆者は『都市間交通におけるV/STOL機の役割』という研究報告書を提案しています。)

さらに海外では「Skycar」「Aircar」「Urban Air Mobility」「Personal Air Vehicle」「Flying cars」などとも命名されているようで、名称や機能などについても未だ曖昧なままです。

そこで今回は、飛行車の機能を次の2タイプに限定します。

ドローンの延長型で、人間が乗車可能になったもの。電動で遠隔操作や移動制御などが可能で、プロペラによってバランスを取りながら揚力を上げます。

飛行機の縮小型で、エンジンを搭載し、翼で浮力を得るもの。空中では翼を広げますが、道路走行時には格納します。

いずれも少人数の人間の乗車が可能なため、次表のような用途が想定できます。 

こうした用途を前提に、飛行車のネウチを、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸3つの軸)の中に位置づけてみましょう。 


①飛行車はモノ界・モノコト界・コト界の間に新たに登場する。

②生活民は飛行車を新たな物体として識知する。

③生活民は飛行車を新たな道具として言知する。

 


①飛行車の用途は社会界から間人界・個人界へ及んでいく。

②飛行車の用途は、社会界では上記の表のように現れる。

③個人は飛行車を生活民独自の方法で利用できる。

 


①飛行車は虚実曖昧な存在である。

②飛行車の用途は遊戯(虚構)から研究(真実)に及ぶ。

③真実的用途の拡大が期待される。

 


このように整理すると、飛行車というハイテクツールは、ヘリコプターとドローンの中間に登場し、いっそうの小型化によって、公的・私的用途の拡大を担うものと思われます。

とすれば、人口減少による労働力不足の緩和が、最大の効果となるのではないでしょうか。

2023年8月10日木曜日

家事用ロボットの功罪を考える

ハイテクツールの9番めに、家事用ロボットを取り上げます。

家事用ロボットとは、主に生活民家事行動を支援する自動装置です。

既にさまざまな装置が開発されていますが、用途別に整理してみると、次表に示したように、掃除用、料理用、買い物用、介護用4つが浮上してきます。



 

それぞれの特性を、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸)の3つの軸)の中に、位置づけてみましょう。


①感覚・言語軸(縦軸)



❶家事用ロボットは、生活民の生活願望、つまりモノ界の欲動モノコト界の欲求コト界の欲望を、それぞれ充足させるための自動装置である。

❷掃除、料理、買い物ロボットは、主に欲求と欲望を充たすための自動装置である。

❸介護ロボットは、介護を受ける人の生活願望を充たすとともに、介護を行う人の諸作業を支援する自動装置である。

 

②個人・社会軸(横軸)

❶家事用ロボットは、生活民の間人的、個人的生活行動を主に支援する自動装置である。

❷掃除、料理、介護ロボットは、生活民個人・家族・共同体のための生活行動を支援する自動装置である。但し、料理支援が行き過ぎると、生活民自身の差延行動(パロールⅡ)を減少させることになる。

❸買い物ロボットは、生活民個人・家族の購買行動(パロールⅠ、Ⅱ)を支援するとともに、消費市場という社会装置(ラング)との仲介を行う自動装置である。

 

③真実・虚構軸(前後軸)

❶家事用ロボットは、主として生活民の真欲(真実追求志向)常欲(虚実共求志向)の充足に対応する自動装置である。

❷掃除、料理、買い物ロボットは、生活民の常欲(虚実共求志向)を主に充たすための自動装置である。

❸介護ロボットは、介護を受ける人の常欲真欲を充たすとともに、介護を行う人の常欲を支援する自動装置である。

こうしてみてくると、家事用ロボットとは、生活行動の支援と改善などをめざすもので、その意味では近代的生活様式の延長上に位置付けられます。

しかし、他方では生活行動の外部化を促進し、生活民自身の差延化行動を縮小させる懸念も潜ませています。

とすれば、家事用ロボットには、科学技術文明の功罪が象徴されているようです。